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日本語ゲーム多読の記録③-2【ライムライト・レモネードジャム(恵凪)】個別の物語でありながら、共通ルートを照らす

 

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 ↑この記事の続き。恵凪ルートの感想を。後半ネタバレです。

 

よくない点

 どんな作品でも、良い点と悪い点がありますからね。両論併記はさせていただきます。良かった点は後から書くとして、まずは悪かった点を。

 

中盤の中だるみ

 センターヒロインということで、とりあえず最初に選択した恵凪ルートですが、個別ルートの終盤までは「これ、いつ面白くなるんだろうか…。共通ルートめちゃくちゃ良かったのに台無しになるのでは?」という不安が強かったです。いちおう、物語やキャラの心情に起伏はあるにはあるんですが、過去作のようにファンタジー要素があるわけでもなく、潜入工作員である自分の正体がバレるのでは?という緊張感もなく、バンド活動の日常描写やライブ準備のシーンが続くだけで、大きなイベントや展開がしばらく訪れなかったためです。1つの問題を解決してはライブ演奏を挟んでまた次の問題解決へ…という、並列的なイベントの処理の連続に、一時は物語の方向性が見えにくくなっていました。実際、終盤の入り口までは「このままだと、おススメ度くらいまで落とさざるを得ないぞ…」という評価でしたから。

 しかし、この中盤の静けさがあったからこそ、後半の盛り上がりでより強く心を動かされたとも言えます。結果的には終盤できちんと盛り返してくれたので杞憂に終わりましたが、中盤でもう少しメリハリがあればさらに良かったかな、と感じました。

 

センターヒロインとしてのキャラクターの弱さ

 恵凪は基本的には引っ込み思案なキャラで、その癖、変なところで大胆な行動や言動に出るというギャップは魅力的ではあります。ただ、作品の顔とも言えるセンターヒロインとして見ると、キャラクターのインパクトがやや弱い印象も受けました。同じゆずソフトでプレイ済のサノバやリドジョのセンターキャラの癖の際立つ癖の強さと比較してしまうとどうしても…ですね。センターヒロインとしては地味に映ってしまう部分もあったかもしれません。

 むしろリアル志向の本作においては、彼女のように等身大で控えめなヒロイン像が物語にマッチしていたと言えますが、あくまでもシナリオゲーじゃなくてキャラが売りのブランドですからね。そこは期待を上回らなかった印象です。

 

グランド感の薄さ

 恵凪は本作のセンターヒロインであり、物語の核となる存在ですが、それにもかかわらず 「グランド感」 が欠けている点は否めません。

 確かにエモーショナルな盛り上がりは用意されているのですが、それらはあくまで「個別ルートのクライマックス」として収まってしまっていて、シリーズ作品でいう「センターヒロインだからこそ特別に明かされる真実」や「物語の全体像を揺るがす仕掛け」といった要素はありません。

 過去作では、センターヒロインのルートで作品全体の根幹に触れる事実や世界観の裏側が語られることが多く、プレイヤーとしては「ここで大きな真実が来るのでは?」という期待を抱いていました。しかし本作における恵凪ルートは、そうした意味での「特別扱い」がされていないため、どうしても「個別ルートの一つ」という位置付けに留まってしまい、少々拍子抜けに感じられたのは事実です。

 もちろん、これは本作の構造上仕方のない部分でもあります。全ヒロインにしっかりと光を当てるスタンスのため、特定のヒロインだけが物語全体を独占するような構成にはしていないのでしょう。しかし、シリーズ経験者やセンターヒロインに強烈な役割を期待していた層にとっては、この点は物足りなく感じられる可能性があります。

 

おすすめな点

 はい、よくない点はこれくらいにして、次は良かった点について。

クライマックスで全てが報われる王道展開

 恵凪ルートの終盤には、決してグランド感はありません。しかしながら、「バンドの目標」「ヒロイン自身の問題」「主人公の過去」という三つの要素が一挙に収束する見どころ満載の展開でした。具体的には、物語冒頭からのバンド目標であるワンマンライブの成功、恵凪の人生に大きな影響を与えた人物との関係の再構築、そして主人公・雪鷹が長年引きずってきた過去(かつて熱中していたバンド“SHAM NEKO”の思い出)との決別の3つが、ライブシーンに凝縮されています。

 クライマックスでは、レモネードファクトリーの集大成とも言えるワンマンライブのステージ上で恵凪が全身全霊のパフォーマンスを披露し、その中で自らの想いを歌に乗せて伝えました。同時に主人公も、彼女の歌を支えながら自分の過去を乗り越え、新たな未来へ踏み出す決意を固めます。一度に複数のドラマがクライマックスで花開く構成は非常に爽快で、「最後の最後できちんとやってくれた!」という満足感が大きかったです。王道ではありますが、期待していたものを期待以上の形で見せてくれたフィナーレだったと思います。

 

主人公と恵凪の支え合う関係性

 恵凪ルートでは、主人公と恵凪がお互いに救い救われる関係性であることも丁寧に描かれていました。もともと雪鷹は「SHAM NEKO」というバンドで音楽活動に熱中していましたが、ある理由でバンドから離れ、過去の思い出に囚われて停滞していた存在です。そんな彼が恵凪との出会いによって再びバンド活動を始める決意を固めたことが、共通ルート序盤における重要な転機でした。
 いわば恵凪は、思い出に溺れていた主人公を救い上げてくれた恩人のような存在なのです。

 

 一方で、恵凪にとっての主人公もまた、物語の最初から最後まで自らを支えてくれた存在として描かれます。個別ルートでも恵凪が挫折や悩みに直面した際、雪鷹が彼女を支えて奮起させる展開が用意されています。

 こうして、恵凪もまた雪鷹の支えに応えて懸命に前進していきます。このように「ヒロインが主人公を救い、主人公もヒロインを救う」相互関係が物語を通してしっかりと描かれているため、二人の絆にとても説得力がありました。お互いがいることで欠けた部分を補い合い、高め合っていく姿は見ていて微笑ましく、まさに理想的なパートナーシップだと感じます。

 

おすすめ度

 おススメ度は、10段階でです。

 メインルートにはどうしてもグランド感を期待してしまう自分としては、ファンタジーが皆無という設定の地味さと相まって、物足りなさを感じました。ただ、その点を差し引いたとしても、シナリオ終盤の王道でありながら予想を上回って来る展開には、正直なところ涙腺を刺激されましたね。

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ネタバレ感想

 ※ここから先は、思いっきりネタバレしています。未プレイの方はご注意。

 

 

 

 

 

 

 

 

 さて、ここまで散々、「恵凪ルートはグランドルートではない」と書いてきましたが、ネタバレをアリにしてもう少し踏み込んでみると、「個別の物語でありながら、共通ルートを照らす」ルートだと言うことができます。

 本ルートの大きな特徴のひとつは、やはりクライマックスの「母に向けたネット配信ライブ」です。直接会うことも、言葉を交わすこともできない状況下で、ただ一方的に歌を届ける。母から返事が返ってくるわけではなく、演奏を終えた瞬間に「伝わったかどうか」すら確かめられない。恵凪のそれまでの人生に大きく関わるそのもどかしさと切実さが、このルートの核となっています。

  • 直接の対話ができない相手に、音楽という手段で想いを届ける
  • ネット越し(=一方向的)であるがゆえの、もどかしさ
  • それでも“音楽なら伝えられる”という信念

 この構図って、どこかで見たことありませんかね?

 はい、これは共通ルートでメンバーが月望と「幻灯花火」をぶっつけ本番で披露した場面と強く響き合っています。あの時もまた、ネットを介した一方的な繋がりの中で、どれだけ音楽に想いを乗せられるかが問われていました。直接のリアクションはなくとも、音楽を通じてなら心に届くはずだと信じて演奏する姿勢。そのテーマが、本ルートで改めて回収されているわけです。

 

 同様に、恵凪は性格面で杏珠に似ているところがあります。杏珠の場合は、ギターの実力は確かなのに緊張や不安に押しつぶされやすいネガティブな部分が、共通ルートで判明しています(※杏珠ルート未プレイのため、現時点での印象)。そして主人公はそんな彼女を後ろから支えたり発破をかけたりする(放光酸化という鬼畜曲で「お前なら出来るだろ?」と)ことで、自信を与えていくわけです。

 一方、恵凪ルートではどうか。もともと自分に自信のない恵凪は、ギターの実力が主人公を超えてもなお不安が解消されず、彼にアドバイスを求め続けます。また、物語中盤、自分の実力不足が一因となって、雑誌に記事を書いてもらえなかった展開では強く打ちのめされ、酷いことをしてしまった母を置いて自分だけが幸せになって良いのかと悩んだ末に、声が出なくなったりもしました。

 しかし、ここで主人公は、「お母さんに向けて歌詞を書けば良い」と、杏珠の時と同様に、あくまでも音楽を使って彼女が主体的に動くことをアシストします。

 

 このように、恵凪ルート終盤の展開は、共通ルートでの熱い場面を想起させるような構造が組まれていることがわかるでしょう。本シナリオはグランドルートのように大きな真相や特別な仕掛けがあるわけではないですが、共通ルートで描かれたモチーフを個別の文脈に引き寄せ、物語全体に一貫性を与えていると言うことができるのではないでしょうか

 

 あとまあ、キャラが弱いとも書きましたが、淫紋とか行為中のオホ声とか、強烈なインパクトはあるにはありましたね、そういえば。それと、MCとしての意識がだんだん変化していくところも見どころですね。主人公だけではなく恵凪もまた、成長過程の楽しみなヒロインでした。

 ↑ワンマンライブでのMCはプロの風格!

 

 

まとめ

 恵凪ルートは、センターヒロインでありながら「物語全体を束ねるグランドルート」にはなり得ていませんでした。過去作では、センターを攻略することで世界観の核心や隠された真実が明かされる構造が定番でしたが、本作ではあくまでも「数あるヒロインのひとり」としての位置づけにとどまっていたように感じます。その意味では、期待していた分だけやや拍子抜けした、というのが正直な感想です。

 ただし、そのことが即「物足りない」と直結するわけではありません。むしろ恵凪は、主人公にとって「最初に音楽へと手を差し伸べてくれた存在」であり、彼女と向き合う物語は、他の誰よりも主人公個人の歩みと深く結びついています。きらびやかな謎解きや大仕掛けの代わりに、主人公と恵凪の個別の関係性にフォーカスすることで、物語はとてもパーソナルで、地に足のついたものになっていました。

 その象徴が、彼女が作詞した「陽だまりのように」です。母に向けて書かれたこの曲は、病室で眠る母と再び心を通わせるきっかけとなり、同時に主人公にとっても「音楽を通じて誰かを救う」という原体験となるものでした。ワンマンライブというバンド全体のクライマックスと、母への想いという個別ルートのクライマックスが見事に重なり合い、ルート全体の説得力を飛躍的に高めています。序盤の「ハッピーバースデー」が伏線として回収された点も含め、構成の巧みさが光っていました。

 

 一方で、シナリオ全体のトーンは「瑞々しさ」と「眩しさ」を優先しており、青春バンドモノにありがちなドロドロとした醜悪さや絶望の深みに落ちることはありません。これはゆずソフトらしい作風であり、”ユーザーが求める安心安全な”青春像をまっすぐに描いた結果とも言えます。ただ、敢えて踏み込むならば——もし、恵凪の抱える不安や後悔、母への想いにもっと強烈なマイナス感情の振れ幅や絶望感までが描かれていたならば、その分だけカタルシスも大きくなり、(あくまで私の好みとしての)シナリオの完成度はサノバのグランドルートを超える可能性さえあったのではないかと思います。優しさと温かさで物語を閉じるのではなく、一度とことん突き落とした上で光を掴む。そうした展開を望む私のようなプレイヤーにとっては、やや物足りなさが残るかもしれません。

 しかし、それを「欠点」とは断じきれません。むしろ本作は、バンドという題材を「ドロドロ」ではなく「きらめき」で描くことを選びました。音楽は人を救い、人と人とを繋げ、青春を鮮やかに彩る。恵凪ルートは、そのコンセプトを最もわかりやすく体現したルートだったと言えるでしょう。

 

 

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