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30代からの投資でアーリーリタイアを目指す記録。日本に拘りはなし。

英語ゲーム多読の記録⑮【シロナガス島への帰還】日本の短編ミステリノベルゲー

 

作品紹介

大富豪の遺書の中に残された『シロナガス島』への招待状。
ニューヨークで探偵業を営む男『池田戦』は、特殊な能力を持つ少女『出雲崎ねね子』と共に島へと向かう。
そこで起きる数々の奇怪な殺人事件。
果たしてシロナガス島に隠された真実とは……?
すべての謎を解き、呪われた島から脱出せよ!

 

 たった500円でこのクオリティ!?という、良い意味で話題になったミステリノベルゲーを、満を持してプレイしました。実際、私もプレイ後には全く同じ感想を持ちました。それほどの完成度です。シナリオは広義のミステリですが、それだけではなくサスペンスやSF、ホラー好きなプレイヤーならかなり楽しめる作品だと思います。英語多読用としても、平易な表現が多いため、おススメできますよ。

 あ、ただし本作はわりとホラー寄り、というかびっくりさせてくる箇所が多いので、苦手な人はご注意を。

 

必要英語力など

推奨英語力:TOEIC780~、英検2級~

 ゲームプレイ開始時点の私の英語力は、TOEIC905点でした(英検は1級の一次試験には通ったものの、二次試験で敗退。ノベルゲー多読を経て、現在の私の受動語彙は1万~1万2千語程度だと考えられます)。

 

 実際、本作の推奨英語力は、中盤までだけで言えば、これまでで最も低いです。"RIDDLE JOKER"あたりと比較しても、かなり簡単です。その理由は、単語レベルの低さと相まって、構文や文法もまた平易なものしか使われていないことです。舞台はアメリカではあるものの、主人公格の2人は日本人ですし、いわゆる「ミステリのお約束」のような部分さえ知っている読者であれば、特に問題なく読み進めることができるはずです。文法的にも、仮定法が理解できるレベルであればまあ詰まることはないでしょう。

 ただし、本作は島の秘密に迫る中盤以降、必要な語彙力がグンと上がります。英検1級レベルの単語がガンガン登場し、終盤ともなればそれ以上の超高レベル単語だって頻繁に出てきます。とはいえ、英検1級以上の単語の大半は、Nenekoによるマニアックなトリビアであって本編には関係ないので、特段覚える必要はありません。総合的に見て、TOEICで780点もあれば十分だと判断しました。ただ英検準2級だとさすがに単語レベルできつくなり物語に集中できなくなる恐れがあるので、せめて2級程度の語彙力はほしいかな~という感じです。

 ただし、中盤以降頻発する英検1級レベルの単語を知らないのであれば、潔く辞書で調べるべきです。せっかくの良質な物語なので、内容がぼやけたまま読み進めることはおススメしません。そんなに多くはありませんので、そこは勉強だと思って我慢しましょう。医療や政治の分野では普通にガンガン使われるワードたちですから。

 

推定プレイ時間:20~30時間

 私の場合、プレイ時間は30時間程度でした。

 本作は短編ノベルゲーなのですが、途中で時間制限のある個所が複数存在し、私の英文読解スピードでは時間に間に合わなかったり、他にも選択肢によってはバッドエンドへ行ってしまう箇所がこれまた複数存在したために、なかなかTRUEエンドへ到達できなかったというのが理由です。

 それと、本編をクリアした後に解放されるEXTRAシナリオがこれまた練られていて、何度もバッドエンドへ到達してしまったことも一因ですね。こんなにバッドエンドの多いゲームは久々にプレイしました💦最近はヌルい作品ばっかりやってたんだなあ、と。

 

よくない点

 どんな作品でも、良い点と悪い点がありますからね。両論併記はさせていただきます。良かった点は後から書くとして、まずは悪かった点を。凄まじく高レベルな作品ではありますが、あくまでも500円の同人ゲームですからね。上を求めるとキリはありません。

 

英語字幕にすると音声が消える

 本作、英語字幕を選択することが可能なのですが(ゲーム本体からではなく、steamの設定画面で設定する必要アリ)、英語を選択した場合、なぜか日本語音声まで消えてしまうという仕様になっているようです。これは非常にもったいない。私は、Nenekoの声もAkiraの声も、Alexの声も、一度も聞かずにクリアしてしまいました。唯一聞いたのは冒頭の女性の声だけでしたが、あれ誰の声だったんだろ。なんだか意味深なことを言っていた気がしますが、そのセリフも忘れてしまったので、プレイし直してみないとわかりませんね。

 (→確認すると、Nenekoでした。本ゲームで私が聞いた唯一の音声は、このシーンのNenekoだけだったようです)

 また英語多読の点から言っても、日本語音声なしでは英語字幕に頼らざるを得ず、一定以上のreading力がなければシナリオを追うことが困難になってしまいます。上述のとおり、本作の中盤以降はそれなりに難解な語彙を要求されますし。

 

シナリオ上、重要な描写がなされていない

 これはネタバレになってしまうので具体的なことは書きませんが(ネタバレ感想の章に後述しました)、作中で極めて重要な場面がなぜか描写されずに省略されてしまっているんですよね。読者の想像に委ねるという手法もあることはもちろん知っていますが、それでも「いや、この場面を委ねちゃうのは違うでしょ!?」と思わざるを得ませんでした。

 

 

細かいストレスがある

 Protagonistの一人称で物語が進むのですが、時折、そのセリフが実際に発せられているのかそれとも心の中でそう思っているだけなのか見分けがつかない場合があります。

 ↑これが、実際にセリフが発せられた場面で、

 ↑こっちが心の中で思っているだけの場面。

 もちろん読めばわかる場合も多いのですが、微妙な場合もあって、時たま混乱してしまいました。地の文は地の文だと一目でわかるような表記にしてほしかったですね。それか、あえてわかりにくくするのであれば、それを利用した叙述トリックとか仕掛けてくれれば良かったのですが、別にそういうわけでもなく。

 その他、上げるとキリがないのですが、商用ゲームを基準にしてしまうと、痒いところに手が届かないのは仕方ありませんね。

 

おすすめな点

 はい、よくない点はこれくらいにして、次は良かった点について。

 

 

キャラ造形が良い

 ProtagonistであるIkedaと、HeroineであるNenekoのタッグで物語が進んでいくのですが、2人のキャラが面白く、その掛け合いを眺めているだけでも噴き出してしまいます。

 

 Nenekoはコミュ障のため初対面の人の前では全然喋れないのですが、相手がIkedaになった途端、とんでもない毒舌を放ちまくります。また、自分で自分のことを天才(geniusとかprodigyとか)だと臆面もなく主張する強メンタルの持ち主でもあります。

 ↑Ikedaのことを"amateur"とか"goose"(ガチョウ、だけどここでは「間抜けな」の意味とかって煽りに煽る)

 一方のIkedaも負けておらず、

 ↑船酔いでぐったりしているNenekoを調べると出てくるセリフが「でっかいkelp(海藻)だぜ。良い出汁がとれそうだ」

 ↑それに対する反応も良い。

 

 ↑まあ、どう考えても正ヒロインはAuroraだけどね!(日本語版、「オーロラ」じゃなくて「アウロラ」なことにびっくり)

画像

 ↑こんな汚いやつよりも…ね。

 

 まあ実際のところ、IkedaとNenekoの2人以外は全員、ミステリによく登場する記号的なキャラばかりなんですが、それでもちゃんとそれぞれにキャラが立っていて、シナリオが進むに従って1人また1人と欠けていくのは辛いものがありました。彼ら彼女らには、しっかりと思い入れがありますね。

 

極めて高い完成度

 嵐の孤島、食卓に集められた参加者たち、姿を見せずメッセージだけを使える主催者、破壊された通信機器、第一の殺人、見立て殺人を示唆する小物…。新本格好きならニヤニヤしてしまう舞台設定がてんこ盛り。言い方は悪いですが、これまでに何十回食べたかわからない大好物な料理をまたもや美味しく食べさせられている気分になります。

 だけども、美味しいものは美味しいんですよ! しっかりと下味もついてるし、野菜もお肉もホロホロに柔らかく崩れるし、食べ進んでいくとおかずの中からびっくりするような隠し味が登場するし。最初本格ミステリとして始まったな、と思ったら、そこからサスペンスだったりパニックホラーだったりSFだったりと、目まぐるしく展開が変化するスピード感もまたスパイスとして機能しています。

 ↑これが、正直なところの感想です。このサークルさんのゲームであれば、無条件で次回作を購入したいと思えたのは確かです。

 

 

おすすめ度

 おススメ度は、10段階でです。

 買って損はありません。ミステリか、SFか、ホラーが好きならむしろ必ずプレイするべきです。本当は10点にしたいんですけどね、この価格に対してこのクオリティなら。ただどうしても上述した「シナリオ上、重要な描写がなされていない」の部分が気になってしまい、1点マイナスになっています。

 

ネタバレ感想

 ※ここから先は、思いっきりネタバレしています。未プレイの方はご注意。

 私がプレイした順番に記載しています。

 

 

 

 

 

 

 

 全編通しての感想は書きません。真相はまあありがちで、ただそのよくある物語を極めて丁寧な筆致で、読み手の興味を失わせない高度なリーダビリティで書き切ったという、お手本のような作品だったということです。シナリオだけでなく、CGや音楽も高いレベルでまとまっています。

 

 さて、そんな本作は、終わってみればGiseleとAuroraの物語でしたね。タイトルからして、裏のProtagonistがGiseleであり、HeroineがAuroraであることは明らかでした。

 この2人のキャラクターは、商業のキャラゲーや本作における主人公格の2人と比較するとどうしても「記号的」の域を出ていないとは思いますが、それでもやはり終盤Nenekoが彼女たちの物語を追想する場面や、GiseleとAkiraとの間に確かな関係が芽生えていることが視覚化された場面では、目頭が熱くなりました。

 ↑私の好きなのはこのシーン、確実に来る絶望の未来を理解しながらもあくまでも善性に徹するAuroraの表情と、泣きのBGMとが相まって、すさまじい破壊力でした。だからこそ、英語字幕だとセリフが音声で聞けないのが残念でなりません。まあそれは仕様だと思うのでどうしようもないとして。

 

 ただ、この1点だけはどうしても書かざるを得ません。

 どうにもこうにも残念でならないのは、GiseleとAurora(N141)とがシロナガス島でどのように再会したのかが、本編で描かれていない点。

 NenekoによるGiseleの記憶の追想が事実だったとするのであれば、Giseleはかつてのシロナガス島でAuroraがN141に変貌した瞬間を目撃してはいないはずなんです。であれば、島から逃走した彼女が、数年を経てシロナガス島へ帰還し、モンスター化したAuroraと再会した時に、2人はどうやって互いを互いと認識し、情愛を深めていったのか。読者はそこを知りたいに決まっているじゃないですか! ここまで丁寧に作っていながら、なぜこんなに大切なシーンを読者の想像に委ねる形にしてしまったのか…。

 他の部分なら省略するのも良いと思うんですよ。例えば、Ikedaを狙撃した犯人や部屋に蛇を投げ込んだ犯人なんかは明かされなくてもある程度推理が可能なのと、ドラマ性に大きな影響を与えません。だけど、この2人のシーンはそうではない。

 ↑本作のクライマックス。ここは理屈関係なく、身震いしましたよ。だけど、もしも2人の再会シーンが描かれていたのなら、もっともっと引き込まれていたはずなんです。

 も、もったいない…。もっと掘り下げてほしかった。

 

 

 

 ↑あ、それはそれとして、Extraは良いものですね!

 

まとめ

 500円とは思えない高クオリティなノベルゲーです。気になる点はないわけではないですが、単純に世界観やシナリオを楽しむ点でも、英語多読の点でも、短編ノベルで言えば私がこれまでプレイした作品の中で5本の指に入る傑作だと断言します。

 ただでさえ安いのに、時たまSTEAMでセールやってる時もありますので、タイミングを選べばさらに半額くらいで買えるかも。要するに、細かいこと考えずにプレイしてください!

 

 

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