両者公務員である弟夫婦からの相談
先日、弟夫婦から保険についての相談を受けました。彼らは夫婦ともに教育系公務員であり、そのため勤め先で共済組合関係の配付物が年に数回配布されるようです。しかしあくまで配布されるだけで特段それについての説明はないということで、加入した方が得なのかどうかを私のところに相談に来たという流れでした。
私、この相談を受けるまで公務員の共済組合ってなんだかものすごい保障制度ついてるのかな~?となんとなく思い込んでいたのですが・・・
全然そんなことはなかったぜ(^^;
民間の保険と変わりないですね。少なくとも「福祉保険制度」については。
公務員の福祉保険制度とは?
今回見せてもらったパンフレットで紹介されていたのは「ファミリー年金」、「傷病休職給付金」、「入院費用給付金」、「特定疾病給付金」、「元気づくりサービスコース」の5種類。
↓のページで紹介されているものと全く同じです。
各制度の概要:福祉保険制度の概要:公立学校共済組合の福祉保険制度:公立学校共済組合
公立学校共済組合のHPによると、
ファミリー年金・医療費支援制度・傷病休職給付金は、長期給付事業と短期給付事業の給付に自助努力による補完を行うことで、組合員の経済的な負担や不安に備えるための制度です。
(引用元:福祉保険制度:公立学校共済組合)
だそうで、福祉保険制度というのはどうやら元々の共済組合の保障とは別に、掛金を上乗せすることによってより手厚い保障を得られる制度のことを言うようです。
ここまでわかった時点で私としては、「十中八九こんなの要らない(^^;」と思ったのですが、腐っても天下の共済組合の制度。民間のそれとは比べ物にならないほどの保障があるかも・・・?と思いなおし、いちおう項目別に調べてみました。
ファミリー年金制度
まず、「ファミリー年金」ですね。これは事業としては「長期給付事業」に含まれるようです。共済組合でいう「長期給付事業」とは年金事業のことを意味しますが、現在では共済年金はなくなり民間と同じ厚生年金に一本化されています。
しかしこのファミリー年金制度というのはおそらく共済組合特有の制度かと思われます。掛金を追加で支払うことで将来の年金が増えるのかな? と思いきや・・・。
組合員またはその配偶者の方が、死亡した場合または所定の高度障害状態となった場合に、保険金を年金形式でお支払いします。
遺族年金だけの話なんか~い!(゚Д゚;)
はい、厚生年金とは何も「老齢厚生年金」だけを意味するのではありません。本人が障害を持った場合に支払われる「障害厚生年金」と、本人が死亡(または高度障害状態)した場合に支払われる「遺族厚生年金」を合わせた3つが厚生年金です。
そして現在の厚生年金制度では、このうち「遺族厚生年金」については「老齢厚生年金」のおよそ3/4程度の金額しか支払われないことになっています。
そこでこのファミリー年金制度を利用すると、万が一の場合に残りの1/4も保障しますよ、というわけです。
しかしながら弟夫婦の場合、すでに必要最低限の掛け捨て型生命保険に夫婦ともども加入していることもあり、「万が一のための保障」という意味では十分な備えができています。さらに二人とも公務員であるため収入は安定していますし、仮に一方が働けなくなったとしても他方の給与収入だけで子ども1人を養っていくことは問題ないでしょう。
公務員であれば似たような世帯は多いと思いますので、あえて追加の掛金を支払ってまでファミリー年金に加入する意味は薄いと言えるでしょう。一方が専業主婦で生命保険を全く掛けない世帯であればまだ検討の余地があるかな?くらいの印象ですが、そういう世帯ならば遺族年金の補完制度であるファミリー年金に加入するくらいならば、普通に死亡一時金が入る生命保険に加入する方が良いと思います。大学進学費用とか、一時的な大出費が必要な際に頼りになるのは薄く長い保障よりも大きな一時金の方だと思いますので。
傷病休職給付金
次に「傷病休職給付金」です。これは「短期給付事業」ということなので、先ほどの年金とは違っていわゆる社会保険に該当する部分ですね。
「有給休職(1年間)」「傷病手当金(1年6カ月間)」「傷病手当金附加金(6カ月間)」が毎月の収入を補完しますが、休職前の収入と比べて不足してしまいます。
とあるように、地方公務員であっても民間と同じく、病気休職中は収入が減少するようです。病気休職当初の1年間は給与の8割が自治体から支給、その後1年6か月間は標準報酬月額の8割が傷病手当金として共済組合から支給。その後6か月間は同額が共済組合から「傷病手当金附加金」と名称を変えて支給されるとのことです。
民間の場合、病気休職中の給与規定については会社によりますし、協会けんぽには「傷病手当附加金」なんてないので、この辺りはさすが共済組合!といったところでしょうか。そこまで病休を引っ張る人は限られていると思うので、この恩恵をどれだけの公務員が受けられるかはわかりませんが・・・。
まあ何にしても、病気休職中は収入がおよそ8割程度に減少してしまいます。そこでこの「傷病休職給付金」に追加で加入しておけば、足りない2割を共済組合が支給しますよ、というのがこの制度の趣旨ですね。
・・・誰が入るねんこんなん(^^;
病気休職中で出勤してもいないのに給与の8割が保証されてるだけでメチャクチャ嬉しいでしょうが、普通はw しかも3年間も!
掛金は安いですが、病気休職に入った場合なんていう特殊な場合を想定してこんなのに入る意味はありません。
入院費用給付金
次に「入院費用給付金」ですが、これもまた「短期給付事業」に分類されるようです。
組合員、配偶者またはこどもが病気やケガで入院した場合に保険金をお支払いします。
と書かれているとおり、要は入院保障です。
しかし共済組合に加入している時点で高額療養費制度が適用されるため(これは民間にもあります)、先進医療を受けたり個室を利用したりしない限り一定額以上の出費が発生することはありません。
よって入院保障は不要と考えます。
特定疾病給付金
「特定疾病給付金」もまた「短期給付事業」に含まれます。
組合員または配偶者の方が、所定の悪性新生物(がん)と診断確定されたとき、または急性心筋梗塞・脳卒中を発病して所定の状態になられたとき、もしくは所定の手術を受けられたとき保険金をお支払いします。
とあるように、特定疾病に罹患した場合の保障ですね。
しかしながら、特定疾病の罹患率を考えればあえて追加で加入する必要性はないものと考えられます。「2人に1人がガンになる」とはよく聞きますが、ガンの罹患率が飛躍的に増すのは70歳を超えてから。CMに騙されないよう注意が必要です。
↓この記事参照。
また他の特定疾病に罹患する確率もそれほど高いものではありません。
いわゆる「不幸の宝くじ」というやつで、これもまた加入価値なしと判断します。
元気づくりサービスコース
最後は「元気づくりサービスコース」というもので、これは「福祉事業」に含まれるそうです。
こんなのは協会けんぽにはないので、いったいなんだろうと思って調べてみたのですが、どうやらこれは純然たるサービスであって、特別に掛金を上乗せして手厚い保障を受ける類のものではないようでした。
元気づくりサービスコース:各制度の概要:福祉保険制度の概要:公立学校共済組合の福祉保険制度:公立学校共済組合
医療相談や健康相談が電話で可能だったり、全国各地にある「公立学校共済やすらぎの宿(そんなんあるのかw)」での宿泊費や食費の補助があったり。
これは旅行で上手く利用すれば得できる制度のようですね。詳しくは調べていませんが、公務員の方はぜひ上手くご活用ください。
まとめ
このように、公立学校共済組合の「福祉保険制度」というのはあくまでも長期給付事業、短期給付事業、(福祉事業)、それぞれの補完制度でしかなく、あえて追加の掛金を払ってまで加入する価値のあるものとは思えないというのが私見です。最初に感じた「十中八九こんなの要らない(^^;」という直感は正解だったなあと自画自賛。
弟夫婦にはだいたいここに書いたようなことを説明して「別に要らないんじゃね?」と伝えておきました。
保険は必要最低限のものにだけ入るのが鉄則です。掛金が安いからといって不要なものをどんどん追加していくのは止めましょう!
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