英語多読したり投資したりFIRE目指したり

30代からの投資でアーリーリタイアを目指す記録。日本に拘りはなし。

英語ゲーム多読の記録⑫【サノバウィッチ】日本の18禁ノベルゲー

 

作品紹介

 

他人の気持ちを感じる力を持つ主人公・保科柊史はある日図書室で、クラスの人気者である綾地寧々の痴態を見てしまい、彼女が魔女となった代償として発情癖がついてしまったということを知る。

寧々と”秘密”を共有することになった柊史は、魔女としての活動を手伝うべくオカルト研究部に所属することにした。

 

 久々にがっつり18禁、それもベタベタな恋愛ゲーをプレイしました。今までにこういうのを英語でプレイしたことがなかったのと、長編1本やっておけばそれだけで20代くらいの若者向け語彙や軽妙な掛け合いにかかる経験値が大量に得られるだろうという皮算用が動機です。そしてせっかくプレイするならと、現在業界最大手と呼ばれるゆずソフトの、その中でも最高傑作と名高いサノバウィッチを選択したわけですが…。

 これが、思いのほか素晴らしいゲームで、驚きの連続でした! プレイして良かった。実は私、ゆずソフトも初プレイなら、いわゆる「キャラゲー」に類するゲームもほぼ(泣きゲーとか鬱ゲー以外は)プレイしたことがなかったので、まさかキャラを立たせることに特化するだけで、ここまで面白いものが出来上がるのかと感動してしまいました。

 

 

必要英語力など

推奨英語力:TOEIC780~、英検2級~

 ゲームプレイ開始時点の私の英語力は、TOEIC905点でした(英検は1級の一次試験には通ったものの、二次試験で敗退。一次試験の語彙パートで22/25を取ったことや、語彙測定サイトでの結果などから、私の受動語彙は1万語と少し程度だと考えられます)。

 推奨英語力は"Planetarian"や"Doki Doki Literature Club!(DDLC)"と比較すると、少し低いです。場面も学校やショッピングセンター、自宅くらいしか出てきませんし、キャラ同士の会話がほとんどなので、難しい単語や表現はそれほど登場しないからですね。

 総合的に見て、TOEICで780点もあれば十分だと判断しました。ただ英検準2級だとさすがに単語レベルできつくなり物語に集中できなくなる恐れがあるので、せめて2級程度の語彙力はほしいかな~という感じです。

 とはいっても、『究極の英単語 Vol4』内の単語がゆうに100語以上は出てきましたし、私の知らない表現もかなりありました。とはいえそういう難単語の大多数は文脈から意味が明らかですので、恐れるほどのことはないかと。どのルートも、強烈な個性をもったキャラクターたちが物語を引っ張って行ってくれるため、多少地の文で内容を見失うことがあっても、途中で脱落することはないでしょう。

 

 あ、ちなみに本作で登場頻度の高かった単語上位3位は、おそらく

horny:発情

arousal:発情

masturbation:オ○ニー

だと思います。いや、数えたわけではないので知りませんが、たぶん100回以上出てますよ、どれもw 単に18禁なだけじゃなくて、メインヒロインがそういう設定だからね…。

 

推定プレイ時間:100~130時間

 私の場合、プレイ時間は130時間程度でした。長編なのでこんなものかもしれませんが、それ以上に、本作は過去イチ(自分がプレイしたゲームの中で)で声優陣が素晴らしすぎるため一言一句セリフを聞き逃したくなかったことが、プレイ時間の増加に影響しています。

 ↑実際、Meguruルートプレイ中に、こんなポストをすることになりました。心の声が具現化しましたね。しかし、遥そらさんの声なしに、あのキャラは完成しなかったと言って過言ではないかと。

 

 その後、Tsumugiルートに入ると黒咲そらさんの、Neneルートに入ると桐谷華さんの演技に圧倒され…。英語字幕はとっくに読み込んで意味も取れてるのに、全セリフを聞きたいがためだけに全然マウスをクリックできない、そんな時間がとても長く続きました。

 

 

よくない点

 どんな作品でも、良い点と悪い点がありますからね。両論併記はさせていただきます。良かった点は後から書くとして、まずは悪かった点を。

 なお、今回から「日本語音声かつ主人公音声なし」は、よくない点には記載しないこととします。毎回同じこと書いても仕方ないですからね💦

 

シナリオに展開が強引な場面が目に付く

 主に共通ルートにおいて、強引な展開が目に付きました。

 例えば、主人公にとって「人の心が感じ取れる」という能力は、軽々しく他言できるようなものではないはずなのに、物語最序盤で、初対面の相手にいきなりぶっちゃけちゃう展開なんかは、ちょっと雑だよなぁ、と思わずにはいられませんでした。

 ↑いくらNeneの信頼している人らしいとはいえ、出会って数分で心の大切な部分に土足で踏み込んで来るような相手に、秘密を話しますかね・・・。この時点だと主人公は別にNeneさんのことだってそれほど知らないはずなのに。

 

 また、個別に入ってからも、ルートによっては「いくらなんでもこれは酷いよなぁ」というような雑な展開が目に付きます。

 ネタバレになるのでここではぼかしますが、主にMeguruルートの序盤で登場するキャラの切り捨て方と、Tsumugiルートの捨て犬周りについては、本当に酷い・・・。後者はまだシナリオに絡んで来るとはいえ、どう繕っても取っ散らかってる感は否めない。また、Tsumugiルートでは他ルートには存在しない魔女設定が登場して、それがシナリオ後半の核になるのですが、その設定を使えばMeguruルート序盤の問題にだってアプローチできたはずなんですよね。実際、MeguruルートにはAkagiが登場するのですから、実際に解決できるできないは別として、その設定を唯一知っているAkagiが、そのことについて言及しないのは不自然です。私がシナリオゲー派だからかもしれませんが、正直、この2ルートの展開については、許容できる範囲を逸脱した低レベルだと感じました。

 

 とはいえ、キャラゲーとして見た場合にはそのあたりは些細な要素になるでしょうし(やっぱりキャラはガンガンに立ってるし、日常会話を読むだけでも楽しい)、ToukoルートとNeneルートの完成度はかなり高いです(なお、Neneルートについて一部で指摘されている、とある問題については、私としては綺麗に解決している、と考えています。これは個人の感想レベルなので異論はあるでしょうが)。

 

おすすめな点

 はい、よくない点はこれくらいにして、次は良かった点について。

全ての要素が高水準でまとまっている

 ゆずソフトはキャラゲーブランドだと耳にしたことがあったので、他要素にはそれほど期待していなかったんですよね。ですので、本作には良い意味で驚かされました!

 なぜなら、キャラの強さはもとより、シナリオ、設定の練り込みなどなど、それらすべてのレベルがかなり高水準だったからです。

 

 良くない点では「強引な展開が目に付く」と書きましたが、それはあくまで一部についてであって、基本的にこのゲームの作りは丁寧です。

 まずキャラについて言うなら、主人公のShujiが良い。彼が冒頭OCに加入した経緯も説得力があるものでしたし、その過程で彼が得ていく内面の成長もポジティブなものでした。共通でも個別でも、葛藤するべき場面では悩み、他者に相談し、普段はバカをやりながらもいざとなれば頼れる友人たちやウザイけれども理解ある父親(!)にアドバイスを受け、自らの行いを反省することも欠かさない。空気の読めない点はあるとはいえ、わりと好感の持てる主人公に仕上がっていると思います。特に、Neneルートでの成長~紆余曲折を経た末についに彼女を救う展開には、それまでのシリアスな展開からのカタルシスもあって不覚にも泣かされそうになりました。最初は「死んだ魚のような目」をしていた彼が、どんどんと頼れる男に成長していく姿は、なんというか、我が子を見守る父親のような気分で応援することができましたね。

 

 そして、メインヒロインのNene。

 ↑オ○ニーヒロインとしてあまりにも有名だったので、私も存在だけはなんとなく知っていました。…が、彼女が実は外側だけでなく中身までオ○ニーキャラだったと判明した時はちょっとお茶を吹きましたw 彼女はOCの部長として学園の生徒たちの悩み相談に乗るのですが、その目的は、相手のためではなく魔女として自分の願いを叶えるために「心のかけら」を集めることなんですね。悪い言い方をすれば、自らの願いのために他者を利用しているとも言えるわけです。ただ、自分自身もそのことに罪悪感を覚えており、他者と必要以上に仲良くなろうとしない、そんなややこしいキャラです。彼女のこの自罰的で後ろ向きな性格をShujiくんが前向きに変えていく、そんな要素も本作の魅力の一つなんですね。

 その他ヒロインたちも、それぞれに過剰なまでの属性が付与されており、しかしながらそれらの要素が喧嘩することなくきっちり馴染んで彼女たちの魅力として昇華されているのは、流石キャラゲー最大手のゆずソフトと言ったところでしょうか。

 

 またシナリオについては、上述のとおり、NeneルートとToukoルートについてはシナリオゲー派でも満足のいく内容になっていました。とりわけ、グランドルートであるNeneルートへの気合の入りようと言えばかなりのもので、なんならこのゲーム自体が最初からNeneルートありきで作成されているのは間違いありません。最後までプレイすれば明らかになるのですが、2人の出会いから運命づけられていたようなもので、あの時ああいう形でShujiに出会うことが、唯一Neneが幸せになれる条件だったのです(他ヒロインルートに行くと救われないヒロインが出てくるというのは、こういうゲームに付きまとう永遠の命題ですが…Neneの場合は相当酷いことになりますね。まあでもその世界線は誰にも見えないので…)。

 

 設定の練り込みも良いですね。全ルートで主人公のエンパス能力、そして魔女という設定を余すことなく利用している点は、作りの丁寧さを感じます。ルートごとに明かされる真実が異なる(例えばToukoルートではShujiの母親のことが語られる)というのも、プレイヤーの興味を引き付けるのに一役買っているでしょう。それに、エンパス能力って恋愛ゲーにおいてはチートになりかねないんですけども、そこは色々と変化をつけて(Toukoルートとか)、それも上手く設定にマッチさせながらシナリオを引っ張る原動力にしていました。お見事。

 

 また、些細なことですが、本ゲームは1つのセリフの途中で何度も立ち絵の表情が変化します。これ10年前のノベルゲーなんですけど、キャラゲーでは普通のことなんですかね? 相当な手間がかかっているはずですが…。しかしそのおかげで、キャラクターの心理が詳細に表現することに成功しています。キャラゲー初心者の自分は「何というこだわりだ!」って、めちゃくちゃ驚きました。

 ↑こんな感じで、セリフ途中で連続的にキャラの表情が変化するので、キャラの心情がより細かく伝わってきます。こんな高レベルなのが業界スタンダードなのですか、今は。。。

 

 そんなこんなで、キャラだけ立ってて他は雑なんじゃね?くらいに、斜に構えていたプレイ前の私の斜に構えた態度は、共通ルートのチャプター3に到達するくらいで180度変わっていました。ハマってましたね、完全に。

 

英訳レベルの高さ

 加えて、本作はこれまでプレイしてきた日本発ゲームの中でも、特に英訳レベルが高いと私は感じました。例えばこのシーン。

 ↑思いっきり18禁シーン(会話内容が、です)を引っ張ってきましたが…。ここ、日本語だとToukoは「ビラビラが可愛い」って発言しています。当然、「ビラビラ」とか言われたShujiは「アレ」を想像してドギマギしてしまいます。しかしToukoはというと、Shujiがそう邪推することをわかっていてわざわざそんな言い方をしているだけで、実際にはただただブラのフリルに言及しているだけなんですね。要は、下ネタじゃないのにそれっぽい言い回しをすることで、年下をからかうお姉さん、という構図なわけです(それにしてもドギツイけどね!)。

 しかし、これをこのまま英訳するのは難しい。そこで英語版では、フリルではなくブラの骨格部分について言及するよう、大きく訳を変更しているんです。ちなみにブラの骨格のことは、英語では"bone"と言います(もちろん私は知っています。なぜなら、18禁の英訳仕事も結構いただくからです! エッヘン!)。そして実はこの"bone"という単語には、俗に「ペニス」とか「セックス」とかって意味があるんですよね。つまり、英語版でもちゃんと下ネタに聞こえるよう、違和感なく翻訳しているわけですね。

 このような、日本語をそのまま英語にはしづらい箇所が、本作にはたまに登場するのですが、ほとんどの場面でその問題を上手くクリアしていたことに感服しました(まあ、一か所だけすごく酷い訳があったのですが、そこはご愛嬌ということで…。「イカ」の部分です。英語版をプレイした人は、ぜったい同じ気持ちになるはず)。

 ↑"master masturbator"って訳思いついた時の翻訳者。気持ち良かっただろうなあ! こういうアホなノリも上手くシナリオに溶け込んでいます。英訳者、あっぱれ!

 

下ネタばっかりで失礼…。

 

 

畏怖するレベルの声優陣

 繰り返しになりますが、本作の声優陣は信じられないくらい上手いです。

www.midorineko.work

 ↑この記事でも書いたのですが、日本のゲームって、そもそも声優陣のレベルが格段に高いんですよ。しかし、それでもこれまで私がプレイしてきた日本発のノベルゲーの中でも、本作ほど異次元なレベルをそろえてきている作品は他にないと思いました💦

 声優さん界隈は表名義とかのこともあるのであまり詳しくは言及できませんが、そりゃああれだけの演技ができれば売れっ子になるわなぁ、と。思わずポストしてしまった遥そらさんだけでなく、他の声優さんも、何なら男性陣の声優さんにだって、「ひと耳惚れ」しましたからね、私。ちょっと、この界隈についての知識や体験が少なすぎたことに改めて気付かされました。本作をプレイしたことで、生まれて初めて「サノバのあの声優さんが主役だからこのゲームを買ってみよう」とか、「あの声優さんが出てるからこのアニメ観てみよう」って、声優さんありきで作品に興味持つようになりましたもん。

 

おすすめ度

 おススメ度は、10段階でです。

 加点法なら(キャラと声優とシステム面と、シナリオはNeneルートだけなら)10段階で12くらいいくんですけどね。減点法だと(MeguruルートやTsumugiルートの酷さによって)10段階で5くらいまで落ちちゃうので、まあこんなところかなあ、と。

 でも、こういうベタベタの恋愛ゲーで英語多読したいのなら、コメディからシリアスまで振れ幅の大きいシナリオで、キャラを愛でることができる本作は、安心して楽しめるんじゃないでしょうか。


 

ネタバレ感想

 ※ここから先は、思いっきりネタバレしています。未プレイの方はご注意。

 私がプレイした順番に記載しています。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

Toukoルート

 周りの感情が流れ込んでくることに悩んでいた主人公が、唯一その力を発揮できない相手。ずっと「普通」になりたいと望んでいたはずなのに、彼女の気持ちがわからないことを不安に感じてしまう主人公。果たして自分はToukoと上手くやっていけるのか!?

 ある意味、本作の設定を逆手にとったシナリオなので、他ルートとは大きく毛色が異なります。このルートで展開されるのは、いわゆる「普通の」恋愛劇です。自分を変えたいと思っていた2人が手を取り合って成長していく姿を見守るのは微笑ましいものです。中盤で物語が大きく動いてシリアスな展開が続くことになるので、結構胃が痛くなるわけですが、それが良いスパイスとなって、最後のカタルシスに繋がっていきます。

 ↑プレイ中の私のポストはこんな感じ。

 

 そして、このルートの主人公はカッコいいですね。

 ↑ここまで熱い主人公が見られるのはTouokoルートだけ。というか、終盤はもはや序盤とは別人じゃないのかってくらい主人公がオラオラ系男子に変貌しててちょっと笑ってしまいます。彼が年上の先輩にガンガン命令形で喋る一方で、ToukoさんはToukoさんで、序盤に見せていた年下ボーイをからかう余裕あるお姉さん像とは対極の、自罰的で自虐的で自分を空っぽの人間だと信じて疑わない後ろ向きな性格にどんどん墜ちて行ってしまう。シナリオが進むにつれて2人の主従が入れ替わってしまうんですね。

 この点、正直自分の望んでいたシナリオ、というかキャラとは異なっていたのですが(Toukoさんには、もっとお姉さんポジションを堅持して欲しかった!)、それでも彼女の序盤~中盤~終盤の性格の変化は、設定上十分に説得力があることも相まって、凄まじい破壊力でプレイヤーの心をわしづかみにします。廃人モードから復活してもはや魔法維持のために感情を消費する必要のなくなったToukoさんが、以前と違って性に恥じらいを感じる様子には、思わず頬が緩んでしまいます。

「『私のオムライス』ってちょっとエッチじゃない? 特に『オム』のあたりが」みたいな、もはやエロオヤジのようなセリフを吐きまくっていたあのToukoさんが・・・

 ↑こんなんになってしまうなんて・・・。

 

 そして、

 ↑こんなん泣いてまうやろ・・・!

 

 このルートの主人公は、今後エンパス能力を失った状態で生活していくことになります。しかしながら、エンパス能力の通じないToukoさんと時間を重ねる中で、彼は少しずつ能力に頼らない生き方が出来るようになってきていますから、2人の未来はきっと明るいのだろうな、と希望の持てるエンディングでした。アフターストーリーも、(相変わらず主人公は突っ走り過ぎですが)、あんなにも自信のなかったToukoさんがついに幸せを掴めたと思うと、良い幕引きだったんじゃないかと。

 

Wakanaルート

 実は幼馴染枠で、唯一主人公の過去を知っているヒロイン(と言っても大した過去はないんだけども)。いやあ、キャラ設定に余念がありませんね。

 シナリオも短いし、箸休め的なポジションですね。

 恋愛に興味がないフリをしていますが、感情の読める主人公にはそれが演技であることが筒抜けというのが、なんとも可愛らしい。

 ↑しかしこの感情を読めるって設定、「相手の気持ちがわからないからヤキモキする」ってラブコメの常道をぶち壊しちゃうから、2人の距離が簡単に縮まってしまうんですよね。そこで盛り上げにくいから他で山場を作らないといけなくて、シナリオ作り難しそう。

 ↑サブヒロインなのに専用曲とムービーまで用意されてて、かなりびっくりしました。そしてこの後の公開告白シーン。「なるほど、ここで結ばれて終わるのなら綺麗な形の幕引きだな~」と、もうこのルート終わったきでいたら、まさかの一度振られるというフラグブレイクに再度驚かされるという💦サブルートなのに手間かけて作ってるんだから、さすがですね。

 ↑Wakanaは、なんというか男前なキャラですね。うじうじ悩むこともあるけれど、一度こうと決めたら切り替えは早く、さっぱりしていて気持ち良い。今回、メインキャラにこういうタイプはいなかったので、(個人的な好き嫌いは別として)しっかりポジションを確立している感がありました。

 

Meguruルート

 Neneと並んで、共通ルートの時点で性癖にぶっ刺さりまくったヒロインの1人がこの子です。何と言っても声が良い。ギャルっぽい見た目から繰り出される奥手なオタク感よ。そして、やっぱり声が良い。

 ↑人付き合いの苦手な主人公のことを、同志(kindred spirits)だと思っていたよう。その主人公が大勢の前でバンド演奏をしたことに感じる部分があったよう。

 

 ただですね、上述したように、Meguruルートは残念ながらちょっと展開が雑過ぎました。

 いくらなんでもChihokoの転校先を学園が知らないことなんてまずありえないし、それだけMeguruにとって重大な問題だったはずのChihoko問題を何も片づけないまま放置して終わってしまうというのは、流石にモヤモヤが残ります。魔女の存在をMeguruがすんなり信じたのも(これは省略されてるだけかもしれないですけど)謎ですし・・・。加えて言うと、魔女の存在をMeguruが知った時点で、それほど大切な友達だったなら、MeguruはChihokoを救うことを願いにして魔女契約を結ぼうとしてもおかしくないと思うのですが、その素振りさえ見せないというのはね…。キャラゲーにもかかわらず、シナリオの都合でキャラを動かしてしまっていると言われても仕方ないですよ。他にも、Akagiがいるのだから、Tsumugiルートで登場した契約の抜け道とか、いくらでもChihokoの話にうまく決着をつける方法はあったのになぜそれをしなかったのか。

 キャラのすばらしさが際立っているだけに、このシナリオには落胆せざるを得ません。

 

 …と、ボロクソに言ったところで、ルート後半です。後半は主人公のエンパス能力に焦点が当たります。Meguruの気持ちを"tasty"と感じたことで、今までは迷惑だとしか思っていなかった自分の能力をありがたいものだと感じるShuji。これ、面白いんですよね。"tasty"という表現が使われるヒロインは、Meguruを除いて他にいないんですよ。メインヒロインのNeneですら"tasty"は使われていない。それはつまり、MeguruだけがShujiに対してストレートな想いを持っていることを意味します。他のヒロインたちは、それぞれ自分の中に悩みなりがあるために、素直な感情を出せないですからね。このあたり、丁寧に作ってあるな、と感じる部分でした。

 そこで、簡単に2人は結ばれるのかと思いきや、感情の味はわかるものの、その味が意味する感情自体がどういうものか理解できないため、両片思いでありながら一歩を踏み出せないという状態へ。通常の主人公よりアドバンテージを持っていながら、ダサい・・・。

 ↑感情を読める能力を持っていながら、デート中は散々Meguruの想いと異なる行動をして彼女を狼狽させてしまった主人公。しかし、デート中常にMeguruが主人公の腕の空いている側に陣取っていたことに気付き、そこから「手をつなぎたい」という彼女の想いに思い至ります。

 ↑ただただ手を繋ぐだけの一枚絵。しかし、ここまでの積み重ねがあったことにより、その破壊力はなかなかのもの。

 

 本ルートでは、Shujiはエンパス能力をふんだんに利用して、Meguruとの仲を深めていきます。そのことに対して罪悪感を覚えて思い悩む場面もありますが、それはそれ。もしこの能力がなければ2人が付き合うこともなかったわけですし、ましてや自分にとっては生まれた時から寄り添い合っている相棒のような能力なので、なんだかんだこれも自分のアイデンティティなんだと、前向きに折り合いをつけることに成功します。しかし、望んで能力を得た母と違って、思いもよらず受け継いでしまったその能力に苦しめられてきたわけですから、折り合いをつけるのも簡単ではなかったでしょう。このルートではヘタレな彼ですが、このあたりはしっかり成長し、そして気づきます。感情を読めるだけでは不十分なのだと。

 ルート後半はもう甘々で甘々な恋人生活を見せつけられ続けるのですが、そんな主人公の成長もあって、上手く平坦にならずにシナリオを運んでいたと思います。何より、Meguruは声が最高ですからね!(3回目)

 

Tsumugiルート

 残ったのがメインヒロインのNeneと彼女だけなので、消去法でTsumugiを先にプレイ。キャラ付けもよくわからないし、共通ルートではあまり惹かれなかったのですが、、、

 ↑女子の服になると意外にも可愛い。

 というか、魔女に変身した状態で服を着替えた場合は契約の代償を支払わなくても良いって、そんな抜け道あるのかw そして、コスプレコンテストの投票用紙を他の誰でもなく彼女へ渡すという、イケメンでもなかなかできないようなアプローチをするShuji。あんなにヘタレだったMeguruルートとは完全に別人だろこれ。

 ↑そしてこうなるTsumugi。なるほど、可愛い。

 

 ところで本作ではルートによって様々な設定が明かされます。それはヒロインに関する秘密に限らず、主人公やサブキャラ周りの設定である場合もあります。例えばToukoルートでは主人公の母親がどういう人物であったかが描かれますし、Meguruルートでは主人公の能力のことがより深堀りされることになるわけです。そしてこのTsumugiルートでは、主人公が「死んだ魚の目」に陥った経緯(の一部)が明らかになります。

 ↑学校をしばらく休んでいたある日、担任とクラスメイトが家に襲来。「明日は学校に来てね」と、本音ではない声で話したことで、強烈な吐き気を覚えます。しかしここで無下に断ったり、吐いてしまったりすると、今後学校でどういう扱いを受けるかは明白なため、主人公は愛想笑いで「明日は行くよ」と返事するのでした。こうして、空気を読み相手の要求を決して断らない、死んだ魚が徐々に形作られていったのでした。

 

 また、本ルートでは、TsumugiのAlpであるAkagiの成長が描かれますね。

 ↑最初は、人間の心がまったくわからなかったAkagiですが、ShujiとTsumugiとが仲を深め、それに関わっていくに連れ、微妙な感情の機微を少しずつ獲得していきます。

画像

 ↑また、落ち込んだTaichiという、超レアな姿が見られるのもこのルートだけ。この辺りはシリアスではあるのですが、Tsugumiルートは子犬が登場してからの展開が強引なのと、「また記憶ネタかよ…。ToukoルートでもMeguruルートでも出ただろそれ」という気持ちもあって、それほどシナリオに入り込めませんでした。Meguruルート同様、キャラはとても良いのに、シナリオが及第点に達していないことが原因で相対的に評価が低くなっています。

 とはいうものの、最後はしっかりと着地を決めてくれ、1本のルートとして完成したものにはなっています。

 

Neneルート

 最後は正ヒロインのNeneです。

 彼女のキャラは、個別ルートだけではなく共通ルートや他キャラルートも含めて全編とおして描かれることになるので、かなり多面的で濃いものとなっています。そしてこのルートをプレイすればわかりますが、このゲームは最初から最後まで、NeneとShujiのための物語でした。

 ↑Toukoルート並に、ルート序盤からグイグイ行く主人公。Meguruルートのヘタレっぷりはどこに行ったのかという図々しさと男らしさ。

 

 ↑このルートでは、ライターさんの遊び心でしょうか? Kariyaを除く全メインヒロインの「理想の告白のされ方」が開示されます。ToukoはちょっとSめに上から命令されるのが、Tsumugiは2人きりでロマンチックに、ということで、まさに2人のルートと合致しているのに対して、Meguruだけが理想と現実が180度違うの、これもうわざとでしょう笑

 ↑告白シーンでこんなにオ○ニー連呼する正ヒロインとか後にも先にも彼女くらいでは…?

 

 ↑物語の中盤で、大きな事実が判明します。Neneの願いは、「両親が離婚しなかった世界でrestartする」というもの。そのため、Shujiの心の穴が塞がりNeneが心のかけらを集めきった時、Neneはこの世界から消えてしまうことになります。残された時間を太く短く過ごすのか、それとも細く長く過ごすのか、が1周目終盤の焦点になります。

 

 ところで、本ルートについての感想を読んでいると、1周目の世界の主人公に対するケアについてモヤモヤが残る、という意見も多いようです。それは、よく理解できます。私の好みとしても、SFやファンタジーで、この世界での幸せを犠牲にしてでも、来世や平行世界での幸せを取るというタイプのシナリオには共感ができないんですよね。自分が感情移入しているのはあくまでもこの世界での主人公なわけで、平行世界に行ったりや転生してしまったりすれば、その先にいる主人公はもはや別人だという感覚になってしまいますから。

 ただ、サノバに関して言えば、私はそれほどネガティブな印象は感じませんでした。

 ↑たぶんですが、丁寧な描写によって、1周目のShujiとNeneとが、悩みに悩んだ末に自分たちの運命を受け入れ、その結論に至ったことが理由だと思います。

 周りのキャラたちがしっかり応援してくれた上での選択だったことも大きいですね。Neneと出会ったことでShujiはとても強く成長しましたから、この時点での彼が男気を見せてNeneに笑ってサヨナラを伝えることに対しての違和感は特に覚えませんでした。

 

 しかし、restart後のNeneも、決して幸せではないのがまたプレイヤーの心を抉って来るところ。

 ↑restart前と異なり、両親は離婚してはいないし表立って喧嘩するわけではないものの、関係は冷え切っており、会話はNeneを介してしか行われない状態。魔女の契約をした時点でNeneは愛を知らなかったがために、両親が一緒にいさえすれば幸せな家庭が気づけるものだと思い込んでいたわけですが、Shujiを関係を深めることで愛情を知ってしまった今のNeneならば、それが誤りであることに気付いてしまいます。

 ↑タイムリーにも、私もたまたまこのタイミングで子育ての本をたくさん読んでいたんですよね。そこで、子どもが幸せになる要因として最重要とされているのが「両親の仲が良いいこと」なんですね。離婚しているかどうかは無関係です。離婚せず仲が悪いくらいなら、離婚してつかず離れずの方がよっぽど良い環境。

 

 ↑周りと距離を取っていた1周目とは異なり、自分の幸せだけではなく率先して周りの幸せをも作り上げようと走り回るNene。自分の世界改変によって周りが不幸になることを許せないという、ジコチューなのか利他主義なのかよくわからないNeneの内面。

 

 ただ、だからこそ彼女が気負い過ぎて張りつめているところを看破しては、大勢の前でこれは俺の彼女だと宣言し、姫をさらっていくShujiはとてもカッコいい。その後、相変わらず自己評価の低いNeneの、これまでの十数年間の努力をしっかり受け止めつつもその気負いを優しく指摘、解消する一連の流れは、まさに人生2週目同士。そもそも死んだ魚の目のShujiを救ったのがNeneでありOCメンバーなので、2人は持ちつ持たれつの関係です。

 エンディング直前、ハロウィンパーティの後で、各キャラからNeneへ感謝が述べられていくパートは、自縄自縛で思い悩んできた彼女がついに束縛から解放されるシーンとして、とても綺麗でした。

 一見すると他者の悩み相談に優しく乗りつつ、その真の目的は相談者の心のかけらを集めることだった1周目。

 自分のわがままで世界を改変したくせに、その影響で他者が不幸になることには耐えられず、1周目以上に無理をして他者を救おうと躍起になっていた2周目(しかもあんなに望んでいた自分の願いは全く叶わないという絶望の中で)。

 しかしながら、相談者やOCメンバー、その他Neneに関わった人々は、確かに彼女に感謝して幸せな時間を手に入れている。この、いずれのNeneをも救い出す本作屈指の感動シーンへと彼女を導いたShujiは、最高に主人公していましたね。まさにグランドルートに相応しい締めくくりでした。

 エンディングで最初に登場するのが「リボンを断ち切るハサミ」だったのは、本作Neneルートの根本を表現している演出でした。そう考えると、Neneの魔女服のエッチベルトも、実は自分を縛り付けるメタファーになっていたのかと思い当って、なんかもう笑っちゃいました。ただ酷いだけの衣装じゃなく、ちゃんと練り込まれてたのかよってw

 ↑Neneさんの中の人、今やもう表世界で大暴れしてますからね。ずっと聞いていても飽きないほど魅力的な声です。末永く活躍してほしい。

 


 

ところで、魔法とは?

 本作全編を通して気づいたことが1つ。

 本作において、魔法に頼ったキャラは、1人残らず不幸になっているんですよね。

Nene:発情の代償。1周目の世界から排除された上、2周目では自らの手で両親を離婚させる。

Tsumugi:嘔吐の代償。可愛いものが好きなのに、女性らしいことができなくなる。

Chihoko:記憶を失う代償。

Shuji母:死亡

Shuji:死んだ魚の目。ぬいぐるみになる代償。

 どのルートでも、問題の解決に魔法は使われませんでした。キャラゲーにメッセージ性を求めるものではないと思いますが、それでもNeneルートの2人を見る限り、運命は自分で~というのが本作の伝えたかったことなのかな、と。

 

まとめ

 なんというか、キャラゲーの概念をぶっ壊すような名作でした。書きたいことは書き切ったので、もうこれ以上の感想は何も出てきません。

 18禁とかベッタベタの恋愛ゲーに抵抗がないのなら、本作は英語多読用としてプレイするのは全然アリだと思いますよ。少なくとも、Neneルートだけでも損はしないかと。正直、私は本作をプレイしたことで「声優買い」する作品が出てきましたし、ゆずソフトの作品は、もう少しチェックしても良いかなと思うようになりました。長所短所込みで、素晴らしいプレイ体験だったと言えます。

 

 

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