オールインワン!
今回ご紹介する本は、サラタメさんの書かれた『シン・サラリーマン』です。サラタメさんは、ビジネス書解説系の超有名youtuberなのでご存じの方も多いでしょう。彼の動画は語り口が非常に軽妙でありながら、もともと有益な書籍だけを厳選し、その「核」となる部分を過不足なく、かつ独自の「補足」付きでコンパクトに紹介されているということで、私も欠かさず視聴しています。そのサラタメさんの書籍とあっては買わない選択肢はなく、しかし私自身も多忙だったために、購入から1年以上経った今さら読破した次第です。
結論として、本書は20~30代の人、特にサラリーマンとしての現状に限界や疑問を感じている人にとって超有益であると感じました。
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前述のとおり、本書は古今東西の歴史的名著から最新の実用書まで、幅広い書籍の中から特に素晴らしいもののエッセンスだけを集約したもので、かつそれを会話形式で無理なく1本のストーリーとして仕立て上げるという、本来1,800円(+税)などでは到底入手できるはずのない知見の塊です。そのためページ数も600ページ超えというなかなか圧倒される分厚さになってもいるのですが、実際に自ら300冊もの書籍を全部読んで咀嚼することと比較すれば、コスパ・タイパの面で断然優れているのは明白。相当レバレッジの効いた投資と言えるでしょう。
本書の結論
本書の結論は、「真の安定を手に入れるためには、①リーマン力、②副業力、③マネー力の3点を身につけることこそが重要である」というものです。「安定」という、あくまでサラリーマン目線の用語が使用されているのがポイントで、これは再現性の高さと言い換えることができるでしょう。
この中で、私は②と③についてはそれなりに勉強してきていますので、特段新たに得られたものはありませんでしたが、①についてはこれまで類書の類を読んでこなかったこともあり、サラリーマン生活をしていく中でのマインドセットなど参考になる点が相当多かったです。就職したての20代にも、これから中間管理職になっていくであろう30代にも、はたまた転職を考えている方々にも、それぞれに響くものがあるはずです。特に転職については(私自身にはあまり関係ない部分なので拾い読みしかしていませんが)、サラタメさんの得意とするところでもあるため、読者の立場によってはきっと何らかのヒントが得られるかと思います。
本書の概要
では本書の中で私が特に重要と感じた点についてアウトプットしておきます。ただし私が感銘を受けたのは「リーマン力」の部分に偏っているため、他の2つについてはここには記載しません。気になる方はぜひご自身で読んでみて下さい。
なお、この「リーマン力」の項目は、タイトルは知っているけど実際には読んだことのなかった有名書籍を落とし込んだ内容になっています。私にとって得られたことが余りにも多すぎるのでクリティカルだった部分だけをいくつかだけピックアップします。
(1)「STAR」こそが全ての基本
リーマン力は「人間関係」「思考法」「ホウレンソウ」・・・など、様々な項目から成るわけですが、なんだかんだで最も重要なのがこの「STAR」を意識して働くというマインドセットだそうです。
これは「Situation」「Task」「Action」「Result」の頭文字を取った言葉で、人事考課の面談や面接でよく使われるフレームワークです。一言で言えば、上司から与えられたTaskをただこなすのではなく、自ら設定することを言います。具体的には、例えば経理担当者であれば、
Situation:弊社では各部門の予算状況をエクセルで集計していた。
Task:決算期は各担当者がその作業に2週間を取られ、別作業が滞る課題があった。
Action:各担当者の業務量を削減する自動集計フォーマットを作成し、全社に展開。
Result:各担当者が3日で作業を終えられるように、業務効率化に貢献した。
というような具合です。
社会人として当たり前のことではあるのですが、こうやって明文化されると改めて自分がそれをできているのか問いかけなおすきっかけになりますね。人事評価の際や転職の際には、このフォーマットで自らの具体的行動をアピールできると強いですね!
ちなみに、私自身は「KPT法」というフレームワークで業務を行うことにしています。これも発想は同じで、K:keep、P:Problem、T:Tryの3つの柱で現状の課題を評価・修正していくという考え方です。他にも有名なPDCAサイクルとか、まあ名前は何でも良いので、とにかく自分自身や会社が置かれている現状を正しく把握し、問題点を的確に捉え、いかにそれを改善するかのプロセスを自ら(上司に命令されるまでもなく)立案できるかが、本業での成果を上げるコツですね。
(2)一生使える「人間関係のマトリックス」
この項目は、特に対上司や対部下の人間関係で効果を発揮しそうで、個人的に最も気になりました。超ざっくり言えば、人間は誰しも↓のマトリックスの4タイプの資質(4つの仮面)を持っており、他者とのコミュニケーションの場面においては相手の対角になる傾向がある、ということです。
例えば、上司が左下の「ネガティブ&自立型」の管理職タイプであれば、自分は(その上司との対面する場面においては)右上のムードメーカータイプになりやすいということになります。この4種類のポジションにはそれぞれ長所と短所があり、最悪なのはポジションが固定されてしまうこと。そうなると短所が際立ってしまい、ツライ結果が訪れることに。
私自身に落とし込んで考えてみると、現状直属の上司は完全に左上「ポジティブ&自立型」のリーダータイプなので、私自身は右下のカウンセラータイプにポジショニングすることになります。このタイプの最悪のケースは、ありとあらゆることが心配になり、自分には全く関係のないことにまで感情移入し、落ち込みの沼から抜け出せなくなることです。その対策としては、「自分の課題」と「他人の課題」との切り分けが有効であるとのこと。逆にリーダータイプの上司の最悪パターンは、自分がまるで全知全能の神になったかのように思えてきて、反省点やリスクがまったく見えなくなることだそう。
つまり、私がカウンセラー役として上司がそうならないよう上手く話を傾聴し、消化できれば良いわけですね。自分が苦しくならないように、「自分の課題」と「上司の課題」との切り分けながら・・・。うーん、難しい💦 しかし、こうやって人間関係をある種の典型に落とし込んで考えるのは、有効な手段だと思います。人の性格なんて、何らかの指標がなければ複雑すぎて掴みようがないですからね。転勤や人事異動の度に、このマトリックスは活用できるでしょう。
(3)仕事を振られたら「ゴール」と「ルール」
この項目は、社会人1年目の人から活用できる強力な仕事術です。内容は単純で、上司から仕事を振られたら、他のことはおいてもとにかく「ゴール」と「ルール」だけは確認することです。
ゴールについてはわかりやすいので割愛するとして、ルールについて少し書くと、「ヒト・モノ・カネ・時間・情報」などの制約条件の確認が必須だということです。これらのリソースをどれだけ使えるかで仕事の難易度が変わってしまうので、必ず最初に確認しなければならない、という意味ですね。
(4)ベストは2→5→8割確認
これはホウレンソウ、特に上司に仕事の確認をするタイミングのコツです。進捗状況が2割、5割、8割段階で確認するのがベストだと。
2割段階は前述のように、「ゴール」と「ルール」の確認。
5割段階は方向性の確認。大まかな草案を手書きで描いて上司に見せ、上司と自分との間に認識の齟齬があればこの時点で修正を行います。
一方、8割段階では、もう細かい修正しか行いません。5割時点で方向性は詰めていますので、この時点で仕事はほぼ完成形となっており、最終確認をもらうだけのフェーズなはずだからです。
上司からの信頼を失う行為は「上司に確認したものの、修正が間に合わない」であるため、それを防ぐためにも2割時点、5割時点でそれぞれチェックを受けることが大切だというお話でした。
(5)目指すべきは"グレー"な交渉
本書では、交渉術についても扱われています。交渉と聞くと「はい、論破!」みたいな考えをしてしまう人がいるようですが、日常やビジネスの場面でそんなことばかりやっていると友達をなくしますし、長期的に見て得することは少ないでしょう。この点、本書では、より良い交渉とはそういう白黒つけるものではなく、「グレーなもの」だと結論づけられています。
相手を論破する「ハード型の交渉」でも、相手の言いなりになる「ソフト型の交渉」でもなく、互いがWIN-WINになれるポイントを探すことこそが交渉の本質なのです。AさんとBさんとが1つのミカンを取り合っている時、どちらかが奪うのを良しとするのではなく、中身を食べたいAさんは中身を、皮でジャムを作りたいBさんは皮を得ることができるような、そんなグレーゾーンを見つける共同作業を目指すのです。
そしてそのためには、
1.アピールより傾聴に徹する。
2.互いの要望を、腹を割って語りつくす。
3.2で互いの要望の最大公約数を叶えられるポイント(=グレーゾーン)を探す。
というステップを踏むことになるわけですね。
私自身、交渉についての書籍は他にも数冊読んでいましたので、この項目については復習しながら楽しんで読むことができました。よくまとまっていると思います。
転用 ~本書を読んで自分はどうする?~
さて、ホームラン本欲張りセットな本書からは、当然のごとく沢山の気づきを得ることができました。特に「リーマン力」については転用できる部分が極めて多く、今後の本業での身の振り方を見つめなおすきっかけとなりました。
中でも最も参考になったのが(2)一生使える「人間関係のマトリックス」の項目です。会社という閉鎖的な組織で労働に勤しむ限り、どうやっても自分には合わない人種というものが現れます。その際に、何の武器もなしに立ち向かってしまっては、まるで未知の生き物と恐る恐るコンタクトを取るかのような恐怖に駆られ、仕事どころではなくなることがままあるでしょう。そんな折、(人間はそんな単純なものではないという前提はこの際置いておくとして)、こういった基準でとりあえず類型化して考えてしまえば、少なくとも何らかの方針をもって相手に接することができるというメリットがあります。またこのマトリックスの優秀なところは、「自分は相手の対角にポジショニングする傾向にある」という点です。つまり、材料不足で相手の性格が不明瞭であった場合は、その相手と対峙した時の自分のポジションを客観的に分析することにより、結果鉄器に相手の性格を推測することが可能になるわけですね。このように、判断材料が1つ増えるというのは人間関係において極めて重大なインパクトを与えるでしょう。
私自身、現在の会社ではいわゆる中間管理職というポストにいますので、業務の半分くらいはコミュニケ-ションや調整から成っています。その際にこの考え方を導入することで、闇雲に相手のモチベーションに訴えたり独りよがりな理由で褒めたり叱ったりするのではなく、より一人ひとりに合ったかかわり方を目指せすことができるようになりそうです。試行錯誤しながら、モノにしていきたいですね。
ということで、ほとんど①リーマン力についてしか触れませんでしたが、類書を読んだことのない方々にとっては、②副業力、③マネー力についても極めて有効な知見を得ることができるはずです。本記事のタイトルの「たった1冊で300冊分の知見!」というのは、まったく誇張していませんからね。今まで読んだビジネス書が少なければ少ないほど、本書を読破した時のインパクトは凄まじいものとなるでしょう。それほど素晴らしく、急所だけをまとめ上げた良書でした。
以上、今回は『シン・サラリーマン』をご紹介いたしました。ご参考になれば幸いです。
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