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英語ゲーム多読の記録④【HARMONIA】日本のノベルゲー

 

作品紹介

 世界は人間同士の戦争により荒廃した遠い未来。大気は灰色に汚れ、大地には生命の息吹は途絶え、水は干上がっています。人口は最盛期の頃よりも大きく数を減らしていました。そんな時代に、フィロイドと呼ばれる感情人形(人間と同じように感情を持ち、食事もし、人間のパートナーとして生きていく人工的な存在)が、朽ちた研究所で目を覚まします。後にReiと名付けられた彼は、自分を拾ってくれた聖女であるShionaとの生活の中で、徐々に他社とのつながりや、失っていた本当の感情を学んでいきます-――。

 『HARMONIA -ハルモニア-』は、Key15周年メモリアル作品としてKeyが制作したゲームで、海外で先行販売された経緯をもつ作品です。Planetarianと同じキネティックノベルですので、選択肢はない完全な一本道ノベルとなっています。また、世界観も「荒廃した未来の地球」で、ロボット(本作内ではPhiroidと呼ばれるアンドロイド)が登場する点でPlanetarianとの共通点もありますね。短編でサクッと終わらせられるだろうと考え、私もこれら2作品を連続でプレイしました。

 Planetarianと比べるとガチガチのSF感や閉塞感は少なく、キャラクター動詞の掛け合いでシナリオが引っ張られる、「いつものKey」といった印象です。そして、Key作品ということはもちろん、プレイヤーは泣きを強要されます。個人的には、泣きゲー度、シナリオの力強さ、BGMの質など、様々な面でPlanetarianを上回る完成度を誇ります。文句なし、超おすすめです。

 

必要英語力など

推奨英語力:TOEIC780~、英検2級~

 ゲームプレイ開始時点の私の英語力は、TOEIC905点でした(英検は受験歴なしですが、複数の語彙診断サイトで8,000語超の評価のため、準1級程度でしょう)。

 推奨英語力は"Planetarian"や"Doki Doki Literature Club!(DDLC)"と比較すると、少し低いです。世界観はともかく、キャラ同士の会話がほとんどなので、難しい単語や表現はそれほど登場しないからですね。特定の場面ではスラングが多用されますし、時たま英検1級超えの難単語が出るときもありますが、音声が日本語で選択肢も存在しないのでシナリオを見失うことはないでしょう。

 総合的に見て、TOEICで780点もあれば十分だと判断しました。ただ英検準2級だとさすがに単語レベルできつくなり物語に集中できなくなる恐れがあるので、せめて2級程度の語彙力はほしいかな~という感じです。

 

推定プレイ時間:10~15時間

 私の場合、プレイ時間は15時間程度でした。本作は声優さんが素晴らしすぎるため一言一句セリフを聞き逃したくなかったのと、泣きのシーンで放心したりしてなかなか読み進められなくなったことが、プレイ時間の増加に影響していますw

 また、いつものように知らない単語や表現が出てくるたびに辞書を引いてはAnkiにぶち込む、という作業を繰り返しながらのこのプレイ時間ですので、私より英語力が高い人は8時間もあればクリアできるのではないでしょうか?

 

よくない点

 どんな作品でも、良い点と悪い点がありますからね。両論併記はさせていただきます。良かった点は後から書くとして、まずは悪かった点を。

 ・・・といっても、本作に限っては悪い点なんてないに等しいんですけどね、マジで。

日本語音声かつ主人公音声なし

 これはPlanetarianと同じです。英語学習用としてとらえた場合、やはり音声が日本語なのは一長一短があります。実際には文法力が足りずに読めていないのに、耳から日本語訳が入ってきてしまうことによって、あたかも実力で会話文が読めちゃってるような気がしてしまうんですよね。残念、それは錯覚です。日本語音声に惑わされず、知らなかった表現はAnkiにぶち込むなりノートに書きとるなりして、地道に暗記しましょうね。

 

声優にハマれるかどうか

 本作にはヒロインが2人登場します。そして私は最初どちらの声にもハマれませんでした。Shionaはなんか想像してた声とギャップがあったのと、Tipiは「ああ、またこういう狙いすぎの典型的ロリキャラか~」って感想が最初に来ちゃったんですよね(後から知ったのですが、Shionaの声優さんってめちゃくちゃ有名な人だったんですね。あの有名な巴マ・・・さんの。全然気づきませんでした)。

 もちろん、そんなことは序盤ですぐに気にならなくなりましたし、最終的には「この声しかなかったやんけ!」という掌返しに落ち着くわけですけど、最初に戸惑いがあったのは確かです。

 ・・・う~ん、あまりにも悪い点がなさすぎてこじつけるしかなかった感じだな💦

 

おすすめな点

 とまあ、よくない点はこれくらいにして、次は良かった点について。

Reiが人間らしさを獲得していくシーンが丁寧

 主人公であるReiは、ご飯も食べるし、痛みも感じます。驚くと足は震えますし体はこわばります。顔色が真っ青になることもあります。ただ、物語序盤の彼は、自身のそういった体の変化の理由を理解できなかったりします。自らの不注意で時計を壊してしまった時、なぜMaddが怒ったのかも、理解ができません。「怒りという感情はいったい何のために必要なんだろう?」そんなことを逐一考え込み、何度も経験を積みながら、「恐怖」「怒り」「喜び」「照れ」といった感情を1つずつ獲得していくのです。

↑Maddは自分の気持ちを素直に表現せずに怒りで代用してしまう、ある意味人間的なキャラで、Reiは彼のセリフを表面的に受け取ってしまうわけですが、Reiとは正反対に他者の気持ちを汲み取るのが得意なShionaからすれば、彼の本音は別のところにあることが容易にわかるわけです。その対比が面白い。

 

 本作はそんなReiが試行錯誤して心を獲得していく過程が非常に丁寧に描かれています。

↑Shionaの荷物を半分持つという些細な行動だけで、胸の奥がこそばゆくなるRei。いや、キミたちは中学生カップルか!って感じで微笑ましいのなんのって。

 

↑Tipiと仲良くすると不機嫌になるShionaに、「それってジェラシー?」とか面と向かって言っちゃう空気の読めなさも、彼の味なのよね。

 

 また、他のキャラクターもそれぞれに悩みを抱えていたり思うところがあったりして、Reiの成長と彼らの人生の転換点とがシナリオ内で綺麗に絡み合っていきます。何らかの想いを抱えているのは、一見ただただ優しい聖女にしか見えないShionaも例外ではありません。彼女は一見、ぽわぽわしているようですが、実は芯を持ったキャラクターです。街中の悩みを解決しに回ろうというReiに対して、「まずは1人でやらせた方が良いよ。そうしないと人は成長しない」と冷静に諭す場面なんかは、決して優しいだけではない彼女の性格を端的に表現しているシーンです。

 Planetarianでも同じことを書いたのですが、やはりKey。単純に、シナリオの完成度が高いです。しかも、登場人物が少なく平坦だったPlanetarianと比較しても、本作は非常にフックの聞いたシナリオになっています。おそらく多くのプレイヤーが、第3章くらいまでは、「Reiが様々なキャラの悩みを解決しながら感情を獲得していく話」になるだろうと予想すると思います。しかし、本作はそう単純ではなく、まず第4章で雰囲気が一変します。それも、思いもよらない方向に。

 そして突入する第5章。こちらは「優しい世界」ではないにしろ、今までの伏線からすると、こうなるのはむしろ予想通りなのではないでしょうか。ただ、そこから物語は急展開を迎えていきます。あとはもう、最後の第9章まで手が止まらないはずです。字幕が英語だとか、そんなことは関係ありません。知らない単語が出てこようが、辞書を引く暇があるなら先を読みたい、そんな気持ちになっているはずですから。

 

これでもかと出てくる口語表現

 上述のとおり、Maddさんは常に怒っていて非常に口が悪いキャラなのですが、それをきっちりと英語で表現してくれているので、普通に学習していたらまず目にしないような口語表現がガンガン出てきます。

↑下から3行目、"You're a real piece of work."という表現がありますね。 piece of work はもちろん「作品」という意味ですが、人に対して使った場合は、「不愉快な」とか「厄介な」といったネガティブな意味になります。日本語でも、皮肉的に「こいつは傑作だ!」って言ったりするし、それに近い感覚なのでしょうか?

 

↑下から二行目、"You have some nerve."は、「良い度胸してるじゃねえか」。「ずうずうしいなあ」のようにも訳せます。時計を壊しておいて、さらに頼み事までしてくるReiに対して放った言葉。

 

↑一行目、"Sorry to break it to you, but"、音声は「だがなあ」。他には、「悪いんだけど」などと訳されるようです。

 

 ・・・とまあ、ここまでたった1シーンの中でのセリフです。

 こんな風に、Maddさんが発するセリフはネイティブが使う口語表現のオンパレード。あまりにも口汚いのでこれを日常生活で使って良いのかは精査する必要があるといえ、こんな良い教材は他にないですよ。

 そしてこの点については、音声が日本語なのが有利に働いています。日本語のニュアンスを英語だとどう表現すれば良いのか、目と耳で一気に叩き込めるのは非常に有用です。英語音声+英語字幕だと、純粋日本人には肝心のニュアンスがわかりませんからね。英語学習という点で、日本語音声には一長一短があるようです。

おすすめ度

 おススメ度は、10段階で10です。

 プレイしない選択肢はありません。それほど完璧な作品なので、こんなつまらない感想記事を読んでいる暇があれば、即買ってプレイしましょう。


 

ネタバレ感想

 ※ここから先は、思いっきりネタバレしています。未プレイの方はご注意。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

異常行動をとり始めるShionaさん

 序盤から、ReiがTipiに優しくすると唇をかみしめるなどの不可解な行動を取っていたShionaさんですが、第4章の青年の葬式を境に、異常行動が目に見えて増えていきます。

↑青年の葬式で悲しみに打たれたTipiの元に向かおうとするReiを、「悲しみは1人で乗り越えることが彼女の成長につながる」と、2日続けて引き留めるShiona。Tipiを放置して「そんなことより歌おうぜ!」とReiを誘う鬼畜っぷりに、プレイヤーである私も唖然ですw 図書館で悲しみにくれる孤独な少女を黙殺しながら、自分は街角でアイドルのように愛されて気持ちいい~!・・・うーん、鬼畜!

 まあそれは冗談として、正直、keyじゃなければ、ここからShionaがヤンデレルートに突入してもおかしくないよな、という不気味さはありましたね。この辺りは(というか、完全にそういうミスリードの演出です)。

↑1人で気持ちよくなっちゃってるShionaさんを横目に、完全に浮気状態のReiさんもそれはそれでなかなかに酷いw

 

↑異常行動が行くところまで行ってしまい、Reiを教会に閉じ込めて単身でTipiの元に向かうShionaさん。その優しい言葉に最初は彼女を信じていたReiですが、さすがにおかしいことに気付き、Tipiの身を案じ始めます。

そして・・・。

↑こっわ! まさかこんな展開になるとは。予備知識なしで読み始めたから、この辺マジで怖かった。

 

↑"your mom and dad are... already dea(d)..."

 なんで常に笑顔でそんな酷いこと言えるのよ・・・。ここからのShionaの豹変は、声優さんの演技と相まって胸を抉ってきます。日本語音声で良かった!と思える場面。

 

 さあ、ここでタイトル画像を見てみましょう!

 ↑うーん、どう見ても正ヒロイン。なのにどうしてこうなった・・・。

 

 第4章だけを切り取れば、Shionaさんはヤンデレというか、いわゆるモラハラ女子そのもの。「あなたのため」というセリフを盾にしてどれだけ酷いことでも言えてしまう。だけど、実際Shionaは教会の聖女で常に笑顔を絶やさない街の人気者。かたや図書館に引きこもり泣き続けている腫物扱いの青い少女。この2人が対立したとして、人々がどちらにつくかは明白なんですよね。まさにリアル現代社会! 汚い! さすが人間! 汚い! この汚い現代社会をReiくんに見せつけて、「人間は良い人ばかりじゃないんだよ?」という方向にシナリオは進むのでしょうか?

 しかしReiくんは強いです。こんな恐ろしいShionaの姿を見てもなお、ShionaもTipiも2人とも笑顔でいてほしいと願うのですから。そして・・・。

↑イチャイチャしてるReiとShionaを、冷静にたしなめるTipi。あんなに取返しつかないであろう場面から、こんなほのぼのしたシーンに帰着する奇跡。

 

終盤のツイストが見事

 ・・・とまあ、そんな感じで非常に恐ろしいモラハラヒロインかのように見えたShionaさんなんですが、真実は全く異なりました。

 そもそも、人間だと思われたShionaとTipiは実際はPhiroidで、自身をPhiroidだと思い込んでいたReiこそが本物の人間だったのです。Reiの右手に埋め込まれた機械は、戦争で失った右手を活動させるための医療用義手だったのです。それどころか街の人々も全員がPhiroidで、いつの日か人間が帰ってきた時に、スムーズに暮らしを引き継げるようにと、phiroidたち自身が人間の「日常」を模倣していたのでした。

 感情を失った人間たちと、人間よりも人間らしいPhiroidたち。この逆転の構図が明らかになった時、物語はひっくり返ります。

 さらに、Tipiが常に図書館にいなければならなかった理由、全ての書籍が手書きだった理由、Maddが動かなくなってしまった理由なども次々に明かされます。そして、ShionaがあんなにもTipiに対して辛く当たらなければならなかった理由も。

 ↑怒りの感情を忘れたことでMaddさんが壊れてしまったように、Tipiは悲しみという感情が満たされてしまえば死んでしまうというのです。ShionaはTipiを守るために、彼女を悲しませ続けなければなりませんでした。・・・いや、Tipi不幸すぎるだろそれ💦よくそんな酷い設定思いついたな。

 ↑TipiはShionaとは違い旧モデルのPhiroidであるため、人間の「死」という概念を理解することができないんですね。どれだけ説明したところでそれは不可能。きっと両親は帰ってくると、数百年間信じて毎日絵を描き続けるTipiは・・・。

 ↑良かった。あんなに酷いShionaさんはいなかったんだ!

 

 Phiroidの少年が人間の街で暮らしながら様々な感情を身に着けていく話と見せかけて、実際には、愛を失ってしまった人間が、Phiroidたちに感情を教えてもらう話というのが真相でした。

 そしてついにその時が。Tipiのバッテリーが、修復不可能になってしまうのです。

 ↑"Humans are selfish to their cores." 人間は根っから利己的だ。

 こんなに献身的なphiroidを生み出しておいて、自分たちは戦争ですべてを破壊する。

それでも平和だった世界をまだ夢見るPhiroidに、何もしてやれない。Tipiは、Shionaが自分につらく当たらなければいけない理由を、理解していました。このシーンは涙腺がかなり危うかった。

 

 ・・・と、熱が入って、あまりにも記事が長くなってしまいましたね。

 全部ネタバレしてしまうのはさすがに、なので記事はこの辺で置くことにします。ただ最後に一つ。本当にクライマックスはこの後に待っているとだけは書いておきます。Reiは人間でしたが、本当の意味で彼が人間になれたのは、物語の最後の最後。常に笑顔だったShionaが1度だけ見せる涙の意味を、瞬時に理解したシーンでしょう。

 あんなに物語のキーになっていたShionaの歌が、ずっとプレイヤーには聞こえないままシナリオが進んでいっていましたので、一番良い場面で流すに違いないとは思っていましたが・・・わかっていても避けられない感動ってあるんですよね。シナリオと音楽と演技の完璧な合わせ技で、見事に涙腺崩壊させられました。


 

まとめ

 「傑作も傑作」と評したPlanetarianを終えた直後にプレイしたのに、まさかそれを上回るとは・・・。これはKey15周年に相応しい、最高のノベルです。短編ですので、隙間時間でプレイできますし、中学3年生くらいでも頑張れば読めるはずの難易度です。

 ぜひ本作をプレイして、感動しながら英語多読しちゃいましょう!

 

 

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