英文多読とは
英語を学習方法の中に、「多読」というものがあります。
非常に完結に書くと、「幼児が読むレベルの簡単な英語本からとにかくたくさんの英語本を楽しく読みまくり、徐々に難易度を上げていくことによって、自然と大人向けの英語本でも問題なく読めるようにする」という学習法のことです(私の認識では、です)。
↑多読についてより詳しく知りたい場合は、『めざせ100万語!多読で学ぶSSS英語学習法』さん(リンク先)をご覧いただければと思います。
ここで、多読を進めるにあたり、超重要な三原則を上のサイトから抜粋します。
- 辞書は引かない (引かなくてもわかる本を読む)
- 分からないところは飛ばして前へ進む (わかっているところをつなげて読む)
- つまらなくなったら止める (1 2 の原則で楽しく読めない本は読まない)
この三原則、とっても大切なんですね~。
日本語音声ノベルゲーとは?
ご存知のとおり、私はSteamで英語のゲーム、中でもノベルゲーをプレイすることが大好きです。
なお、小説ではなくノベルゲーで英語多読をすることのメリットについては、こちら↓のエントリをお読みください。
字幕が英語のノベルゲーには日本発のものもあれば、海外発のものもあります。そして日本発のゲームの場合、少なくとも私が知る限りでは全作品が、音声までは英語化されず日本語のままなのです。まあわざわざネイティブの声優の中からキャラの声にバッチリ合う人を、それも高度な演技力を持った人を探し出して契約しようと思えば、時間もお金もかかりすぎますもんね。加えて最近のノベルゲーは、格安のものでもない限り、大半が主要キャラのボイス付きです。
そういうわけで、多読を目的に日本発のノベルゲーをプレイする場合、高い確率で「日本語音声&英語字幕」という、一般の人には馴染みのないプレイスタイルを強いられることになるんですね。目では英語を読んでいるのに、耳からは日本語が入ってくるという奇妙な状況。ここで気になるのは、このプレイスタイルで果たして多読効果がちゃんと発揮されるかどうかではありませんか?
ここで、10作ほどそういう日本産ノベルをプレイしてきた私が現時点で感じていることを書いてみたいと思います。結論から言うと、「このプレイスタイルでも多読の効果はある。ただ、英語音声&英語字幕の場合とは得られる効果が異なる」と思っています。音声が日本語であることにより、一長一短がある感じです。
日本語音声のメリット
①シナリオを見失うことなんてありえない
ノベルゲーは、通常の小説と比較して会話文が多い傾向があります。そのため、極論、地の文をすべて読み飛ばしてしまったとしても、会話文だけをつなげて読めば、シナリオのメインの部分は理解できるんです。このことは、上述した多読の三原則を守る上で大きな意味を持ちます。
だってそもそも、わざわざ英訳されるような日本のノベルゲーは、最初から完成度が高いんですよ。クオリティが保証されているからこそ、わざわざ英語化して海外へ出していると言い換えることもできます。だから、そんなゲームを日本語音声でプレイしている時点で、「面白くない」なんてことはあり得ない。同時にそのノベルが自分の英語力を大きく超えるほど高難易度の単語や表現で溢れていたとしても、関係ありません。だって日本語さえ理解できればシナリオから脱落することはないんですから。
英語音声&英語字幕では意外にも難易度の高い、「とりあえず一通りクリアする」という、簡単なようでそうでもないことが間違いなく可能となる。ここにアドバンテージがないわけありませんよね。
②瞬間英作文としての効果
日本語音声がのもう1つの利点は、「瞬間英作文」としての効果が期待できるということです。これはわかりにくいかもしれないので具体例を。
↑"I sincerely beg your pardon..." これは、Planetarian〜ちいさなほしのゆめ〜 の中で登場するシーン。ここでの日本語音声は、「重ね重ね、申し訳ありません!」です。
ヒロインであるゆめみは非常に腰の低いキャラで、こんな風に頻繁に主人公に謝罪します。また、彼女は人間ではなくロボットですので、ロボット三原則に基づいて行動し、人間を不快にするような言動はしません。そして、彼女たちの立場は「プラネタリウムの案内員と客」なんですね。
つまり、自分が店員として英語圏のお客さんに接する時には、ゆめみのような言葉遣いをしておけば、相手が気分を害することはないだろうと考えられるわけです。ただですね、英語字幕で"beg your pardon"と読んだ時にどんな印象を持ちますか? 純ジャパである私は、「いや、そこまでへりくだるの!? いくら何でもやり過ぎじゃない!?」と感じました。それが、調べてみるとこれは別に普通に使う表現なんですね💦 そしてじゃあ普通に使うとして、いったいどれくらいの丁寧さなのかを知ろうと思った時に、この日本語音声が非常に有用になってくるわけです。セリフだけでなくシチュエーションや声の調子、そういった様々な情報が、母語ならではの解像度で頭に入るんです。
このように、英会話をしていると「日本語でこんな感じのことを英語で伝えたいんだけど、果たして直訳しても自分が伝えたいニュアンスのまま伝わるのかな?」などと不安になることがよくあるわけですが、日本語音声&英語字幕のノベルを大量にプレイしておけば、シチュエーションごとのストックを増やすことができるため、実際にそういう場面に出くわした際、自信をもってスピーキングすることができるわけです。
言い換えれば、通常の英語音声&英語字幕と比較してリスニングへの効果は全く期待できなくなる代わりに、スピーキングへの効果が高い。そしてそれはそのままライティングにも流用できるという利点があるのです。
③声優のレベルが格段に高い
ノベルゲーを進めるにあたり、最も大事なこと。それは人によって違うかもしれません。しかし、私に言わせてもらえば、「没入感」こそが絶対的に一番だと断言できます。自分が主人公といかに一体化し、その世界を堪能できるか。それこそが感動の原動力であり、読む手を止めないための必要条件です。没入の境地に至れば、テキストの言語が日本語だとか英語だとかは何の意味もありません。たとえ難易度の高い英語テキストで未知の単語がガンガン出てこようが、状況がすでにクライマックスで読み手が世界に入り込んでいるのなら、物語の流れなんて手にとるように分かるはずだからです。一言一句までは理解できないとしても、クリティカルな部分だけはまるで鮮やかな絵画のように、あなたの眼前に映し出されるでしょう。
そしてそんな没入感を構成する要素が、シナリオだったりテキストだったり、BGMだったり、声優の演技だったりするわけです。・・・もう一度言います。没入感を構成する要素の1つは、声優の演技です。ノベルゲーを何十作もプレイしてみれば、この演技の占めるウェイトが果たしてどれほどのものか理解できるでしょう。そして、海外産のノベルゲーを複数作プレイしたことがある人は、そのクオリティに(ある意味)愕然としたことでしょう。
もちろん、Crystallineみたいな高クオリティのゲームもあるにはありますが、こういうのは稀だと思ったほうが良いです。明確に、日本の声優は海外の声優と比較して極めて演技のクオリティの平均値が高いです。日常会話のシーンでは、そこまで差がない場合もあります。しかし特に顕著な差が出るのが、いわゆる「泣き」のシーン。単に声を張り上げたり震わせたりすれば良いってもんじゃないんですよ…。少なくとも、声優じゃないハリウッド俳優なんかは物凄く心に刺さる演技をするじゃないですか?だけど声優はまだそのレベルじゃない。もう、全然ダメ。
もしかするとこれは文化や感性の差が影響しているのかもしれませんが、それでも私の琴線に触れる演技をどちらがするかと言えば、それはもう圧倒的に日本の声優です。さすがゲーム・アニメの土壌が長年醸成されてきた国と、誇って良いと思います。
その高水準な演技に支えられることで、プレイヤーの没入感が一気に深度を増し、言語の壁を突き破ることに繋がるのです。そこに、やれ音声が英語だとか日本語だとかといった些細な違いは、ノイズでしかありません。少なくとも地の文章は英語なのですから、耳から日本語のセリフが入ることが原因で、英語多読の効果がゼロになることなどあるわけがありません。
まとめ
以上、日本語音声&英語字幕のノベルゲーは英語学習にとって果たして有用化どうかについて書きました。
通常の英語音声&英語字幕が、4技能でいうところの「RとL」を同時に鍛える効果が期待できるのに対し、日本語音声&英語字幕のノベルゲーでは、L向上効果が期待できない代わりに、SやWの向上が期待できると言うことができます(もちろんRもです)。また声優の演技力の差により、日本語音声の方が読者の没入感が増すことが、有利に働くと考えます。「せっかく多読するのに日本語音声でやっても効果がないのでは?」と不安になり食わず嫌いしている方もいるかもしれませんが、ぜひ一度試してから判断しても遅くはないのではないでしょうか。
以上の理由より、日本語音声&英語字幕のノベルゲーは、英語多読に有用である、というのが私の現時点での結論です。尺の都合で今回は書きませんでしたが、もちろん日本語音声であることのデメリットも存在します。リスニングしたいなら日本語音声は何の役にも経ちませんからね。その辺りのことについては、また後日記事にまとめたいと思います。
最後に、現時点で私が圧倒的におすすめな日本語音声&英語字幕の作品を紹介して、記事を締めさせていただきます。↓「Harmonia」。騙されたと思ってプレイしてみてください! 飛ぶぞ?(※リンク先、後半ネタバレ注意!)
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