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30代からの投資でアーリーリタイアを目指す記録。日本に拘りはなし。

洋書多読の記録①【HOLES】多読生の登竜門・アメリカの傑作ジュブナイル小説

 

作品紹介

holes

 HOLESは、洋書多読をしている人なら全員が通る道と言っても過言ではないくらい、界隈で有名な小説ですよね。恥ずかしながら、私もようやく本書を読み終わりましたので、感想を書き留めておきたいと思います。

 読み終わった直後の感情のまま端的に書けば、本書は

 

小学校高学年くらいの男子が好きなことが目いっぱい詰め込まれた良書

 

という感じです。

 もうね、謎解きあり、サスペンスあり、不条理あり、恐怖あり、友情あり、冒険あり、動物パニックあり、カタルシスあり…。あの頃の自分たちがワクワクしながら読んだ、子供向けの青春小説そのものなんですよ!(・・・あ、でもエロだけは皆無ですね、この小説笑 男子にとっては大切なんですがね!)

 舞台こそアメリカのテキサスではありますが、そんなお国の違いなんてどうでも良くなるくらいどうしようもなく引き込まれる、リーダビリティの高い物語。

 謎や伏線も適度にちりばめられており、それらも丁寧に回収されます。また後に映画化されているように、後半から終盤にかけては映像化映えするようなダイナミックな展開の連続で、情景が目に浮かびます。日本語でなくとも力量ある作家の作品だということが明確に理解できる、そんな完成度の高い作品でした。

 

 ストーリーについては今さら説明するまでもないですが、いちおう未読の方のためにネタバレなしであらすじだけごく軽く。

 いじめられっ子のStanleyは、干上がった湖につくられた少年矯正施設に無実の罪で収容され、同年代の少年たちと来る日も来る日も地面に大きな穴を掘らされることになります。いったいその穴は何のために掘らなければならないのか? Stanleyの無実は晴らされるのか?

 こんな風に、物語は全編、Camp Green Lakeと呼ばれる少年矯正施設?の中で展開します。施設の少年たちは互いをニックネームで呼び合い、Stanleyもまた"Caveman(原始人)"という不名誉なニックネームをつけられることに。彼らのカーストや人間模様なんかも薄味ながらリアルに描かれています。

 また、Lakeとは名ばかりで、施設の周りはほとんど砂漠同然。水も食料もないので、少年たちは逃げ出すことなどできず、看守たちに従わざるを得ません。ただ毎日穴を掘るのです、言われるがまま。生きるために。

 物語は、Stanleyたちのいる現在と、彼のひいひいおじいちゃんが生きていた時代の2パートで展開され、徐々に過去が現在に繋がってくるような話運びとなっています。この過去パートが伏線作成装置として機能すると共に、現在パートに欠けている「恋愛要素」を補充する役目も担っている辺りは、実に構成が上手いな、と感心しました。恥ずかしいから表に出さないだけで、男の子だって恋愛描写は好きですからね!

 

必要英語力など

推奨英語力:TOEIC720~、英検2級~

 ゲームプレイ開始時点の私の英語力は、TOEIC905点、英検1級一次合格でした。英検1級Vパートの結果から、語彙力は1万語+α程度だと思われます。その私のレベルだと、平均して見開きに3つ程度の未知語がある感じです。ただ、その大半が文脈から推測できるor重要ではないこと明らかなため、読み進める上で障害になることはあまりありませんでした。少なくとも、私が今までプレイしてきたノベルゲーと比較しても簡単な部類に該当します。スラングも少ないですし。ネット上では「ひいひいおじいちゃんパートが挿入されるせいで読みにくい」という書評もありますが、そんなことはないです。そういう感想が出るとしたら、それはそもそも日本語の読書量が少ないせいで「小説のお約束」が体内に根付いていないだけであって、英語力とは別種の問題かと。

 一方で、文法では仮定法が頻発するため苦手な人にはツライことや、特に物語終盤においてキャラ達が(読者にとっては)未知の情報を提示してくることで、「えっ、もしかしてどこかで読み飛ばした? or 誤読した!?」と不安になる部分もあったりました。後者については直後にStanleyが疑問を解いてくれたので安心しましたが笑

 

 総合的に、本書が洋書多読の登竜門とされていることには納得です。これが読めるなら、日本語字幕なしのノベルゲーでも学園モノなんかなら十分プレイできるでしょうし、200ページ超を読めるスタミナがある証明にもなりますよね。

 個人的には、↓ATRIをプレイしてほしいところ。日本語音声付きですし、英語と日本語の字幕を併記できるので挫折することはないでしょう。何よりシナリオが良すぎるので、こっちはノベルゲー多読の登竜門としてぜひ!

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未知語(抜粋)

 読後時点で、私にとって未知だったり、忘れてしまっていたりした単語や表現を(推測できたものも含めて)、一部抜粋しておきます。読書中は辞書を引かず、読み終わってからまとめて調べました。大方の難易度の目安になれば。

 

shriveled:しなびた

rattlesnake:ガラガラ蛇

handcuff:手錠

hay:干し草

stagecoach:乗合馬車

grunt:短く唸り声をあげる、不満がましく言う

rundown:荒廃した

cabin:小屋

penal code:刑法

Well duh!:当たり前だろ!(下品な表現だそう)

burlap sack:(粗い)布袋

jumpsuit:つなぎのような服

buzzard food:ハゲタカの餌

compound:複合施設

wearily:疲れて

cot:小さいベッド

playfully:ふざけて

file out:ぞろぞろ出ていく

scratchy:ちくちくする

forlorn:心細い

deftly:器用に

spit:唾を吐く

pry:詮索する

No offense.:悪く言うつもりはないんだけど。

Way to go.:Good job.と同じ

red-handed:悪事に手を染めている

Thank God!:良かった!

 

 この他にも色々ありますが、未知語の多くは名詞でした。そういうのは「たぶん植物(動物)の名前だな」とか、「部屋にある小物かな」とか、大抵は文脈から想像がつきますし、とりたてて重要なものでもない可能性が高いため、スルーしても全体像をつかむには問題なかったです。概ね、英検準一級程度の単語が大方頭に入っていれば、詰まることはないと言い切れます。2級程度でも、最初に少し辞書を引けば大丈夫かと。

 

ネタバレ感想

 以下、少しだけネタバレ感想を書くので、見たくない方は気を付けてください。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 本書は、StanleyとZeroとの友情物語としても秀逸で、周りからバカにされながらも毎晩毎晩Zeroに文字を教えていたことが、最後の最後で報われる展開には涙しました。かつ、この2人の友情が悲恋に終わったひいひいおじいちゃん達の関係に対しての救いになっているのも胸熱。ミステリ的なあるあるではありますが、互いをニックネームで呼び合うことで本名を明示させない設定を、上手く利用した部分でした。

 また、元いじめられっこだった太っちょStanleyはこの収容生活の中で体重が激減して体力が付いたことで、きっと学校に戻っても以前のようにやられっぱなしではないんだろうなあ、という希望を感じられる点も良き。

 お父さんの発明の件などはちょっとご都合主義的な感じですが、それこそジュブナイルであることを考えれば、これくらいポジティブな大団円を迎えた方が、きっと読者も未来に希望が持てるってもんです。

 もう、あらゆる点が素晴らしい。200ページの中編として、過不足なく完璧にまとまっています。

 

 

おすすめ度

 おススメ度は、10段階で10です。

 冒頭で書いたとおり、男の子が求める要素がふんだんに盛り込まれた小説で、読者を飽きさせない工夫に富んでいます。全米ベストセラーらしいですが、それも当然という感じ。元はいじめられっ子だった主人公の成長も見られますし、ラストにはカタルシスもあって読後感も良いですし。思わず親指を立てたくなること請け合いです。まさに、洋書多読の登竜門。

 

 

まとめ

 これ以上書くこともないですね。

 本格的に洋書多読やノベルゲー多読を始める前に、読んでおくべき一冊です。これを読み切れるかどうかで、自分の実力や嗜好が多読に適しているか判別できる、リトマス試験紙として大いに役立つでしょう。

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英語ゲーム多読の記録⑩【GINKA】日本のノベルゲー

作品紹介

 作品の概要については、こちら↓の記事をご覧ください。

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 あまりにも自分の中での期待値が高すぎたため、我慢できなくなって発売前日にわざわざ5,000文字もの記事を書いてしまった作品です(我ながらアホです)。

 それもそのはず、神作だった『Atri -My dear moment-』と同じ主要メンバーによる新作なんですから! 本作も前作同様に主人公とヒロインとが日常を歩みながら、しかしどこかおとぎ話のような世界の不思議に迫っていくような内容となっています。いわゆるロボットもののSFだった前作とは異なり、本作は伝奇モノで雰囲気は大きく異なりますが、物語を貫く大きな柱は今回もやはり主人公とヒロインとの心模様でした。

 設定やシナリオが複雑ですので、明確に「これがテーマだ!」と断言はできませんが、運命に翻弄されながらもお互いを大切にし合う、主人公とヒロインとの一途な想いを一貫して描いた作品です。

 

必要英語力など

推奨英語力:TOEIC550~、英検準2級~

 ゲームプレイ開始時点の私の英語力は、TOEIC905点でした(英検は受験歴なしですが、複数の語彙診断サイトで9,500語前後の評価のため、準1級~1級の間程度でしょう)。

 推奨英語力は"Atri -my dear moments-"と同程度。難易度の上がりがちな伝奇モノではありますが主要キャラは高校生ですので、言い回しは平易です。会話文が多いですし音声は日本語ですから話を見失うことはないでしょう。さらに、本作は前作と同様、2種類の字幕を並列できるという素晴らしい機能があるため、最悪英語力がほぼ0であったしても、多読っぽく英語を眺めながら読み進めることが可能です。

 ただ、普通に英検1級レベルの単語もスラングもガンガン登場しますので、もし日本語字幕をつけないのであれば、それなりの英語力がないと結構キツイと思われます。

 

推定プレイ時間:30~40時間

 私の場合、プレイ時間は37時間程度でした。おそらく全てのエンディングを網羅してはいませんので、そこまで回収するなら40時間は超えるはずです。わりと選択肢の多いゲームですしね。

 まあ日本語版をプレイした人は、一日や二日でクリアしているようですので、英語多読用として使用しないのであればプレイ時間は半分以下まで激減するでしょう。前作よりも少しだけ長い程度かと。

 

よくない点

 どんな作品でも、良い点と悪い点がありますからね。両論併記はさせていただきます。良かった点は後から書くとして、まずは悪かった点を。

 

日本語音声かつ主人公音声なし

 これはもう、ただただ海外展開している日本のノベルゲーの宿命です。英語学習用としてとらえた場合、やはり音声が日本語なのは一長一短があるということですね。実際には文法力が足りずに読めていないのに、耳から日本語訳が入ってきてしまうことによって、あたかも実力で会話文が読めちゃってるような気がしてしまうんですよね。残念、それは錯覚です。日本語音声に惑わされず、知らなかった表現はAnkiにぶち込むなりノートに書きとるなりして、地道に暗記しましょうね。

 

ギンカと銀花との書き分け(英語版)

 ネタバレになるため深くは書きませんが、この物語には「ギンカ」と「銀花」とが登場します。この書き分けは極めて重要な意味を持つのですが、なんと英語版ではいずれも"Ginka"表記になってしまっています。これは、いくらなんでもあり得ないです。

 申し訳ないですが、原文分析の段階での翻訳「ミス」と言っても過言じゃないです。ちゃんと日本版のシナリオ読んでるのかな?と疑いたくなりますし、ちゃんと読んだ上で表記をGinkaに統一する判断をしたのであれば、その理由が理解不能です(クレジットを見ると翻訳者複数名に加えて、専用の編集者もいるので、まあ後者なんでしょうけども…)。

 ↑物語序盤のラジオ体操(ラジオ護身術)シーン。下から2段落目に「ギンカ」が、一番下の段落に「銀花」が登場します。ここでは、「ギンカ」は目の前にいる少女のことを、「銀花」は5年前当時の少女のことを指します。

 

 確かにですね、シナリオを読み進めていくと、重要な場面では両者がきっちり区別されて訳されているのがわかるのですが、なぜかしばしばそうではない時が混在しているのが問題なんですよ。

 例えば前者を「GINKA」と全て大文字表記で固定するなどすれば、わざわざ場面場面で訳し分けたり訳し分けなかったりする必要なんてなかったのに、なぜこんな面倒な方法を選んでしまったのか…。実際、ネイティブアメリカンとフィリピン人である私の友人2人に聞くと、やはり何度か混乱して読み違える場面があったそうです。「でしょうね」というのが率直な感想です。

 Atriくらいわかりやすいシナリオなら良いですよ? でも、ただでさえシナリオが難解な本作ですから、こんなところで余計な負荷をかけてしまうのは、制作側としても本意ではなかったのでは・・・?

 本作は最初から海外展開することが前提でテキストもそのために丁寧に書かれていたことがわかるだけに、翻訳の面においてこの点だけは本当に残念です。

 

 ↑こことか、凄く丁寧ですよね。日本人なら誰もがルールを知っているスイカ割りについても、海外の人が理解できるように、テキストには詳細なルール説明が盛り込まれています。この点はラジオ体操などについても同様。

 ここまでユーザーに寄り添って作ってるのに、なぜ肝心な部分に限ってあんな訳し方をしてしまったんですかね…。

 

主人公力に欠ける主人公

 これも、ネタバレになるため具体的なことについては伏せます。

 ただ1つ言えるのは、前作の主人公であり自らの力でもって未来を切り開いていったNatsukiと比較した時に、本作の主人公であるRyuseiはなすすべなく運命に流されてしまう傾向にあったと言えます。というか、切り開く意志はあったのですが自分一人では力不足で、他のキャラに助けられてばかりだった印象です。

 そしてそこがプレイヤーの感情移入を妨げてしまうというか…魅力的に描かれるGinka、丁寧に描写される2人の気持ちの通じ合い、徐々に明かされていく謎と力強く展開していくシナリオなど、良い材料がたくさん揃っていたのに、彼の主人公力の欠如が原因となって、気持ちの良いカタルシスに繋がっていかなかったように感じました。物語は良いのですが、どこか自分事として読めなかった感じです。サブキャラに活躍の場を与えたことによる弊害かもしれません。

 

おすすめな点

 とまあ、よくない点はこれくらいにして、次は良かった点について。

Ginkaが可愛い

 本作は、ヒロインであるGinkaの可愛さが前面に押し出されています。物語前半のシナリオは、全てを忘れてしまったGinkaにと共に、夏休みの思い出を作ろう、というもの。

 ↑夜通し作戦会議をし、この夏にしたいことを2人でノートに埋めていく2人。この際、過去を覚えていないGinkaや、生きる意味を見失っていた当時のRyuseiなど、後にシナリオに関わってくるんだろうなあ、という描写もなされますが、それはそれ。

 

 さて、Ginkaがもし5年前に死んでいるのだとすれば、今目の前にいるGinkaは、本来存在してはいけないモノになります。 

 ↑最初は”maniacs”(通り魔)扱いされていた謎の少女。彼女は言います。

"Something evil is possessing you"と。この「悪いモノ」とは、果たしてGinkaのことなのでしょうか? もしそうなら、イザナギとイザナミの神話のように、この物語は悲劇的な結末を迎えてしまうのかもしれません。

 このように、本作はかなり序盤から、楽しい日常シーンにシリアスな雰囲気が鬱々と覆いかぶさったような雰囲気で話が進みます。その中にあって、Ginkaの魅力はひと際輝いていますね!

 

英語&日本語字幕が同時に表示され、翻訳の勉強になる

 前作と同様、本作には変わった機能があり、メインの字幕とサブの字幕との言語をそれぞれ設定できます。そのためメインを英語、サブを日本語に設定すれば、物語を読み進める際にかなり大きな補助になります。

 英語多読にとってこれが良いことかどうかは考える余地がありますが、しかし、副業で翻訳をしている私のような人間にとってはめちゃくちゃ有用なんですよ。日本語特有の表現を英語でどのように訳せばよいか。それとなく似せるのか、思い切って全然違う表現にしちゃうのかなどを判断する材料になります。

 ↑わかりますか? この配慮。

 翻訳する際、わざわざ"Japanese staple"というフレーズを追記しているんですよ。我々日本人にとっては当たり前のカレーですが、海外の人にとってはそうとは限りません。だからこその「日本人の定番」というフレーズの挿入。これがあることで、「なるほど、日本ではcurryという食べ物は、子どもでも当たり前に食べているものなんだな!」と海外の人でもすんなり理解できるわけですね。他にも、夏休みの宿題にあさがおの観察日記が出るシーンなんかでもそういう配慮がなされています。

 ↑「いただきます」は、英訳するのが最も難しいフレーズの1つなのよね。ここではわかりやすく直訳されてますね。

 ↑日本語だと「蜘蛛の子を散らすように」だけど、英語だとroach:ゴキブリなのかw

 ↑「ナンマンダブナンマンダブ」では、godとBuddhasとがそろい踏みしてますね! なんだか『聖☆おにいさん』を思い出しましたw

 ↑ギャル化したGINKA。こんな風に英訳すれば良いの・・・か?? 正しいのかどうかはわかりませんが、たぶん"like"を多用するんだろうなあ、ということはわかります。

 この辺り、他にも色々書きたいことはあります。日本語のテキストには、「ふーん、エッチじゃん」とか「ワシが育てた」とか、日本人ならニヤっとしてしまうネタがいっぱい盛り込まれていて、それを英語でどう訳すのかを読むの面白いんですよね。だけどキリがないのでこの辺で止めておきます。翻訳の勉強したい方は、ぜひご自身でプレイしてみてください。マジで勉強になることだらけなので!

 

口語表現に加え、「夏」「海」「学校」「祭り」関連の語彙が増える

 本作はいわゆるギャルゲーとして話が展開されるため、キャラクターの掛け合いがかなり多いです。

 また世界観的に、夏や海、学校、祭りなどに関する語彙が頻出します。

 

夏や水や海に関する単語

breakwater:防波堤、 tackle shop:釣具店 dehydration:脱水症状

It's scorching.:めちゃくちゃ暑い。 barley tea:麦茶

oscillating mode:(扇風機の)首振りモード bathing suit:水着

seaweed:海藻 inner tube:浮き輪 dinghy:ゴムボート

heatstroke:熱中症 moring glories:あさがお seedlings:苗

観察日記:observation journal

 

学校や夏休みに関する単語など

The door reads "5th Grade".:ドアに「5年生」と書いている。

homeroom teacher:担任、 curfew:門限 sleepover:お泊り会

radio calisthenics:ラジオ体操 watermelon splitting:スイカ割

cooking activities:調理実習 semester:学期 guarian:保護者

rerun:再放送 kiddy show:子ども向け番組 buds:つぼみ

game console:ゲーム機 piggybank:貯金箱

cheap candy:駄菓子

 

祭りに関する単語など

stall:夜店、 candied apple:りんご飴、 fire baskets / bonfire:かがり火

The festival will be a blast.:祭りは盛り上がるだろう。

palanquin:神輿 grant wish:願い事を叶える

 the mortal realm:人間界 priestess:巫女 shaved ice:かき氷

nibble on the ice pop:アイスをかじる altar:祭壇 tarp:天幕

 

おとぎ話に関する単語など

be spirited away:神隠しに遭う

 

その他、信仰に関する単語など

sun worship:太陽信仰 the spiritual world:神域 mortal realms:現世(うつしよ)

interstice between two worlds:2つの世界の狭間

unclean:穢れている お供え物:offerings

chant a short prayer:祝詞をとなえる purification rite:お清め

 

 こんな感じで、単なる学園モノに留まらない語彙が登場するため、英語多読用として得られるものは結構多いです。「翻訳」という意味で面白かった表現としては、Himawariの「ごんたや~」を"Gonta-boy"と訳していたところですね。

 

 

おすすめ度

 おススメ度は、10段階で

 全体的に良作だと思います。テキスト・BGM・CGがマッチして伝奇モノとして重要なファクターである雰囲気作りに成功しています。タイトル負けしないほどGinkaも魅力的ですし、かなり技巧的なシナリオであったにもかかわらず、これ以外あり得ないという着地を決めたのも素晴らしかったです。特に、エンディングが「あの」シーンで終わることは本作のシナリオ上マストでしたから、寸分違わない着地を決めてくれた紺野アスタ氏には「ありがとうございます!」と言いたいです。もちろん、フルプライスの半額程度という価格を考えれば、コスパも良いです。

 一方で、前述したように主人公が弱いことによって、感情移入が妨げられてしまったのが残念な部分。あのエンディングもRyuseiが自ら引き寄せたものだとは言い難く、どうしても私は少し引いた位置から物語を眺めているような印象になってしまったがために、もう一つ作品世界に没頭することができませんでした。

 総合的に、おススメ度は”Crystalline"と同程度。

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 完成度で言えばGinkaの方が何倍も上ですが、価格差とボリューム差を考慮すると、だいたいこれくらいかと。

 

↑GINKA気になる方はこちらから!

 

 

 

ネタバレ感想

 ※ここから先は、思いっきりネタバレしています。未プレイの方はご注意。

 

 

 

 

 

 

想いは運命を変える

 本作のテーマは難しいですが、パッと思いつくのは「想いは運命を変える」あたりでしょうか。RyuseiとGinkaそれぞれがカタシロに書いた願い、そして神様が心臓を差し出す対価としてGinkaの恋心を奪ったことにより、絶対に2人が幸せになれない運命のデッドロック状態となっているのが本作の前提条件です。その絶望をシナリオの第一部と第二部とで分けて描きながら、どうすれば両者が幸せになれる世界線へ至れるかを探っていくという構成です。シナリオ運びは、第一部ではGinkaがRyuseiを救済し、第二部では逆にRyuseiがGinkaを救済するという対照的なものになっており、その過程で2人の互いに対する想いがたっぷりと描かれる、まさに2人のための物語でした。

 ただここで注意点があって、Ryusei→Ginkaの想いは単純なのですが、Ginka→Ryuseiの想いは複雑なんですよね。これは、Ginkaは神様によってRyuseiへの恋心を奪われていることと、そしてその奪われたはずの恋心が具現化した"ギンカ"が存在するためです。それらの理由により、第二部後半における"銀花"の行動がああいうことになるわけですが、しっかりとテキストを読んでいなければこのあたりの銀花に行動が理解できず、「なんかよくわからない作品」という感想に落ち着いたり、何なら"銀花"にヘイトを溜めてしまったりしちゃうわけです。実際、そういう評もネット上には多かったですね。伝奇部分が複雑だったことも、銀花とギンカの立ち位置という構図を見えにくくする一因になっていたのかもしれません。

 ですが、少なくともGinkaの想いは(銀花であれギンカであれ)どこまで行っても一途な物でしたし、それは物語の中で十二分に描かれていましたよ。

 

第一部:GinkaによるRyuseik救済の物語

 本作の第一部は、神隠しに遭って夢の世界に閉じ込められたRyuseiを、Ginkaが救い出す物語です。ここはとにかくGinka(特に銀花の方)が健気。

 神様によってRyuseiへの恋心が奪われてしまったにもかかわらず、5年間どうしても捨てることのできなかったカタシロ。そのせいで「自分にとってRyuseiとは何だったのか」との自問自答をやめられず、厳しい母に頼んでまでRyuseiを助けにきてしまうんですから。

 さらに残酷なことに、当のRyuseiは、自分が決して思い出すことの叶わない願いの具現化である"ギンカ"と楽しそうに日常を過ごしており、Ryusei自身もその夢の世界を現実だと誤認しているという。

「いや、せっかく助けに来たのに、お前なんやねん!」ですよ。

 幸いというかなんと言うか、銀花はもう恋心を持っていませんので、Ryuseiとギンカとがイチャイチャしていてもそこまで心に来ることはなかったのかもしれませんが、それでも青い花を手折って自分が家にいる合図をRyuseiに送ったり、カレーを何度も食べに来たり、身を挺してRyuseiを護る姿からは、Ryuseiに対する気持ちの全てが消えてしまったようには感じられません。

 ↑楽しかった"ギンカ"との日常を捨て去り、現実に帰る選択をしたRyusei。無垢なギンカにとっての絶望もきっちり描かれています。

 

 ↑ずっと咲かない朝顔は、何のメタファーでしょう?

 成長しない"ギンカ"? ずっと生きられないRyusei? 袋小路のこの世界そのもの? 

 朝顔の花言葉は、「愛情」や「あなたに絡みつく」。RyuseiとGinkaとの間に、この世界では愛情は咲かなかったのでしょうか?

 

 ↑このシーンで下を選ぶと・・・。

 ↑この顔ですよ。

 これ、死ぬ思いをしてここまでやってきた彼女としてはかなりショックでしょう。ここで「"ギンカ"と夢の世界で過ごしていくエンディングも用意するべき」という意見もあるかもしれませんが、いくらなんでもそれは鬼畜の所業じゃないでしょうか(もしあったらごめんなさい。自分が全エンドを網羅したかどうかわからないので・・・)。

 ↑まあ、可愛いは正義ですからね! 第一部のヒロインは"ギンカ"と言わざるを得ない。

 ↑夢からさめたRyuseiが沢田釣具店の前で見たのは、花を咲かせた朝顔。けれど"ギンカ"はもう…。

 ↑直後のこれはキツイ。畳みかけてくるやん・・・。

 なぜ夢の中で入れたはずのカタシロがポケットに? という謎を残したまま、

 ↑Ginkaが消えたオープニング画面にきらめく”NEXT”の文字。演出100点です。

 

第二部:RyuseiによるGinka救済の物語

 現実に戻ってきたRyuseiは島の高校に復帰し、友人たちと日常を営んでいくことになります。ただ、同時に神様の心臓を手に入れてしまったことで、日々刺客に狙われることに。

 ↑無力なRyuseiを護るため、ここからは"ギンカ"ではなく"銀花"と1つ屋根の下で暮らすことになります。彼女はRyuseiへの恋心を失っていますので、間違いが起きることはありません。夢の世界とは似て非なる現実世界を、2人は過ごします。

 ↑Ryuseiによる「滑稽なタコのダンス」で思わず噴き出すGinka。このシーン、人によってとらえ方が異なると思うのですが、私の場合は物凄く悲しくなりました。「ああ、Ryuseiとのあの日々の記憶を持っていないのに、こんなにも同じ反応をするのか」と。この時のRyuseiの気持ちは描写されていないのですが、彼はいったいどう感じたのでしょうね。

 

 そして第二部の後半では、物語の真相がどんどん明らかになっていき、第一部とは逆にRyuseiがGinkaの夢の中に入って彼女を救う展開となります。作中で一番自分に刺さった展開はここからでしたね。正直、この章からの追い込みで本作のおススメ度が一気にアップしました。最初は「7」か、場合によっては「6」にするつもりでした。この時点では"銀花"の魅力がまだ弱かったことも一因です。

 ↑Ginkaの作り出した永遠の世界。Ryuseiのどんな願いも叶えるけれども、「好き」という気持ちだけは叶えることができません。もしその言葉をRyuseiが口にしようものなら、Ginkaによって即座に殺害され、新しい世界に飛ばされてしまう。

 これ、何も知らないRyuseiにとっても、好きな相手から意味もわからず殺されてツライですけど、Ginka側にとっても終わりのない拷問ですよね。好感度を一定以上まで上げると崩壊するシミュレーションゲームをプレイしているかのような。

 ↑"ギンカ"ではなく"銀花"の、四宮の娘としてではない本心を唯一さらけ出せるこの世界は、彼女にとっての「願い」だったのでしょう。しかしこの世界ですら、自分の中に芽生えてしまった一番大切な想いだけは受け入れることも表現することもできないという拷問。

 果ては、「友達のまま」セフレになる世界、Ryuseiと距離を置き座敷牢で「飼う」世界など、そこまでしてでもRyuseiを生かしたい、護りたい、世界につなぎとめておきたいというGinkaの悲しい覚悟と決意が伝わってきます。

 ↑いったいどれだけの世界を作ってきたのか、もうこんな選択肢しか残されていないほど追い込まれているGinka。

 ↑そしてRyuseiも、この世界が何度も繰り返されているGinkaの夢だと気づいています。しかしそれでもRyuseiは、何度でもGinkaに告白します。当のGinkaに「私をあなたの人生の意味にしないで」と拒絶されたとしても、彼にとっての生きる意味はGinkaに他ならないのですから、信念を曲げることはできないのです。

 

 余談ですが、主人公が(愛ゆえに)ヒロインに監禁され、無限ループのような状況に陥るという展開は、他の作品でもいくつか登場します。(ネタバレになるのでタイトルは書きません)。ただ共通して言えることは、その展開は劇薬だということです。ともすればプレイヤーがヒロインを好きになるどころか、逆にヘイトを生んでしまうためです。

 この点、本作では"銀花"と”ギンカ”とが、究極的には1人のヒロインである点を上手く生かしている、と私は感じました。いくら銀花にヘイトが集まろうとも、銀花はギンカでもあるのだから結局はそれも含めて彼女を構成する要素になります。他作品のように、「こんな監禁してくるような自己中なヒロインより、こっちの子の方が良い!」という逃げを許さない、絶妙な設定ですよこれは。

 ・・・と、思っていたんですよ、プレイ中の私は💦

 

 しかし、です。ネットでレビューを見てみると、どうも本作では"銀花"と"ギンカ"とを別人と捉えるプレイヤーも多いようなんですよね。これは正直意外でした。私はずっとこの2人を、「同一人物の2つの側面」だと思ってプレイしていたので。。。

 そしてですね、この2人を別人と考える人にとっては、上述した劇薬が効果を発揮してしまいます。そもそもRyuseiへの恋心だけで構成されるギンカと、恋心を失った銀花ではプレイヤーへの訴求力にどうしても差があります。どうしても"銀花"が不利になるんですよね。それに加えて、実際、本作は事前告知でも第一部でもあくまで"ギンカ"がメインヒロインとして扱われていたにもかかわらず、第二部でそのギンカを殺害した上にRyuseiまでも延々と殺害しまくる銀花が集めるヘイト量といえば・・・うーん。

 この辺り、シナリオを担当した紺野アスタ氏はどう考えていたのでしょう。想定どおりだったのか、誤算があったのか。

 ↑これが・・・

 ↑こうなってしまうの、悲しいですよね。

 ただ、そんなことが起きた理由についても、"銀花"の心情を追っていけば明白なのですが、展開が目まぐるしく変わるために煙に巻かれてしまった人もいるかもしれません。「わざわざ殺す必要あったのか?」と。あったんですよ

 この時の"銀花"は、自分の中に決して表出してはならないRyuseiへの気持ちが新しく芽生えるのを自覚し、悶え苦しんでいます。また"ギンカ"の強すぎる想いがRyuseiを縛り付けているのだと思い込んでもいます。にもかかわらず目の前で、外ならぬ自分自身の形をした少女が、Ryuseiを縛り付けている彼女が、本当は自分こそがそうしたかった振る舞いを無邪気にキャッキャウフフしていたらどんな気持ちになるか…。

 GinkaはRyuseiのために自らの気持ちを犠牲にするほど強い想いを抱えているキャラです。その一途な想いがあるからこそ、この第二部後半の彼女の行動は納得できるものであり、何度殺されてもそれに応えるRyuseiの想いもまた、尊いのだと感じます。

 

 ↑前作に続き、またまたヒロインが大号泣するシーンで「よっしゃああ!!!」と叫んでしまいました。

 ↑そう、このリンゴ飴のシーンこそがマストだったんです。このシーンで物語が閉じるのが、最も綺麗。

 

1人のヒロインを角度を変えて描く手法

 すでにかなり長くなっていますが、もう少し書きたいことがあります。

 本作は、主人公であるRyuseiとヒロインであるGinkaの、互いが互いに対して一途であったからこそ起きた悲劇と、これもやはり一途な想いによってその悲劇を乗り越えハッピーエンドへ至る結末が描かれています。そしてその過程で描かれるGinkaの魅力こそが、本作のハイライト。

 また前作と比較してになりますが、紺野アスタ氏は、「1人のヒロインを多面的に描く」手法に長けているな~と感じます。前作ではAtriというヒロインを、とある手法を使って3つの側面から描いていました↓

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 一方、本作では同様にGinkaというヒロインを、「Ryuseiへの想い」から構成される”ギンカ”と、「それ以外全て」から構成される”銀花”という2人の人間を作り出すことで、多層的に描いていました。

 これって、結構な発明だと思うのですが、どうでしょう?

game.watch.impress.co.jp

 ↑このインタビューで氏が述べている、

でも、まんべんなく受けるようなキャラクターにすると結局は弱くなっちゃうのでどこか尖らせないといけないんですよ。

 この「尖らせないといけない」という制約。だけど尖っているだけでは一般受けが狙えないので、やはり「まんべんなく受ける」必要もある。いかに両者を両立させるか?

 ということで、前者を銀花に担当させ、後者をギンカに担当させるというのが本作におけるこの制約への解答だったわけです。シナリオとキャラ設定とが融和していて、とても綺麗な解ですね。

 

 

 

 

 最後に、本作について思うところをいくつか。これらは、途中までおススメ度を「6」か「7」にしようと思っていた一因です。(結局は、"銀花"の健気さに持っていかれて点数上がっちゃいましたがw)

やっぱりRyuseiの主人公力が・・・。

 上の「よくない点」でも書いたのですが、やはり本作はGinkaの想いはビンビンに伝わってくるのに対して、Ryuseiの方はちょっと弱く感じます。

 ↑一番気になったのがこのシーン。

 ”銀花”が”ギンカ”を斬り捨てた後に、なぜ銀花がそのような行動を取ったのかを、Ryuseiは理解できません。しかもそれを自分で考えるどころか、現場を見てすらいないSoujiに教えられる始末。いやRyuseiくん、それはイカンでしょ。。。

 キャラの役割やシナリオの都合として、こうなるのはよくわかるんですよ。Rin-neeやNazunaが呪いに飲み込まれていく中、Soujiはどこまでも真っすぐで自分の意志が強いキャラですから呪いに負けることもないし、本気で島民のことを考えているだけあって視野も広い。そんな彼が、直接目にしたわけでもないのに銀花が凶行に及んだ理由を理解できてしまうことには、別に違和感はない。加えて、話の作り的に、1人1人と(もしかしたら永遠の)別れになるこのシーンがSoujiの見せ場になるのもよくわかる。

 だけど、ここだけは他ならぬRyusei自身に気付いてほしかった。

 そりゃあRyuseiはまだ高校生で、しかも5年もの間眠っていたのですから、精神年齢が低く女心がわからないのは仕方ないかもしれません。ただ、Ryuseiの生きる理由がGinkaであることを考えると、「あまりにも情けない!」ともどかしく感じてしまい、プレイヤーとしての自分とのギャップを自覚せざるを得ませんでした。

 なんというか、Atriの時と比べてサブキャラを強くした分、主人公にしわ寄せが行ってしまっているように思ったんですよね。絶望的な状況の中で運命を切り開く、Natsukiのような力強さが、Ryuseiにも欲しかった。ラストでHanaの願いを叶えたことで世界はハッピーエンドへと作り替わるわけですが、ここも、たまたまHanaの願い(の形をした蝶)が近くにいたから運良く・・・という感じに読み取れてしまい、努力の結果運命を勝ち取った感がしなかったんですよね。第二部ではあまり彼のカッコいい姿が見られなかったのが残念です。

 

 

Nazunaの「役割を与えられた」感

 本作はサブキャラが立っていますよね。私も、Rin-neeやSoujiがお気に入りです。それぞれに活躍の場もあり、この点についてはAtriの時よりも断然パワーアップしていたと思います。

 ただ、Nazunaについてだけは、ちょっと「装置」感が拭えなかったというか・・・。

 ↑悪魔の誘惑。5年前の彼女の一言が全てのきっかけでこの物語は始まりました。

 身も蓋もないことを言うと、「Ryuseiの心臓のことをGinkaに告げる」役割を与えられたキャラがこのNazunaなんですね。その「お役目様」がいなければ、物語が始まらないからです。

 もちろん、様々な肉付けにより物語に溶け込むようにされてはいますが、それでも、どうしても他のキャラと比較してしまうと、その設定の複雑さも相まって、人間味よりも物語を動かすための装置、という印象が強く残ってしまいました。(私がひねくれているだけかもしれません。悪しからず)

 

 

おわりに

 ネガティブなことも多々書きましたが、間違いなく良作です。GinkaとRyuseiの2人の恋物語の結末を、ぜひ良質な英和併記で楽しんで欲しいです。記事では触れませんでしたが、シナリオだけでなくCGやBGM、声も非常に美麗で、伝奇モノとしての雰囲気も十分です。

 幼馴染と過ごす夏休みをノスタルジックに楽しみつつ、英語の学習もできるなんて最高ではありませんか! 

 

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明日発売!超期待!【GINKA】日本のノベルゲー

 

作品紹介

幼なじみの少女・銀花は、夏祭りの夜、
“神隠し”にあって消えてしまった。

あれから5年。
高校生になった青羽流星は、フェリーに揺られ、ふらりとひめ島へ帰ってきた。
確かめたかった。銀花はあれから、どうなってしまったのか?
もしかしたら、何事もなかったように家へ帰っていて、島の高校に通いながら普通に暮らしているんじゃないか……。

そんな淡い期待は裏切られる。
あの夜からずっと、銀花は行方知れずのまま。

失意に沈み、再び島を離れようとする流星だったが、そこで不思議な再会をする。
目の前に現れたのは、あの頃の姿のままの少女――ギンカ。

「おかえりなさい」

自分の名前さえ忘れてしまったギンカ。
覚えているのは“リュウセイ”の名前と、彼を好きだという恋心だけ。

今までどこにいたのか?
なぜ、幼い姿のままなのか?

おだやかに時間の流れる小さな島で、
“神隠し”から帰ってきた幼なじみの少女と過ごす、
おとぎ話のような夏休み。

 

 明日発売される本作『GINKA』。3,000円台という低価格かつプレイ時間も10~15時間程度というショートノベルながら、2023年ベストノベルに躍り出る可能性十分だと、発売前から界隈の期待がとにかく高いのは、エックスでのインプレッション数からも明らかです。このノベルゲー低迷期において、この盛り上がりは異様なほど。

 「英語ノベルゲー多読」を提唱する私でも、発売前に記事を書くことなんてあまりないのですが、前作のがあまりにも素晴らしすぎたために、ここ一週間『GINKA』のことで頭がいっぱいで、もはや期待記事を書かずにはいられない精神状態になってしまったのですw というわけで、推敲も何もない雑多な文章ですが、ついに待望の『GINKA』発売を明日に迎えた今の自分の心情を、ここに書き留めておきたいと思います。プレイ後にこの記事を自分で振り返った時に果たしてどう感じるのか、今から楽しみです。

 

期待している点

 はっきり言って、すでに傑作になることが半ば確定しているゲームです。なんなら2023年に発売される泣きゲーの中で一番クオリティが高い可能性すらあります。価格は前作よりはわずかに高めですが、それでもフルプライスと比べれば半値くらいの設定ですし、前作の出来を考慮すれば価格以上の価値があるのは間違いないでしょう。

制作陣の強さ

 まず何といっても、本作はあの紺野アスタさんとゆさのさんの最強タッグによって作成されています。この2人は、2020年に発売された、あの伝説的な泣きゲー、『ATRI -My Dear Moments-』 のシナリオライターとイラストレーターさんです。

www.midorineko.work

 ↑私の、ATRIに関する魂の記事はこちら(後半ネタバレ注意)。

さらに作曲家も前作と同じ松本文紀さんで、美麗で心を打つ音楽が期待できます。もちろん制作はFrontwingなので、システム面もばっちり。発売前の段階でここまで安心できるのは、彼らがこれまで積み上げてきた信頼の証ですね!

 

シナリオ

 本作の内容は現時点でほとんど明かされていないため、これまでに提示されたCGや、スタッフインタビュー、カウントダウン動画などから推測するしかありません。

 この出で立ちからもわかるように、GINKAは神社の巫女的な立場です。島民からは「姫様」とも呼ばれていますね。「ひめじま」という名前の島において、「ひめさま」が特別な存在じゃないわけがありません。5年前、儀式の最中で神隠しにあってしまったというGINKA。そして、なぜか主人公である流星が戻ってきたタイミングで再び当時のままの姿で、現れたGINKA。いくらなんでも偶然なわけがないですよね。

 また、こちらのCGでは、GINKAが主人公を襲い来る何かから守護しているように見えます。悪霊か何かでしょうか? 幼かったGINKAを神隠しに合わせた元凶がこの悪霊で、そいつが今度は主人公を攫いにきたのでしょうか?

 現段階では想像するしかありませんが、今回もきっと、前作であるATRIと同様、GINKAとの楽しい日常を過ごす前半パートと、奔流のように読者の感情を揺さぶる後半パートとのギャップの大きい作品になるのでしょう。
 また、主人公の名前が「流星」、ヒロインの名前が「銀花」であることにも、きっと意味があるのだと思います。

 ↑このように、前作であるATRIの時も、メインキャラクターの名前には意味がありました。呟きには含めませんでしたが、サブキャラの「水菜萌」もまた、「水面のように穏やか」というイメージから名付けられたんじゃないかな?と想像しています。

 既に公開されているオープニングテーマの歌詞も意味深ですよね。世界が2つあることを暗示しているような。

 

GINKAの正体は?

 当然ながら、神隠しにあったGINKAが5年ぶりに現れるというストーリーに、ミステリ的な要素はないように思います。例えば金田一少年の事件簿に登場する『巌窟王』のように、何年間も日光の当たらない場所で暮らしていたがために身体が正常に育たなかったという人物が登場する作品もないわけではありません。しかし、GINKAの場合この線は薄いでしょう。身体のサイズだけではなく身に着けているものまですべて当時のままだからです。
 「おとぎ話のような夏休み」という公式のあらすじ紹介から考えても、本作はミステリよりもファンタジーとか、あるいはSF寄りの物語になると解釈した方が良さそうです。

 たぶん、GINKAが戻ってきたのが「ちょうど主人公がこの島に戻ってきたタイミング」だという設定がキーになるんじゃないかな、と。

 ここからは妄想ですが、GINKAは5年前の夜、悪霊か何かの手によってすでに死んでいるんじゃないでしょうか。しかしGINKAには主人公を好きだったが思いを伝えられなかったという未練があるため幽霊として島で生活していたのでは? 主人公が島を出ていた数年間は姿を見せなかったものの、何らかのきっかけで主人公が島に戻ってきたことを知り、想いを告白するために実体化したのではないでしょうか?

 まあ、いくらなんでもそんなに安易なわけはないでしょうが、

game.watch.impress.co.jp

 ↑こちらの先行プレイレビューによると、どうも現れたGINKAは主人公にしか見ることができないらしいんですよね。

 ↑また、このどう見てもGINKAの成長した姿である少女も気になります。これ、神隠しに遭わなかったif世界のGINKAなんじゃないですかね?

 

テーマは死生観?

 ところで、GINKAの髪には、青い蝶々の形をした飾りがついてます。

 青い蝶々というのは青い鳥と同じく、世界的に幸せの象徴であると考えられています。一方、公開済みのティザーPVやCGなどでは、白色に輝く蝶々が複数匹、GINKAの周りを飛び回っているシーンが描かれています。

 ↑冒頭に貼ったこのCGでも見えますね。

 色に関わらず、蝶々は世界中のあらゆる国で生と死の狭間を飛ぶ生き物だったり、復活のシンボルだったりとして扱われています。
 だとすれば、本作のテーマはおそらく死生観じゃないかと。5年前の姿のGINKAが幽霊なんだとしても、あるいは別の世界線のGINKAなのだとしても、主人公が彼女を救うための物語になるんじゃないでしょうか。そしてGINKAの成長した姿である謎の少女に、GINKAの記憶が同化するようなエンディングがハッピーエンドとして用意されているのかなあ?などと妄想しておきます。

 

不安点

 はっきり言って、本作への不安はほとんどゼロに近いです。

 GINKAはすでに素晴らしい実績を持つスタッフや会社による作品であるため、発売前から傑作になるのが約束されているようなものですから。

 それでもあえて心配事をあげるとするならば、それは「前作があまりにも大傑作だったこと」です。ATRIが、あの低価格にもかかわらず信じられないほど完璧な泣きゲーだったため、ファンによる本作への期待は極めて高いんですよ。さらに、価格面においても本作は前作よりもわずかに高いです。「ちょっと良いゲーム」くらいの結果では、多くのファンが納得しないと思います。

 

 果たして本作は、前作を超えられるでしょうか? 本作ヒロインであるGINKAは、あの最高のヒロインだった、Atriよりもかがやく魅力を備えているでしょうか? 瞳の色は違えど、銀色の長髪というGINKAの特徴は、Atriのそれと酷似しています。

 ↑こっちがGNKAで、

 ↑こっちがAtri。マジで似てますよね。

 さらにゲームの舞台もよく似ています。いずれも真夏の海に面した町が舞台です。

「あえて前作と似せることで、前作のファンにアピールしたい」という狙いであえてこうしたとのことですが、これはなかなかチャレンジングです。

 とはいえ、自らの過去の最高傑作が自らの最大のライバルとして立ちはだかってくる展開は、強者ならではの物語。GINKAがAtri以上に、世界中のファンを虜にしてくれることを、私は切に願っています。

 

「英語ノベルゲー多読」という視点で見た時の期待

 さて、ここからは私の提唱する「英語ノベルゲー多読」の視点から、本作に期待することを書いておきます。

日英併記システムがある(はず)

 前作をプレイしたときに衝撃を受けたのが、この日英併記システム(システムの正式名称は知りません。勝手に名付けました。ちなみに中国語も可)。通常、日本発のノベルゲームは、英訳されているものであったとしても、選択できるのは日本語か英語のいずれ一方のみです。
 しかし、前作は違いました。なんと両方の字幕を同時に表示することができるのです。

 ↑こんな感じ。

 これにより、単なる英文多読としての効果に加えて、「この日本語を英語に翻訳するとしたら、どう書くのが自然なのか」という視点で物語を読むことが可能になります。そしてこれは、翻訳業を目指す人間にとって、極めて効果の高い仕組みなのです。

 両者を見比べてみればわかると思いますが、翻訳は中学高校で習うような、いわゆる「和文英訳」とは異なります。例えば受験英語の和文英訳では、出題された日本語が一文であれば、それに対応する英語も一文で訳出しなければなりません。一方、日英翻訳にはそのようなルールはありません。文章を途中で切った方がより作品内容を適切に伝えられるのであれば、元は一文の日本語を二文の英語に分けて訳出する場合もありますし、その逆もあります。さらに、翻訳にはもっと踏み込んだ訳も登場します。

 例えば前作では、作中に「桃太郎」が登場するシーンがあったのですが、これが英語版では”snow white”に置き換えられていました。我々日本人にとってなじみの深いも音太郎も、海外での知名度は低いためそのまま訳出することはできず、そこの文脈ならばむしろ世界的に知名度の高い「白雪姫」と訳すことで、文脈上も矛盾しない上にすんなりと理解してもらえる、という翻訳者の配慮ですね。(小説ならば、「桃太郎」のまま訳して注釈を付けるという方法もあったと思いますが、文字数の限られるノベルゲー翻訳ではその選択肢は選べなかったのでしょう)
 私自身、副業として翻訳や通訳をすることがよくありますので、Atriを通じて学ぶことがめちゃくちゃ沢山ありました。翻訳は一文一文を一対一で訳出する作業なのではなく、作品全体を貫く一本の柱に矛盾することなく、シナリオや各キャラクター、世界観の魅力を輝かせる作業なのです。

・・・ここまで書いて、GINKAでは日英併記システムが削られてるとか、辞めてくださいね!w

 

土着信仰についての描写

 本作は、日本っぽい土着信仰がシナリオのキーになりそうな雰囲気です。海上の鳥居という「らしい」モチーフも登場するし、他でもない巫女であるGINKAが神隠しに遭い、まるで幽霊のように当時の姿のままで現れるし、「カタシロ流し」という儀式もあるとのこと。

 ↑広島のあの鳥居を思い出しますね。

 それにカウントダウンPVによれば、まるで「此岸」と「彼岸」のような2つの世界があることが示唆されており、生と死をつなぐ物語なのは明らかです。上述のとおり、そのメタファーとしての蝶々もそこら中に飛び回っていますしね。
 こういう、まさに「日本古来!」みたいなテーマを、世界観を破壊せずに、いかに英語圏の人々に伝えることができるのか。新聞やニュースの英語多読だけではなかなか得られない、英単語や表現技法を、本作からはふんだんに学ぶことができそうです。

 

GINKAの魅力は輝くか!?

 本作は、前作と同様、ヒロインの名前そのものがタイトルになっています。インタビューの中で紺野アスタ氏自身も語っていますが、これってリスキーなんですよね。少なくとも制作側のプレッシャーは半端ないはず。だって他のどのキャラでもなく、GINKAの魅力が際立っていなければ、GINKAのGINKAによるGINKAのための物語でなければ、「名前負け」してしまうんですよ。しかも、この場合、ヒロインは尖った魅力を備えながらも、ある程度は万人受けを狙わなければ、結局一部の熱狂的信者だけを取り込む閉鎖的な作品で終わってしまうという。そのバランス感覚の難しさたるや、想像を絶することでしょう。

 実際、この界隈にはヒロインの名前をタイトルに持ってきた作品は無数にありますが、大成功とまで言えるものはそれほど多くないのではないでしょうか。英語化された作品で言えば、Saltheは良かったですけど、あまりにも尖りすぎて決して万人受けする作品ではありませんし。

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 ↑尖ってはいますけど、めっちゃ傑作ですよ!

 

 前置きが長くなりましたが、ここで言いたいのは、キャラの魅力とは、そのキャラの発言や仕草ひとつひとつの積み上げで構成されているということです。紺野氏やゆさの氏はもちろんのこと、タイトルをGINKAにする決断をしたからには、スタッフはGINKAの魅力を輝かせるために全力を結集したはずです。それこそ、細部に至るまで「かわいいは作れる」と信じ、計算し尽くしたはずです。その、全スタッフによって磨かれた彼女の魅力が、和英翻訳する過程でさらに輝きを増すのか、それとも、あえなくくすんでしまうのか、あるいは日本版とは異なる魅力を創出するのか(音声が日本語ですので、この線は薄いか)。
 日本語版と英語版とを比較して、いったいどっちのGINKAの方が可愛いのか。これぞまさに、ノベルゲー多読の醍醐味ですね!

 

まとめ

 なんか発売すらされていないのに意外な長文になってしまったんですが、要するに、「死ぬほど期待しています」ってことです。ほんとに、それだけ!

 物語としても、キャラゲーとしても、英語多読用としても、です。

 明日が楽しみすぎて眠れる気がしません・・・。

↑GINKA気になる方はこちらから!

 

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英語ゲーム多読の記録⑩【Hentai Sakura 🌸🌊】ネイティブな18禁クソゲー

 

作品紹介

 Hentai Sakura 🌸🌊は、日本語未対応の18禁ゲームです。

 Staemの作品ページによると、BanzaiProjectというところが開発元す。どこの国なのかは不明ですね。たまたま見つけてクソゲー臭がプンプンしたのはわかっていたのですが、安かった(520円)のとネタくらいにはなるかと思って購入してみました。

 そして、やはりクソゲーでしたw

 

必要英語力など

推奨英語力:TOEIC550~、英検準2級~

 ゲームプレイ開始時点の私の英語力は、TOEIC905点でした(英検は受験歴なしですが、複数の語彙診断サイトで9,500語超の評価のため、準1級程度でしょう)。

 シナリオなんてあってないようなものですので、英語力はこれくらいでどうにでもなるでしょう。音声も下手な喘ぎ声以外にありませんので、リスニング力も不要です。

 

推定プレイ時間:1~∞時間

 物理演算ゲーが気に入ったなら何時間でもどうぞ。ただ私の場合、プレイ時間は1時間程度でした。ぶっちゃけつまらな過ぎて飽きたってことです。途中から会話シーンだけ読んで、物理演算ゲーは全部飛ばしました。

 

よくない点

 どんな作品でも、良い点と悪い点がありますからね。両論併記はさせていただきます。良かった点は後から書くとして、まずは悪かった点を。

全体的なクオリティの低さ

 まあ、なんというか作りが酷いです。それに尽きます。

 

日本風なのか中国風なのか

 とりあえずこの画像を見てください。

 "Hentai Sakura"とかいうタイトルと、パズルゲーム中の富嶽三十六景風のイラストからすれば日本を意識しているのは間違いないのですが、一方で会話シーンには謎のドラゴンが両脇に配置されているという謎の中国感。キャラ名も「Cho」だし。作者は西洋人で、東洋の国の区別がついていないのかもしれません。

 

物理演算ゲームの操作方法と目的が不明

 いきなりヒロインらしきくノ一?2人の会話からストーリーが始まり(敵が攻めてきたけど、10人にも満たない奴らだしどうとでもなる、とかなんとか)、ほとんど状況が不明なままで、何をどう操作すれば良いのかもわからないパズルゲームが始まります。チュートリアルすらないので、いったいどうなればクリアなのかすらわかりません。

Hentai Sakura 🌸🌊は、古代日本をテーマにしたカジュアルなパズルゲームです。
それは私たちの3つの主要なヒロインの物語と物理学ベースの力学によるゲームプレイを特徴とします。
私たちの侍の女の子と一緒に旅全体を体験するには、さまざまなものを獲得する必要があります
線を引き、ボールをつなぎ合わせることでレベルを上げます。

 ↑Steamの公式には、こんな説明がありますが、よく意味がわかりません。マウスを使って線を引き、ボールを指定の場所に転がせばクリア・・・なんでしょうか? とまあ頭に「?」を浮かべながら何度かプレイすることで、なんとなくルールがわかってきました。

 ↑さっきも貼ったこの画像、左上に浮かんでいる二本の竹?の上と、右下の2か所に白黒の陰陽のマークがあるのがわかりますでしょうか? これらがボールです。マウスを使って線を引くことで、この2つのうちのどちらかを動かして、もう一方にぶつけることができればステージクリアとなります。

 そしてこれがまた難しい。マウスで引いた線は重力に引っ張られるように物理演算で動くのですが、なかなか思ったとおりに行かないんですよね💦 

 いちおう、右上にあるボタンを押せばクリアしたことにはなるという最終手段はあるのですが、あってないようなシナリオとしょぼいエロ絵を見るためだけの作業をしているようで、このパズルゲームを飛ばしてしまうととても空しい気分になります。

 しかしですね・・・。売りであるはずのこのパズルゲーム部分が、とにかくつまらないのですよ。シナリオにも何の関係もないし、異様に難易度が高いし、これでは正直キツイです。

 

18禁シーンのやっつけ感

 ↑18禁シーンは、↑こんな感じの絵がただユラユラと揺れているだけですw 下部にある1~5のボタンをクリックすると徐々に脱いでいき、3くらいから「アンアン」と機械的な喘ぎ声が流れ始め、5でフィニッシュ。

 淡々と、それだけがヒロインごとに繰り返されます。20年前の18禁ゲーよりも酷い出来。

 

多読用としてもキツイ

 パズルゲームとパズルゲームの合間に、状況を説明するだけの短い会話が入るだけなので会話量が少なすぎ、多読用としてはほぼ役に立ちません。たぶん全編通して1万語もないでしょう。シナリオもよくわからないし。またボイスはないので多聴効果はもちろんゼロです。18禁シーンは喘ぎ声以外にはなんの音声も字幕も存在しないので、18禁な単語や表現すら学べません。

 

おすすめな点

 とまあ、よくない点はこれくらいにして、次は良かった点について。

意欲作・・・ではあるのかな

 無理やり褒めるとすれば、物理演算ゲームを取り入れている点が特徴だということでしょうね。Steamのゲームでこういうのは初めて見ました。ハマる人はハマるんじゃないでしょうか。

 ぶっちゃけ、無料のスマホアプリにもこの程度なら存在しますけどね!

 

低価格

 本作は520円というお値打ち価格!・・・なんですが、これでもGarage:VAMPの方がまだ安く、クオリティもマシです↓ フォローのしようがないな・・・。

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おすすめ度

 おススメ度は、10段階でです。

 まごうことなきクソゲーです。他に何も言うことはありません。

まとめ

 低価格の18禁クソゲーです。物理演算という物珍しさ以外に何も語れることがありません。話のネタとしてもキツイです。

 

 

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英語ゲーム多読の記録⑨【ATRI -My Dear Moments- 】日本のノベルゲー

 

作品紹介

原因不明の海面上昇によって、地表の多くが海に沈んだ近未来。

幼い頃の事故によって片足を失った少年・斑鳩(いかるが)夏生(なつき)は、
都市での暮らしに見切りを付け、海辺の田舎町へと移り住んだ。

身よりのない彼に遺されたのは、
海洋地質学者だった祖母の船と潜水艇、そして借金。

夏生は“失った未来”を取り戻すため、謎の借金取り・キャサリンと共に、
祖母の遺産が眠るという海底の倉庫を目指して潜る。

そこで見つけたのは、
棺のような装置の中で眠る不思議な少女――アトリ。

彼女は、人間と見紛うほどに精巧で感情豊かなロボットだった。
海底からサルベージされたアトリは言う。

「マスターが残した最後の命令を果たしたいんです。
 それまで、わたしが夏生さんの足になります!」

海に沈みゆく穏やかな町で、
少年とロボットの少女の、忘れられない夏が始まる――。

 

 『ATRI』は、私がこれまで多くプレイしてきたKey作品ではありません。しかし、滅びゆく世界という点で、荒廃したPlanetarianやHarmoniaと世界観が似ていたり、ロボット(本作内ではHumanoidと呼ばれるアンドロイド)が登場する点も同じです。

 主人公であるNatsukiには借金があるため、海から引き揚げたAtriをすぐさま売却しようとします。しかし、Atriは言います。「45日間だけ売却するのを待ってほしい。それ以降は、どうなろうと構わない」と。

 実際、売るあてもないということでいったん売却の話は延期されますが、それでも45日後にAtriが売却されてしまうことに変わりはありません。

 といわけで、本ゲームは別れの日がわかった状態でスタートするタイプのボーイ・ミーツ・ガールもの。トンネルの崩落事故で片足を失った主人公Natsukiは、祖母の遺産であるこのHumanoidを売り飛ばすだけで、これまた祖母から相続してしまった莫大な借金を返して最新式の義足まで購入でき、さらにお釣りまで来るのです。よって、彼にはATRIを売る他に選択肢はありません。なのに別れまでの45日間で、彼はAtriにどうしようもなく惹かれてしまい、しかしそれでも確実に来る別れに・・・?

 ↑物語序盤で、廃校問題について意見を求められたAtriはこう述べます。

 

"The important thing is how you spend the time before the end."

 

 そして、この一文こそが、本作を貫く主題となっているのです。

 まさに王道&王道&王道ですが、期待通りに切なく、綺麗で、儚く、悲しく、しかし力強い物語。ロボットをヒロインとした単なる青春モノで終わるのかと思いきや、祖母の残した遺産を謎を解き明かすミステリ要素や町や星の命運が絡んできて、後半は意外なほどスケールの大きな物語に発展していきます。いわゆる「セカイ系」の派生になるとは思うのですが(この辺り、変に論を展開すると詳しい人たちに袋叩きにされるので、あえて深入りしません💦 私はそう感じた、ということくらいで置いておいてください)、極めて完成度とキャラ萌え度が高く、ミドルプライスとは思えないほど超おすすめ。この間まで、Harmoniaが死守していた2023年の私的ベストを、完全に塗り替えました!

 

必要英語力など

推奨英語力:TOEIC550~、英検準2級~

 ゲームプレイ開始時点の私の英語力は、TOEIC905点でした(英検は受験歴なしですが、複数の語彙診断サイトで9,500語前後の評価のため、準1級~1級の間程度でしょう)。

 推奨英語力は"Harmonia "と同程度。純粋な学園モノではないものの、主人公の年齢はあくまでも高校生ですから、出てくる単語もそれほど難易度が高いわけではなく、言い回しも平易です。また、他のノベルゲーと比較しても会話文がかなり多く、音声は日本語ですから話を見失うことはないでしょう。さらに、本作は2種類の字幕を並列できるという素晴らしい機能があるため、実際のところ英語力がほぼ0であったしても何の問題もなく読み進めることが可能です。よってほとんど何の指標にもなりませんが、便宜的にこれまでで一番低いTOEIC550点もあれば十分だということにしておきます。

 ただ、普通に英検1級レベルの単語もスラングもガンガン登場しますので、もし日本語字幕をつけないのであれば、それなりの英語力がないと結構キツイと思われます。

 

印象に残った難単語・難表現たち

prosthetic leg:義足(『究極の英単語プレミアム』に登場するほどの激難語ですが、本作では頻出)

toaster:ポンコツ(古いPCに使う言葉らしく、本作ではAtriの蔑称として頻出)

Roger!:ラジャー!(英語だったのか!)

fidget:もじもじ、そわそわする(主に「夜」に、登場しますね! ふふ。)

 

推定プレイ時間:20~30時間

 私の場合、プレイ時間は全エンドを見て30時間程度でした。

 本作は、字幕が英語と日本語併記できるという特性から、英語のみの作品と比べてAnkiにぶち込む頻度が増えたことがプレイ時間が増えた主な原因です。「おおっ! 日本語のこのセリフは英語だとこう訳すのか! おっ、この日本特有の表現はこんな風に言い換えちゃうのか!」なんてことが多々あったんですよ。

 あとそれとですね、Natsuki&Atriのニヤニヤタイムが頻出することと、中盤からガンガン出てくる泣きのシーンで放心したりしてなかなか読み進められなくなったことが、プレイ時間の増加に拍車をかけています。ここまでポジティブからネガティブまで何度も何度も感情を揺さぶられるゲームはなかなかないですよ。

 まあ日本語版をプレイした人は、だいたい10時間くらいでクリアしているようですので、英語多読用として使用しないのであればプレイ時間は激減するかと。

 

よくない点

 どんな作品でも、良い点と悪い点がありますからね。両論併記はさせていただきます。良かった点は後から書くとして、まずは悪かった点を。

 ・・・といっても、本作に限っては悪い点なんてないに等しいんですけどね、マジで。

日本語音声かつ主人公音声なし

 これはPlanetarianなど、日本の他のノベルゲーと同じです。英語学習用としてとらえた場合、やはり音声が日本語なのは一長一短があります。実際には文法力が足りずに読めていないのに、耳から日本語訳が入ってきてしまうことによって、あたかも実力で会話文が読めちゃってるような気がしてしまうんですよね。残念、それは錯覚です。日本語音声に惑わされず、知らなかった表現はAnkiにぶち込むなりノートに書きとるなりして、地道に暗記しましょうね。

 

声優にハマれるかどうか

 そしてこれもまた、Harmoniaと同じ問題です。ヒロインであるAtriの声にかなり特徴があり、人を選ぶんですよね💦 正直、私は苦手なタイプでして、これが邪魔して作品世界に入り込むまでに時間がかかってしまいました。

 まったく誇張なく書きますが、この狙いすぎなロリボイスと、プレイヤーに媚びたようなあざと過ぎる喋り方がキツくて、背筋に鳥肌が立ったほどです…。

 

 ただですね、このATRIに関してだけはもう断言しますが、最初苦手な人ほど後で泣きますからね。その点、私は得したなあ~、って感じです。こんなに心を突き動かしてもらえるなんて。

 最後には「この声以外認めない!」に掌返してますよ、まず間違いなく。他のゲームで言えば、シュタインズ・ゲートの後半、あんなにウザかったはずの「鳳凰院凶真」が登場しなくなると、なぜか無性に彼に会いたくなって、そこで初めて自分は彼が好きだったことに気付くみたいな、そんな感じ?

 短所でもなんでもなくなってますね、もう。

 

おすすめな点

 とまあ、よくない点はこれくらいにして、次は良かった点について。

強すぎるヒロインAtri

 例えば、Planetarianのヒロインであるゆめみは、「ロボットであるからこそ」の魅力を備えていました。感情表現はできないし、一度記憶したことは忘れないし、場面によってはセリフもロボットらしく棒読みになっています。もちろん(廉価版なので)涙だって流せません。

 それとは対照的に、本作のAtriは極めて感情表現が豊ですし、痛みも感じますし、物忘れもするし、(洗浄機能ではありますが)涙も流せます。あと、(消化せずそのまま排出するけど)物も食べられます。本人曰く「高性能アンドロイド」だそうで、一見するとまったくもって人間にしか見えません。これだけ見れば、果たしてヒロインをわざわざロボットにした意味があるのか?とさえ思ってしまいます。

 

 一方で、本作の主人公はPredicamentな状況に立たされています。

 それまでAcademyと呼ばれるエリート校に通っていたものの、どこにいるかわからない父親からの仕送りでは学費を払えなくなってゼミを追い出され、高価な義足を売却してなんとか学費を作るも、片足でのキャンパスライフは差別を助長する結果となります。止まっていたはずの幻肢痛まで再発して夜は眠れず、頼るべき母親は自らの足を失った際の事故で既に死んでいるという。

 ↑逃げるようにして人里離れた、祖母の住む町へやってきました。その後、その祖母まで死んでしまい、残されたのは祖母から相続した借金と、海の底に眠る祖母の研究結果のみ。

 Atriと出会った日、「足を取り戻したら、何がしたかったんですか?」と彼女に問われたNatuskiは、すぐさま答えを返すことができませんでした。足さえ戻れば、自分は失った未来を取り戻すことができるのか、と自問します。

 もちろんそんなはずはなく、その夜も幻肢痛に苛まれ、思わず天井に腕を伸ばすNatsuki。誰か俺を助けてくれ、と。

 ↑決まって不安に苛まれる夜。救いを求めて伸ばした自分の腕を取ってくれる人なんてずっといなかったのに、この夜だけは違いました。j必死にあがくNatsukiの腕をAtriが取り、そして優しく抱いてくれるのです。惚れてまうやろー!なシーンですね。ただ元気で可愛らしいだけではないAtriの魅力が最初に発揮された場面で、ここから彼女の世界に引きずりこまれてしまったプレイヤーが多数いるはず。

 この後、物語を進めるにつれて、彼女の魅力は天井知らずでプレイヤーのハートを掴んで離さなくなるでしょう。どこまでも明るく、活発に他者と交流し、町中から受け入れらるAtri。Natsukiと居られる時間は少ないにもかかわらず学校に行き勉強することを望み、残された時間を有意義に使おうとするAtri。Natsukiの「足」として、常に彼と行動を共にし、Natsukiが幻肢痛に苛まれる夜にはそれ以上の役割を担うAtriに。その裏で○○○○○○○○、しかしその○○○○○○○○Atriに。

 

 本作は、完成度の高さもさることながら、Atriの魅力が9割だと言ってしまえるほどに、彼女のための物語です。


 

 ↑初回限定版は、ゲーム本編に加えてサントラも付属。なお、本編のみなら2,000円前後で購入するのがお得です。

 ↑本体のみならこちらから。見て下さいこの異様なほどの高評価!2,000円のクオリティでこんなもの出された日には・・・。

 

英語&日本語字幕が同時に表示され、翻訳の勉強になる

 前述したように、本作には変わった機能があり、メインの字幕とサブの字幕との言語をそれぞれ設定できます。そのためメインを英語、サブを日本語に設定すれば、物語を読み進める際にかなり大きな補助になります。

 英語多読にとってこれが良いことかどうかは考える余地がありますが、しかし、副業で翻訳をしている私のような人間にとってはめちゃくちゃ有用なんですよ。日本語特有の表現を英語でどのように訳せばよいか。それとなく似せるのか、思い切って全然違う表現にしちゃうのかなどを判断する材料になります。

 私は、序盤は英語字幕のみでプレイしていたのですが、サブ字幕のあるゲームはそれほど多くないため、珍しさも手伝って途中からは両方の字幕をONにしてプレイすることにしました。

 ↑なんでこの日本語がこんな英訳に・・・。絶対思いつかないですよこんなん。

 

 このように、基本的に日本語よりも英語の方が文章が長くなる傾向にあります。日本語は表意文字なので、短い文字数の中に多くの情報を詰め込めるんでしょうかね。知らんけど。

 しかしだとすると、外国人にとっての日本語って本当に難しいんでしょうね💦

 ↑英語字幕だと、日本語よりも丁寧に説明しています。

 他にも、多くの場面で直訳ではなく大胆な意訳がなされていて、単なる英文和訳と翻訳とが別物であることがよくわかります。

 ↑これも、日本語だと「曲面が使える」ですが、英語だと"not limited to flat surfaces"と、「平面に限定されない」という書き方になっています。意訳というほどではないですが、こういう微妙な違いは本当に頻発します。英文の流れ的に、そっちの方が良いのでしょうか? この辺りの感覚は今の私にはわかりません💦

 ↑これは明快ですね。日本語版だと桃太郎ですが、海外の人に伝わるように、英語版だと"snow white"になっています。(日本の話なんだから個人的には別に桃太郎のままで良いと思うんだけど、ここは考え方の違いでしょうか)

 

口語表現に加え、「水」や「海」「自然科学」関連の語彙が増える

 本作はいわゆるギャルゲーとして話が展開されるため、キャラクターの掛け合いがかなり多いです。

口語表現

 ↑Saltheで大量に出てきた"ain't"が本作でも頻発。この場面だと"doesn't"ではなく"isn't"の代わりとして使われていますね。

 ↑このas cool as a cucumberや、、、

 ↑born with a shilver spoonも、、、

 ↑そしてこのbook-smartも、全部distinctionで登場した表現。なのでもちろん日本語字幕を読むまでもなく、意味は取れました。だけど知らない表現もわんさか出てきます。


 

 

 また世界観的に、水や海、土地など、自然科学全般に関する語彙が頻発します。

 

水や海、船に関する単語

inundated:水びたしになる、 forecastle:甲板At high tide:満ち潮時、 sea rise:海面上昇、 sea bed:海底、 whirlpool/vortex:渦巻、 water wheel:水車

aqueduct:水路、 ballast tank:バラストタンク

hydroelectric:水力発電の sunken:沈んだ~、 rubber ring:浮き輪

seagull:カモメ、 swimsuit-clad:水着姿の~、 buyoancy:浮力

poach:密漁、 reservoir:貯水池、 buoy:ブイ、 surface:浮上する

capsize:~を転覆させる、 be shipwrecked:遭難する

 

土地に関する単語

low-lying area:低地、 inland:内陸部

 

物理学に関する単語

current flow:電流、 electricity generator:発電機

the law of conservation of energy:エネルギー保存則

 

その他、科学に関する単語

uncanny valley:不気味の谷、 resin:樹脂、 nuclear fission:核分裂

biommimetics:バイオミメティックス、 substation:変電所

infrared light:赤外線

 

恋愛に関する単語

unrequited love :片思い textbook jealousy:やきもち(検索しても出ないけど、ホントにあるのかな?)

 

 こんな感じで、単なる学園モノを超える語彙が登場するため、英語多読用として得られるものは、かなり多いですよ。

 

物語の主題が明確

 限られた時間をどう生きるか、が本作のテーマ。

 主人公は身も心も傷だらけになり、Academyから逃げるようにこの町にやってくるわけですが、Academyで身に着けた知識は閉塞感に支配されつつあった学校に明かりをともします。

 ↑もちろん、それまでの間、学校を学校として維持してきたMinamoの尽力あってのことですが、無駄なものなんてないのです。

 確かに、作中の期間としてはとても短い話ではあります。だけどNatsukiであり他キャラたちの長い人生の中でのわずかなこの瞬間は、約束された別れがすぐそこまで迫っているAtriとの短い時間の中で、毎日をどの人間よりも丁寧に生きる彼女の存在によって大きく突き動かされます。それこそ、Atriの周りにいる全員の、今後数十年にもわたる人生を変えてしまうほどの強烈なインパクトが、このたった一夏に込められているのです。

 

おすすめ度

 おススメ度は、10段階で10です。多くの方が、プレイ中に何度も涙し、プレイ後には虚無感に襲われるでしょう。「もっとこの世界に浸っていたい、物語が終わってほしくない」と感じるかもしれません。私はそうでした。


 

 ↑もう勢いでサントラまで買いましたよ、私は! だって音楽聞くだけでどのシーンも脳内再生余裕ですからね。特に、作中でAtriが歌う"Dear Moments"の破壊力は恐ろしく、通勤の行き帰りでヘビロテしていても、その度に胸が締め付けられてしまいます。

 それと、後述しますが、本曲の歌詞については一部疑問に感じる部分も残っています。

 

 

ネタバレ感想

 ※ここから先は、思いっきりネタバレしています。未プレイの方はご注意。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

絶望と救済の物語

 今、全てのエンディングを観終わった直後に勢いでこの文面を書き始めていますが、ATRIという作品は「絶望と救済の物語」であると、私は捉えました。

 ↑この時は「破壊と再生」と考えていましたが、クリアした今は、「破壊」よりも「絶望」、「再生」よりも「救済」の方がしっくりくると感じています。

 本作品では様々な人々が絶望し、救済されていきます。原因不明の海面上昇により文明は衰退しつつある中、世界を救おうと懸命に努力しているのがNatsukiの父であり、祖母のNonkoであり、かつてAcademyで必死になっていたNatsuki自身でした。たった一つの光に救いを見出す町の人々も、わずかな希望をロケットに託す人類も、みな破壊されつつある世界の復活を(あるいは、世界を捨ててでも人類の存続を)望んでいます。たとえそれがどれほど儚い希望だとしても。他でもない、「世界」そのものが今、絶望の淵に瀕している…これはそんな終末世界の物語です。

 

Natsukiによる町と人々の救済

 物語序盤、Natsukiは半分水に水没し電気の通っていない学校の中に、手作りの発電機を作り上げます。これはNatsukiがこれまで積み上げてきた知識と周りの級友との協力により成し遂げた成果でしたが、Natsukiにとってはあくまで自分のできることをしたまでで、その動機自体は軽いものでした。しかしながら、これまで行政にすら見捨てられていた町に文字通り光が灯ったことの意味はとてつもなく大きく、人々の生活はにわかに活気づきます。それは、当初は「怪しい余所者」だと思われていたNatsukiの呼称が、この一件以来「学者先生」に変貌したことからも、明らかです。

 また発電機の完成により一番救済されたのは、Ririkaでしょう。彼女は校内の図書を手あたり次第に読み漁るほど賢く非常に優秀な少女であり、将来のAcademy生候補とさえ目されます。しかし一方で、両親はおらず家もないため、毎晩たった一人で学校に寝泊まりしているという壮絶な暮らしを余儀なくされていたのですから。Natsukiは、幼い彼女の人生にも多大な影響を与えたのでした。

 さらに、Natsukiが救済したのは、Ririkaだけではありません。(形式上は)借金取りに身をやつしていたCatherineは、Natsukiの手ほどきによって教職に復帰しますし、こんな未来のない状況で勉強なんてする意味がないと腐っていたRyuujiもまた、発電機を作ろうと奮闘するNatsukiに感化されて、本来の友人想いで頼れる自分を取り戻しました。唯一、Minamoだけはこの閉塞的な学校の中で孤軍奮闘していましたが、それでも学校という形骸の現状維持がやっとで、Natsukiなしには環境を劇的に変えることなどできなかったであろうと推測されます。

 このように、本作では主人公であるNatsukiがキーとなり、町や人々を救っていきます。本人にその自覚はないのかもしれませんが、図らずとも、スケールは小さくとも、彼は幼いころに決意した、「世界を救う」ことを、物語の序盤から確かにやってのけたのです。

 とはいうものの、本作で特筆すべきはやはり、主人公であるNatsuki自身、そしてヒロインであるAtriにかかる絶望と救済でしょう。これらはとてつもなく重く、プレイヤーの感情を揺さぶってきます。

 

小学生のNatsukiを襲った絶望とAtriによる救済

 母を失い片足を失い、頼りの父は行方知れず…。小学生でありながら世界に絶望し、崖から飛び降り自殺をしようとしていたNatsuki。この時彼を救ったのが、他でもないAtriなのでした。

 ただ、話はそう単純ではありません。この時、Atriもまたロボットでありながら世界に絶望し、飛び降り自殺を試みていたのですから。

 ↑前マスターに捨てられたと思い込み、自ら機能を停止しようとしていたAtri。

 

 Atriはロボットですから、自死することはできません。そのためNatsukiに背中を押すよう頼みますが、NatsukiもNatsukiで自殺するためにここに来たのですから、見知らぬ少女などに構ってはいられません。とはいえ他者に傍に居られては、そんな決意も鈍るというもの。自然、言葉を交わす二人。

 そしてAtriの言葉に幼いNatsukiは救済され、同時に彼女に恋をします。一方のAtriも、ここで初めてNatsukiから自然な笑顔を学習するのでした。

 大事なのは、この時点ではまだNatsukiが初恋の彼女をAtriだと認識していないことですよね。当時14歳くらいのお姉さんだった女性が、今は見た目年下になっているなんて気づくわけがない。そしてこのことが、現在のNatsukiの救済にもつながるというのは、本当に上手い構成だと感じました。

 

Academy生のNatsukiを襲った絶望とAtriによる再度の救済

 ↑誰よりも世界を救いたいと、あの日から弛まぬ努力を続けたことで、世界を救う術などないことに気付いてしまった皮肉。絶望しやる気を失ったNatsukiは特待生の立場と学費免除の資格をはく奪され、そして義足を売り払わざるを得なくなってします。今まで周りにはごまかしていましたが、これが真実でした。

 味方のいないAcademyに彼の居場所はありません。phantom painが再発し、さらに成績はガタガタに。周りを見下していた報いだとNatsukiはAtriを前に自らを嘲りますが、彼女はそんな彼をも、聖母のように受け入れて見せます。

 そしてついに判明した事実は、当時崖の上でNatsukiを救済してくれたのが、目の前にいるAtriだったということ。

 いやあ、この辺りはやられました。どうせキャサリンなんだろ?年齢的に、とか思ってたらまさかの・・・。そりゃロボットは年取らないもんなあ。

 ↑なんという破壊力。

 この仕掛けの上手いところは、人間であるNatsukiが、いくら魅力的だったとしても、ロボットであることをあらかじめ知っている上に見た目も幼いAtriを恋愛的な感情で好きになるという流れにするのは難しいよなあ~、という懸念を見事に覆してくれた点です。当時のNatsukiは、Atriをロボットだなんて知りませんもんね。「初恋の人」というジョーカーは強すぎる。

 ↑そして、さらっと告るNatsukiくん。これまだ物語のまだ3分の1くらいですよ。男らしすぎやしませんか!(まあ、Atriには恋愛の概念がないので通じていない、というお約束ですが)

 ここからしばらく紆余曲折がありますが、2人は晴れて恋人同士となります。思わずプレイヤーがにやっとしてしまうような甘酸っぱい・・・というか甘い甘い展開が続きます。それこそ、”My Dear Moments”のサブタイトルそのままのキラキラした青春が。そしてその過程で、周りのキャラクターも、プレイヤーも、誰もが2人を応援するでしょう。

 しかし、私もわかってはいましたが、こういうゲームでこんな早い段階で幸せが訪れてしまったら、ここから先はもう辛いことしか待ち構えていないに違いないじゃないですか。高ければ高い山の方が、転げ落ちた時痛いもんな!

 

現在のNatsukiを襲った絶望と、Natsuki自身による救済

 そして、物語の中盤で、Natsukiは3度目の絶望を経験することになります。この3度目の絶望はプレイヤーまでもを仄暗い海の底に叩き落すインパクトを備えていました。

 というのも、今まで自分を二度も救済してくれたまるで聖母のようなAtriこそが、絶望の外ならぬ担い手だったからです。

 ↑Oh...

 ↑直後のこれはキツイ!

 Atriは「ログをつける」と称して、毎晩ノートにその日あったことを記します。しかし、そこに記されていたのは、あまりにも無機質な、ロボット然とした文字の羅列でした。

 いやあ、ログが泣きのツールとして使われるのは間違いないとは思って読み進めてはいましたが、それはAtriがいなくなってからキラキラした当時をNatsukiが思い出して涙する的な、いわば「ポジティブな泣き」を呼ぶ使い方だと予想してたんですよ。それがまさか「ネガティブな泣き」の引き金に使われるとは・・・。

 ↑何を言っても無感情に"Affirmative."と答えるAtri。ノベルゲーで英語多読やっていると、この"Affirmative."はよく登場しますよね? どういう場合に出てくるかといえば、たとえばAtriと同じロボットであるPlanetarianのYumemiが主人公の命令に対して事務的に回答するシーンや、CrystallineのクールキャラであるAmyが、これまた無感情に相槌するシーンなんですよ。いずれも、常に感情を爆発させるAtriとは全然違うキャラ。それだけに、「あのAtriがこんな・・・」という絶望は、酷く深く突き刺さりました。

 ここから、Atriを描写する際に、"uncanny:不気味な"とか、"impassive:無感情の"などの形容詞が出現するようになります。こういう高難度の単語が胸を抉るような場面で何度も登場し、嫌でも記憶に残ることになるので、英語多読的にはとても嬉しいわけですが、この嬉しさは私のライフポイントとトレードオフなんですよ・・・。

 しかし、、、Natsukiくんは本当に強い心の持ち主です。

 ↑深い絶望に苛まれながらも、彼は感情を失ったAtriをも受け入れ始めます。

 ↑この尊みよ・・・。

 楽しかった日常が崩壊し絶望に叩き落されたはずのNatsukiは、健気にも自らの力で感情を失ったAtriを受け入れます。過去に2度救済されたことで、次は自分がAtriを救う番だとばかりに。

 

感情を失ったAtriの絶望と、Natsukiによる救済

 ↑Atriに意思があり、意識的にロボット三原則を破れるのであれば、Atriは自ら自死を選べるはずだというYasudaに、「Atriには未練があるから、死ねないんだ」と切り返して見せるNatsuki。「我慢しなくていい! ロボットのふりをしなくていい! 発露させろ!お前の想いを!!」 良いセリフ。

 ↑ヒロインが悲痛な叫び声を上げるシーンで「よっしゃぁあ!!!」ってガッツポーズすることになるとは、流石に想像もしてなかったぜ・・・。この場面でAtriが人間の命令を破ったのは、Atri自身のため。これはつまり、Humanoidが心を持っていることの証拠です。

 さらに、人間もまた最初からすべての感情が備わっているわけじゃない。他者との関係性の中から学んでいくんだと、Yasudaを諭すNatsuki。ここまで物語を追ってきたプレイヤーからすれば、彼のこの言葉には重い重い説得力があります。Yasudaもまた絶望し復讐にとらわれた悲しい人物ですが、ある意味ここでNatsukiに救われたと言えるでしょう。

 

Atriを苛み続けている絶望と、Natsukiによる再度の救済

 こうして、Atriは感情を自覚するようになります。以前のAtriに似ていますが、覚えたての感情に振り回され、かつてよりもっといじらしい。しかし、寿命はあとわずかしかないのに、心を持ってしまったことによってまだ彼女は救われないという皮肉。

 ↑人間の感情を理解したがために、自分がNatsukiの母に嫌われていたのだと考えてしまうAtri。かつてのマスターが自分を憎んでいた。その事実に気付いてしまったことで、Atriは過去全てを否定したくなってしまいます。

 ↑思い返せば、そこに至るまでの壮絶な経験に加え、前マスターの死がトドメとなり、自分には価値がないと当時のAtriは判断したのでした。自覚の有無の差はあれど、あの頃も現在も彼女が知っている感情は「悲しみ」だけだったのです。

 しかし、忘れてはならないのが、Atriがまだ感情初心者だということ。

 ↑Shiinaが本当は自分を憎んでなどおらず、仲直りしたいと思っていたこと。そして自分はとっくに「喜び」を知っていたこと。海底の思い出の地にNatsukiはAtriに1つ1つ、丁寧に想いを伝えていきます。

 

Natsukiの成長物語

 このように、本作はNatsukiの成長物語として見ても秀逸な出来です。Atriにより2度救われ、Atriにより絶望させられたNatsuki。さすがにいったんは心が折れそうになります。ここで本作のテーマ:限られた時間をどう生きるか、が効いてきます。

 物語の序盤、自分が近いうちに機能停止することを理解しているにもかかわらず、Atriは学校へ通い学習をしたいと言います。その成果は一度目のEden上陸時に現れました。この時Atriは、船から投げ出され海におぼれたNatsukiを、自らの力だけで救助してみせるのです。以前は泳げなかったAtriが、体育の授業で身に着けた彼女特有の泳法を用いて、です。

 この点は、結局水泳を諦めてしまったNatsukiとの対比が上手いですよね。再三Atriから言われたように、この時点でのNatsukiは、死にゆく世界と現状に満足する自分自身を受け入れ、かつて決意した「世界を救うこと」を放棄してしまっていましたから。

 そんな挫折もありながら、彼はついに自らの足で立ち上がり、初恋相手であり命の恩人であり、ロボットのふりをして自分を苦しめる相手であるAtriを、そして最後には本当に世界をも救ってしまいます。Natsukiくん、すごく成長したね!

 

 

1つだけ最後まで残った謎

 ところで、ほぼ完璧に腹落ちして感動の大激動に飲み込んでくれた本作なのですが、個人的に1つだけモヤっとした部分が残りました。ShiinaがAtriに、そしてNatsukiに伝えた歌であり、破壊力抜群のエンディングテーマである"Dear Moments"の歌詞についてです。

 何度読み返してみても、この歌詞Atri視点にしか思えないんですよ。百歩譲って1番の歌詞のサビ前半まではShiina視点だと言えなくはないですが、その後に続く

古いアルバムの片隅に
残る雫の痕
見つけてくれた貴方へ
伝えて「ありがとう、さようなら」

については、どう考えてもログのことを描写しています。

 また、2番はもっと顕著です。

書きかけの手紙に
夢見てる懐かしい日々
海の底で眠る名もない私の
ただ一つ芽吹いた無垢な心

(中略)

遠く褪せゆく思い出で
響く優しい声

(中略)

「ありがとう、私の好きな人、
もう二度と帰らない愛しい日々」

 疑いようもなく、Natsukiと共に生きそして別れの日を迎えたAtriが、後から当時を述懐して綴ったような描写になっています。

 これはいったいどういうことなんでしょう。この歌はShiinaから2人に伝えられたはずなのだから、こんなAtri視点の歌詞がついているわけがないのに…。ShiinaがAtriやNatsukiに伝えたのは1番だけで、2番はAtriが後から付け加えたということでしょうか。だとすると、AtriのShiinaに対する気持ちが見えるようでなんだか微笑ましいですね。

 

※後日追記※

 と思ってシーンをもう一度見直してみたら、作中でAtriが歌っているのは1番でした! やはり2番はAtriによる後付け説が濃厚ですね。ただ、それでも1番サビ後半の「古いアルバムの片隅に~」だけは説明がつかないので相変わらずモヤっとしていますが💦 どなたかここ解釈できる方いらっしゃったらコメントください!

 

おわりに

 序盤はまるで感情があるかのように元気よく振舞う可愛いAtriにオトされ、中盤は冷徹なロボット然としながらも優しさを隠せないAtriにハマり、終盤は感情を自覚してもじもじと恥ずかしがるAtriを愛でる。まさにAtriのAtriによるAtriのためのゲームです。

 シナリオは、これまた主人公であるNatsukiとヒロインであるAtriとがお互いに絶望し合い、救済し合いながら心を通わせていく、どこまでいっても2人の恋路の物語。話は世界規模にまで広がりますが、最後の最後のトゥルーエンドで再度2人だけの世界に帰結するという構成は、その証左のようです。

 ノベルゲーでここまで引きずりこまれたのは久しぶりなので、プレイ後の熱量のまま書きなぐってしまい、酷い記事になってしまいました。1万五千字とか、我ながらアホですか・・・。

 英語多読的に言っても、感情が動けば動くほどそのシーンで登場する英単語や表現は記憶に残りやすくなりますので、学習目的だとしても、ATRIをプレイするのはプラスな面しかないですよ。

 2024年に放映されるというアニメ版、そして来月発売されるという同サークルのGINKAが楽しみで仕方ありません。

atri-anime.com

ginka.frontwing.jp

 ホント、プレイして良かったです。こんなん2000円前後で出すレベルの作品じゃないですよ、マジで。。。

 

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英語ゲーム多読の記録⑧【Selene ~Apoptosis~】海外発のエロティックホラーゲー

 

作品紹介

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 Selene Apoptosisは、海外発の短編ホラーノベルです。無料でプレイできるのが嬉しいのと、異様なほど多くの言語に対応しているという特徴があります。

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 ↑ロシア語や、アラビア語にまで対応!

 開発元は「Nupu Neko Dev」というところらしいですが、どこの国なのかはわかりませんでした。ネイティブじゃないのであれば、もしかすると英語に不自然な部分があるかもしれません。・・・が、おそらくですがライターはネイティブな気がします。

 ↑例えばですが、"What's with those questions?"というセリフが登場するんですよね。

 でもこれ、日本人である私の感覚だと、withなんて思いつかずに、"What are those questions?"って書くと思うんですよ。そこであえてwithをぶち込んでくるのが、なんともネイティブっぽくないですか?

 他にも、本作には↓Distinctionに登場するようなイディオム・スラングがガンガン登場します。その辺りの点を考慮すれば、なんとかんく作者はネイティブなんじゃないかな~?というのが私の想像です。


 

 ・・・知らんけど。

 

 それはさておき、ストーリーについて書きましょう。

 フリーライターである主人公は不眠症で悩んでおり、眠れずイライラしている嵐の夜に突然家を訪ねてきた猫っぽい女の子と出会うところから物語が始まります。超短編ですが選択肢によって展開は5つほどに分岐するようです。私が最初に選んだ選択では、主人公が毎晩恐ろしい夢を見たり、日常生活でも妄想のような症状が出るようになったり、いかにもスティーブン・キングを想起させるような展開になった後、わけもわからないままバットで殴り殺される(ちゃんと描写されていないため、正確なことは不明ですが・・・)というラストでした。

 何ルートかプレイした感想で言えば、まごうことなき良質の純粋ホラーです。しかも英語・日本語音声選択可能という至れり尽くせりっぷり。

(※ただし、個人的には日本語音声の声が好きです。英語音声は、正直ヒロイン(?)2人ともイラストと声が合ってないのよ)

 

必要英語力など

推奨英語力:TOEIC900~、英検1級~

 ゲームプレイ開始時点の私の英語力は、TOEIC905点でした(英検は受験歴なしですが、複数の語彙診断サイトで8,000語超の評価のため、準1級程度でしょう)。

 推奨英語力は、かなり高めです。前述したように、本作はかなりスティーブン・キングを意識した作品になっているんですよね。そして英語版を読んだことがある人ならわかると思いますが、スティーブン・キングの小説ってメチャクチャ難易度が高いんですよ💦

note.com

 ↑この方のノートとか、すごく参考になりますよ。いかにスティーブン・キングの難易度が高いか。

 

 ↑キングの小説と同様、このように不合理なシーンばかり登場するので、展開が掴みづらいんですよね。

 またもちろん単語レベルも結構高く、英検1級でも登場しないレベルの単語も頻出します。ネイティブが良く使う表現もガンガン出てきます。さらに、特にヒロインであるHopeの英語は平坦な上に早口で聴き取りも大変ですので、音声面でもツライです。

 ↑随所に挟まる意味不明なシーン。こういうのがいったい何なのか、全くわからない。

 筆致はキングっぽく淡々としており、なんとなく「乾いた」印象を受けます。ラノベっぽい文章というよりは、もっと大人向けの文学作品っぽいノリかと。相対的に会話文よりも地の文が、それも主人公の内面に向かう描写が多くなることも含めて、難易度は高いです。

 

推定プレイ時間:10~20時間

 超短編ですので、日本語で1つのシナリオをクリアするだけならルートによっては1時間もかかりません。ただ展開によってプレイ時間に長短があること、難解な英語を読み解きながら進めるなら、1ルートあたり3時間はかかります。私の場合は、展開が良くわからない場面が頻発してしまい辞書を使ってAnkiにぶち込む作業をしまくっていたので、全クリアまでは20時間近くかかりました。

 単語的にもシナリオ的にも難易度が高いため、プレイヤーの英語力や理解力がモロにプレイ時間に影響してくるでしょう。

 

よくない点

 どんな作品でも、良い点と悪い点がありますからね。両論併記はさせていただきます。良かった点は後から書くとして、まずは悪かった点を。

 

誤字脱字やバグが多い

 本作は、とにかく誤字脱字が多いです。

 ↑この耽美なシーンですが、1行目の"band"は"hand"のミススペルでしょう。他の場面でも同じ単語が2つ並んでいたりと、誤字や脱字が随所に出てきます。ネイティブ特有の表現なのか!?・・・と、勘ぐったりもしましたが、海外レビューを見ると普通にミスのようですw

 また、序盤でSeleneを家に入れずに拒絶する選択肢を選んだ場合、本来であればエンディング1に到達するようなのですが、なぜかそうはなりません。厳密にはここはそういう演出なのか、単なるバグなのか不明ですが、エンディングを迎えることなく彼女を受け入れたものとしてシナリオは続いてしまいます。

 それと本作はそのままでもエロティックなんですが、公式に18禁パッチが存在します。しかし、なぜかそれを入れると動かなくなるそうですw 以前はちゃんと動いたらしいのですが、アップデート時に何か失敗があったようです。(R5.8時点での情報ですので、そのうち解消するとは思います)

 ただsteamの18禁CGを見る限り、本作についてはそういうシーン抜きの方が謎めいた耽美さが余韻を残してくれそうな気がしますね。個人的にはあえてパッチ当てなくて良いんじゃないかと。

nupu-neko-dev.itch.io

 ↑いちおうリンクを貼っておきます。18禁パッチはこちら。

 

喋り過ぎなのよ・・・(英語版)

 本作は、数あるホラーノベルゲームの中でも格段に怖いです。それは、きめ細かい仕掛けや雰囲気づくりによって、耽美さと恐ろしさとの同居に成功しているためです。

画像

 ↑本作のタイトルにもなってるSeleneちゃん。エロティックでしょう? その上恐ろしさも併せ持つんですから ただ、その耽美さの象徴であるはずのこの子が、異様にテンション高くベラベラベラベラ、アホみたいに喋りまくるんですよ・・・。英語版は、どう考えても声優ミスってます。

 こういうことをされると、せっかくそのシーンまで徐々に盛り上がっていた恐怖が、一気にしぼんで白けてしまいます。私はちょうど、彼岸島のあのシーンを思い出しましたよ。

 ↑こ・・・怖ぇええ・・・。

   ↓

   ↓

   ↓

   ↓

   ↓

   ↓

 ↑どうしてこうなった・・・。

 

 

おすすめな点

 とまあ、よくない点はこれくらいにして、次は良かった点について。

恐ろしさと耽美さの両立に成功している

 さて、本作は上述の声優問題を抱えてはいるものの、基本的にホラー部分はメチャクチャに怖いです。それも、洋画特有のいきなりビビらせる類のチープな恐怖ではなく、むしろ邦画のように徐々に真綿で首を絞めつけてくるような、今までの日常が段々としかし着実に「この世の物ではない何か」に浸食されていくかのような、そんな丁寧な恐怖。まさにスティーブン・キングの小説を、ノベルゲーというプラットフォームの長所を生かしきって表現しているのです。

 そして同時に、ホラーと相性の良いエロについても盛り込まれているわけですが、これがまた上品なんですよ。エロというよりも「耽美」という単語がぴったりハマるのではないでしょうか。だから、本作に18禁パッチは要らないんですよ。Saltheとかだとシナリオにエロが絡んでくるから当然それアリでプレイした方が良いわけですが、本作の場合、別にセックスしようがしまいがどうでも良いですからね。むしろ18禁シーンの一枚絵は下品なものもあり、耽美さをぶち壊してるとさえ思ってしまいます。

 

 ↑ところで、こいつのいったいどの辺がcatなんですかね? このように、ヒロインであり恐怖の象徴でもあるSeleneは、なぜか終始地の文でも「猫」として語られます。三人称視点なのに、です。確かに、2階の窓から出入りしたり床に零したミルクをなめたり、首輪をつけていたり、彼女の行動は猫そのもの。

 じゃあ、なぜイラストはどう見ても人間なんでしょうね?

 

ネイティブ会話文が満載

 冒頭で書いたとおり、本作は開発元がどこの国かは不明ですが、ネイティブなのはほぼ間違いないでしょう。それほどいわゆるスラングがガンガン登場するのですが、これは特に妻であるHopeとの会話で顕著です。

 ↑I'm open with you.:私は包み隠さずに話しているわ。

 ↑It didn't come off well.:楽しい時間を過ごせなかった。

 ↑That's drive me nuts.:気が狂いそうだよ。

 

 こんな風に、単語レベルでは簡単なのに知らないと意味が取れない日常表現を、ふんだんに覚えることが可能なんですね。しかも音声付きで! 私は、distinctionで予習していたお陰で、いくつかの表現は読んだ瞬間に理解できました。ただそれでも知らない表現が多すぎて、かなり辞書を引きましたが💦

 ところでこのHopeの声優さんは、英語版だと声がめちゃめちゃ低いんですよね。イラストから想像する10倍くらい低い。発音は流暢なのですが平坦で、たまに字幕と違うことをしゃべってることも相まって非常に聴きとりづらいです。リスニング力向上には役立つかもです。

 

おすすめ度

 おススメ度は、10段階でです。

 クオリティは極めて高いです。シナリオも練りに練られてるし、耽美だし、めちゃくちゃ怖いし、何より無料だし。

 多少難点があるので満点にはなりませんが、難点を補って余りある、深みのある作品です。

 

 

まとめ

 英語多読用としては相当にレベルの高い、スティーブン・キングを彷彿とさせる極めて良質なホラーです。乾いた筆致で丁寧に雰囲気を紡いでいくことで、恐ろしさと耽美さの両立に成功しています。

 誤字脱字等の多さ、またSeleneのテンションが高すぎることで一部雰囲気をぶち壊してしまう部分が残念ですが、それらの短所を補って余りある魅力を備えた作品です。

 ※いくらなんでも短編すぎるため、今回ネタバレ感想は書きませんでした。

 

 

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英語ゲーム多読の記録⑦【Salthe】日本の18禁ゲー

 

作品紹介

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 Saltheは、日本の新興アダルトゲームメーカーであるSoireeが2020年に発表した18禁ゲームです。Steamでは大人の事情で「そういう部分」はカットされているのですが、公式HPからパッチをダウンロードすれば、フルVerでプレイが可能です。そして個人的には、英語学習のためにもシナリオのためにも、18禁シーンありでプレイするべき作品だと思います。

 選択肢によって展開が変化し、バッドエンドに行きつくことも。基本的に凌辱や「痛い」シーンが多いのが特徴なので、苦手な人は注意が必要です。

 ↑守りたい! この笑顔!

 

 本作の特徴として、物語開始時点で主人公である王女の死は決定しています。道化役である"Kloun"の指示に従い、なぜ彼女は、自分が死ななければならなかったのかを、追想していく構成なんですね。死が確定している以上、悲劇から逃れることは不可能でです。とはいえ、本作のキーワードは、

 

Life is a tragedy when seen in close-up, but a comedy in a long-shot.(人生は近くで見ると悲劇だが遠くから見れば喜劇である)

 

 という、有名なチャップリンの言葉です。彼女の死は本当に悲劇だったのか、それとも喜劇だったのか、はたまた見る角度によって変わるのか?

 物語序盤で、Klounが「これは喜劇だ」と断言していますので、まあ喜劇なんだろうとは思いながらも、必死にあがいて運命に立ち向かい、なんとしても生き返ってヴィスタ音楽祭の舞台に立とうとする彼女の姿を眺めることに。

 主人公は、王女ですが同時に劇団の看板女優でもあります。演劇要素もきっちりとストーリーに組み込まれて完成度は高く、よくできた短編だと思います。

 

必要英語力など

推奨英語力:TOEIC900~、英検1級~

 ゲームプレイ開始時点の私の英語力は、TOEIC905点でした(英検は受験歴なしですが、複数の語彙診断サイトで8,000語超の評価のため、準1級程度でしょう)。

 推奨英語力は、仮に日本語音声がついていなければ、メチャクチャに高いです。普通に勉強していたらまず聞かないであろう、高貴な表現や古典的・演劇的な言い回し、婉曲的な皮肉の応酬があるかと思えば、打って変わって18禁ならではの低俗な喋り方や卑語なんかがこれでもかと登場するので、現時点で私がプレイした作品の中で、一番難易度が高いまであります。

 とはいえ、日本語音声付きという補助がはやり強力にサポートしてくれるため、シナリオから脱落してしまうようなことはないででしょう。また、シナリオ自体も非常に面白いため、英検準1級くらいの力があれば頑張って食らいついていくことは可能だと思います。私自身がたぶんそれくらいの力でしたからね・・・マジできつかった。

 

推定プレイ時間:10時間程度

 選択肢はありますが、ほとんど一本道のノベルです(誤った選択肢を選ぶと即死)。日本語版であれば、たぶん5時間もかからず終わったと思われますが、英語版は私には難易度が高すぎたため、Ankiへ表現をぶち込んだり辞書を引いたりするために相当な時間を費やしています。

 ↑なお、誤りの選択肢にはKlounのマークがついているため、リョナが苦手な人やとにかく最速でエンディングまでたどり着きたい人は初見で、回避できるように配慮されています。

 

よくない点

 どんな作品でも、良い点と悪い点がありますからね。両論併記はさせていただきます。良かった点は後から書くとして、まずは悪かった点を。

 

日本語音声

 これは和ゲーの宿命ですよね。英語学習用としてとらえた場合、やはり音声が日本語なのは一長一短があります。実際には文法力が足りずに読めていないのに、耳から日本語訳が入ってきてしまうことによって、あたかも実力で会話文が読めちゃってるような気がしてしまうんですよね。残念、それは錯覚です。日本語音声に惑わされず、知らなかった表現はAnkiにぶち込むなりノートに書きとるなりして、地道に暗記しましょうね。

 

万人受けしない

 この作品は、人を選びます。

 そもそも18禁ですし、Hシーンも凌辱ばかりですし、選択肢を間違えると凌辱どころか拷問シーンに突入しますし、ストーリーに救いもない(ここは人によるかもしれないけど)し。

 なので、本作をプレイすることで嫌悪感を覚える人も少なからずいるでしょう。明るく楽しく英語を学びたいのであれば、わざわざこんなダークな作品に手を出す必要はないです。

 

 

おすすめな点

 とまあ、よくない点はこれくらいにして、次は良かった点について。

多彩なシチュエーションの語彙を一気に学べる

 このゲーム、非常にシチュエーションの振れ幅が広いです。主人公兼ヒロインのSaltheは王女ですので基本的に高貴な環境にいるのですが、相手次第で口調が大きく変わります。慇懃無礼な宰相相手には皮肉を言い合いますし、ゲスな男たちに犯されるシーンではお互いに汚い言葉で罵り合います。もちろん18禁語も多彩ですし、凌辱や拷問も多数出てきます。

 また、シナリオに演劇が大きく関わってくる関係上、現代では(おそらく)使用しないような古めかしかったり仰々しかったりする表現も頻発します。

 これらが読解難易度を爆上げしているのは間違いないのですが、逆に言えば、この作品を読み切ることができれば、相当な語彙力が身につくとも言えるでしょう。以下に、出てきた語彙の一部を紹介します。

 ※過激な画像注意

 

皮肉の表現

Pleased to make your acquintance.:以後、お見知りおきを。

You have such excellent taste in hobbies.:良い趣味してるわね。

My, how very harsh.:これはこれは、手厳しい。

Well then, I suppose this third wheel shall return to his stroll.:では、お邪魔虫は散策に戻るとしますかなあ。

That goes without saying.:ええ、あなたに言われなくとも。

 →Saltheと宰相であるGarnier、あるいはKlounとの会話は、こういう皮肉の応酬がデフォです。正直、レベルが高すぎて意味が分からないことが多かったです。日本語音声が救い。

 

芝居がかった表現

With aid Hades and the moonless night, come, let us be off.:地獄と闇夜の手を借りて、いざ行かん。

 →演劇のシーンは、このような古典語や、飾り立てた言葉が数多く登場します。どうですか? 日本語音声がついていなければ、私レベルではまったくもって意味不明でした。

May you touch the abyss which is the moment of your death.:君の死の瞬間、その深淵に触れるために。

Nay, I am thy faithful servant.:いいえ。私は忠実なるあなたさまのしもべ。

 

 

高貴な単語・表現

Royal Guard:近衛隊長

Highness:王女様(王女に限らず、位が高い人全般への呼びかけ)

retainer:臣下、 noble:貴族、 lackey:従者

heir to the throne:王位継承者戴冠

coronation ≒ accession:戴冠、即位

reinforcement:援軍(通常だと「補強」ですが、他国からの要請だとこうなるっぽい)

How shall we proceed?:いかがいたしましょうか?

 

汚いセリフ

Bich, you ignorin'me? You make me sick.:ちっ、無視かよ。感じ悪いなあ。

Heh heh, unfortunately, nobody's comin' for ya, Your Majesty.:へへっ、残念だが助けは来ないぜ王女様。

I didn't touch her mug, and it sure shut her up, didn't it?:顔じゃねえし、大人しくなったから良いだろ?

Shat up! I said behave! :うるせえ、大人しくしてろ!

 →behaveだけで「大人しくしてろ」になるんですね。

You, fucking little--!:(王女が、裏切った目下の人間に向かって)お前ーー!!

You... bastard!:この・・・ゲスがあ!

What a fukin' let-down.:なんだつまんねえ。

Don't make up such garbage.適当なことを言わないで。

ain't:じゃねえ。

 →男たちのセリフの中で、dosen'tの代わりにain'tが頻繁に用いられていました。こうすることで、「ない」ではなく「ねえ」というような、粗野な表現になるようです。

 

 

拷問のシーン

"Ngh!":あぐあっ! 兵士に殴られたSaltheの悲鳴。

"Eek!":ひいっ! 兵士に剣で脅された時の、息を飲むシーンで。

"Gwaaahh!? Nggh! Ahhh?!":体に杭を打ち込まれたシーンで。

"Look here! I can't get enough of this, I just can't!":見ろよ!たまんねえよ!すげえたまんねえ!

↑Don't you fuckin' bite it just yet, you got that? 日本語訳:そうら、まだ逝くんじゃねえぞ?

 →なんでこれでこんな訳になるのか全くわからん・・・。こんなん普通に英語の勉強してたら学ぶ機会なんてまずないですよね。

Hey, now, seriously, don't fuckin' kill her! It'll be a pain in the ass after!:おいおい、マジで殺すなよ! 後々めんどくせえぞ!

What the fuck do ya think you're doin'?!:ぼやぼやしてんじゃねえよ!

Ya need another lesson? :また痛い目に遭わないとわかんねえのか?

 →男たちのセリフでは、youがyaになってます。こうすると粗野なイメージになるのかな? なお、"lesson"で「痛い目」というのは、英語のハノンでも登場した表現。

18禁語

 また、18禁語も充実しています。

semen:ザーメン、 gastric juices:愛液、assault:(婉曲的に)レイプ

rear end:尻、 sock:包茎、 finger:(他動詞で)~を指でいじくる

pleasure myself:オナニーする、 get horny:(性的に)興奮する

concuvine:愛人、側室

fertile period:妊娠しやすい時期、 smegma:チ×カス

foreplay:前戯、 fondle / caress:愛撫する、 horny face:メス顔(欲情した顔)

service him with my mouth = blow job = gob job:(女性が男性に)口でする

creampie:(他動詞で)~に中出しする

Here it comes, here it comes!:(精液が)出る!

Shlurp, ngh! Geh-slurp! Gnnghggh!:喉を犯されてるシーンの擬音

 →一回目はshlurpだけど二回目はslurp。"slurp"は「すする」とか「吸う」とかですが、この単語自体が擬音語になるんですね~。

No...lick, lick,... Nn, rngh...:口でしている時の擬音。

 →ここもやはり"lick"「なめる」という単語自体が擬音扱いになっています。日本語とは感覚が違いますね。

Ueh! U-ungh! Mmmgh,ueeghh!:×××中の苦しそうな声

Stop, stop! You're too...rough! Agh, ungghheeh!:無理やりイカされかけてるシーン。

 

それらの複合表現

 さらに、ゲーム的に18禁シーンはその大半が凌辱シーンであるため、これらを組み合わせた表現まで大量に学べます。

You better suck it alllll down! Got it!?:おい、ちゃんと全部、飲み込めよ!?

 →”alllll"は原文ママ。こうやって強調するんですね!

Hey, don't fuckin' spit it out! I thought I told you to swallow!:おい、吐くんじゃねえよ! 全部飲めって言っただろ!

 →どうも、"fuckin'"という罵り言葉は、命令形の時に動詞の前につけるようです。

Keep suckin' just like that, Majesty!:その調子でしっかりしゃぶれよ王女様!

And keep squeesin' back here! Don't make me god damn off you!:こっちも気抜かずに絞れ!ぶっ殺すぞ!

 →セックス中に”back"を使うと、それだけで女性の×××を指すっぽい。"god damn"で「クソッタレ」、”off you"で「殺す」・・・かな? ちょっとどの単語で切れてるのかがイマイチよくわかりません。あと、全体的にing系を"in'"っと書いたり、aboutを'boutと書いたりすると、荒々しい感じになるのかな。

And don't even think about bitin'! Ya know what happens if ya do, eh?:

絶対に歯立てんなよ! んなことしたらどうなるかわかってんだろうなあ?

Her Hi'ghness's royal cunt is to die for! : お姫様の高貴な×××はサイコーだなあ!

Who'd've thought the day'd come when the princess'd be givin' me head!:まさか王女様に×××を咥えてもらう日が来るなんてなあ!  

Hey, feelin' sick, Your Majesty?:おい、王女様が吐きそうになってねえか?

 ↑守りたい、この・・・あれ。

演出面の強さ

 主人公でありヒロインであるSaltheが、非業の死を遂げた自分の人生を、観客であるプレイヤーに向けて再度演じながら、その死の真相を探るというのがメインシナリオであることから、本作品は、基本的に「演劇」として語られます。

 ↑4人の人物が、それぞれ殺したい人物を胸に秘めています。これは物語開始から20分程度の場面ですが、ここまでの演出が素晴らしく、私はすでに物語に引き込まれています。

 ↑単なるモブキャラに犯され、後は壊れていくだけかと思われたSalthe。しかし、ここで「自分はどれだけ汚されようと自分」という決意を思い出します。そのシーンで初めてプレイヤーに提示される、たった1つの選択肢。これは素晴らしい演出。ここからしばらくはSaltheのターン!・・・だったら良かったのに

 この後の、冒頭で示された鉄の処女拷問からのオープニングへの流れも、非常に秀逸。プレイヤーはどんどんストーリーに引き込まれていきます。

 

完成度の高さ

 本作は、極めて完成度が高いです。

 まずシナリオ。短編であることを差し引いてもつじつまが合っています。相当数の謎はちりばめられているものの、回収されなかった伏線はおそらくありません。無駄なシーンが一切なく、全てのシナリオは「ストーリー上意味があるシーン」「凌辱シーン」「拷問シーン」の3種類のいずれかに当てはまります。

 次に、とにかく絵が美麗です。1枚絵だけでなく立ち絵も素晴らしいし、拷問シーンや凌辱シーンもありますがそのあたりは割とソフトですので、ライトユーザーでも多分耐えられるでしょう。

 さらに、声優さんが本当にすごい。特にSalthe役の声優さんの演技はとんでもないレベルで、もはや独断場と言っても過言じゃありません。ただ相当気合が入っているので、悲鳴を上げるシーンは相当に痛々しいですよ💦 そこだけご注意。

 

 

おすすめ度

 おススメ度は、10段階でです。

 あまりにも完成度が高いため、10をつけようかと思ったほどです。ミステリ的なツイストも綺麗ですし、リーダビリティも高いです。ダークな雰囲気に抵抗がない人であれば、プレイして損することはないでしょう。

 それでも1点マイナスにさせてもらったのは、ネタバレ感想で後述しますが、自分にとってこの物語はどうしても「喜劇」とは思えなかったためです。本作、「この物語は喜劇ですよ~」と随所でプレイヤーに刷り込んで来るのですが、それがどうにも納得できませんでしたので、満点をつけるのは無理でした💦いわばレギュレーション違反です。

 

ネタバレ感想

 ※ここから先は、思いっきりネタバレしています。未プレイの方はご注意。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 このゲーム、1幕目は必ずバッドエンドになります。

 自分を輪姦した男のうちの1人の×××を嚙み切った腹いせに、鉄の処女に掛けられて殺害されるという終わり方。しかし、この時点では何の謎も解決されません。そこから、第2幕、第3幕、と物語が展開されるにしたがって情報が小出しにされ、最終幕となる第4幕で真相が明らかになるという構成です。

 以下は、私が攻略中にリアルタイムで抱いた疑問と予想を書き留めたものです。思いっきりネタバレしていますので注意。

 

第1幕終了時点での疑問

・仮にも王女をモブキャラにレイプさせたり殺させたりするか?
・なぜ住民たちは王女が生きていると知っているのか?

 →生きていることは知っているのに、捕らえられていることまでは知らないって、どういう状況だ?
・住民たちの「街は無事だった」と、男たちの「住民はイズールに忠誠を誓った」とは矛盾するが、なぜか?

 →王女をいたぶるために、男たちが嘘をついているのか?
・王女が捕らえられている部屋は、どこなのか?

 →城の一室だとすると、他国の兵士たちが城の内情に詳しすぎやしないか?
・Klounの正体は?仮面の意味は?

 →正体は、そもそも重要なのか? 仮面は、「本当の自分を偽っている」ことのメタファーだろうなあ。

 少し思いつくだけでも、これくらいの疑問は出てきます。

第2幕終了時点での疑問

 ・なぜMarieからもらったお守りを、Saltheは自室ではなく地下室の引き出しなんかに隠していたのか。

 ・夢の中でのSaltheの豹変は、なんなのか。

 →声優さんの凄まじい演技のおかげで鳥肌が立つほど衝撃的・・・。魅入ってしまった。

 →Saltheが2人いる説を思いつく。ただ、そうだとしても今までプレイヤーが動かしてきた方のSaltheが果たして悪辣な方のSaltheなのかどうかはこの時点ではなんとも不明。

第3幕終了時点での疑問

・蹄鉄と同様、なぜ首輪は地下室にあったのか?
・王女がある日から突然演技がうまくなった理由は?その際の「どんな手を使っても」という独り言の真意は?
→こうなると、「Saltheはもう1人いる」をほぼ確信。演技が上手いサルテと凡庸なサルテ。気高いサルテと悪辣なサルテ。1人は地下室に住んでたんじゃないのかな?だから蹄鉄も首輪も地下に。ということは、犬を大切にしていたのは地下室に住んでいた方のSaltheで、プレイヤーが動かしている方のSaltheは悪辣な方ということになる。しかし本人にその自覚がないのは、死のショックで忘れているから?もう1人のSaltheの性格を「演じて」いるから?演劇祭に出る時だけ演劇の上手いもう1人のSaltheと入れ替わっていた?今回の演劇祭を最後にSalthe引退する理由は、もう出られない=もう1人のSaltheはすでに死んでるから?
MarieはSaltheが2人いることを知らない?そういえば、サルテのことをはっきり「サルテ」と呼んだことのあるキャラはいたっけ?ジャンは呼んでたような…。他のキャラは「王女様」とか「サーちゃん」って呼んでるよね?

 

 なら、こういうことか?

 

 本物のSalthe(以下、SaltheA)は王女で、心優しいけど演技が平凡だった。一方、偽物のSalthe(以下、SaltheB。SaltheAの双子=影武者)は、地下室に軟禁されており犬を虐めるような糞女だけど演技だけは天才的。SaltheAは、演劇の時だけSaltheBに入れ替わりを頼んでいた。しかしある日、SaltheBはSaltheAを地下室に閉じ込め、SaltheAに成り代わってしまう。SaltheBにとってはゴミにすぎない蹄鉄や首輪は、その際に一緒に地下室に捨てた。後はその天才的な演技力で、自らがSaltheAとして振る舞い始める。SaltheAになりきったSaltheBは、心から自分をSaltheAだと思い込むようになり、SaltheBだった頃の記憶を忘れてしまう。

 ↑SaltheBは、SalomeAの傀儡であり、影だったというのが、私の予想。

→ただ、それだと今回で演技をやめる理由がわからないな。まあ実際、真相は全然違ったんですけどね!

第3幕~第4幕幕間

 ・"Salome"という女性に「愛してる」と告げるJean。

 →サロメなら「サーちゃん」とも呼べるすし、これがもう1人のSaltheでほぼ間違いない。ただ、よりにもよって「サロメ」という名前を使うか。こうなると、苛烈なのはSaltheではなくSalomeの方なのか? いや、それさえも名前の印象を利用したミスリードか?

 ・Garnierと密会するSalthe。何か物騒な話をしていますが、何のことだか・・・。

 

第4幕終了時点での疑問と明かされた一部の謎

 ・SaltheはSalomeの存在を忘れている。が、城から脱出した彼女を目の前にした際、「あいつを殺さなければならない」という強い殺意だけは残っており、蹄鉄を使って殺害。

 ・裏切者はGarnier。Saltheを殺害したのもGarnier。

 ・Jeanは生きており、残兵とともにMersinを奪還しに来ている。しかし、生きているSaltheを発見した彼は、Saltheを「裏切者」と叫び、切り捨てる。

 ・Saltheの仮面の下には、醜いアザがあった。

 

 

終幕で明かされた真相

 ・・・と、ある程度推理しながら読み進めていったのですが、真相は予想以上に胸糞悪いものでした。

 以下、今度こそ結末に関わる詳細なネタバレを含みます。注意!

 

幼少期

 ・Saltheは王女ではなく、実の母に捨てられた捨て子。森でさまよっていたところをMarieによって拾われ、Salubrun(サン)という名前を付けられる。

 ・Mersinの王女はSaltheではなく、Salome。従者とはぐれてたまたま見つけた教会で、Marie&Saltheと出会い、仲良くなる。

 ・SalubrunとSalomeは瓜二つであったため、「影」として王宮に引き取られ、同時に"Salthe"の名が与えられた。「お前に過去はない」というGarnierの命令により、SaltheはSalubrunの頃や、それ以前の記憶を忘れる。

 ・その際、MarieからSalubrunへ贈られたのが、蹄鉄。

 ・Saltheは厳しい指導を経て、順調に「王女」としてのふるまいを身に着ける。

 

青年期

 ・Salomeはジコチュー100%な女でSaltheに暴言を吐くこともあるが、周りはそんな王女に目をつぶっている。

 ・Salomeは劇団に所属しており、Saltheも「影」として演技の指導を受ける。Saltheは徐々に演技の魅力にのめり込んでいく。

 ・本当の王女であるSalomeに演技の才能はなかった。どころか、勉学の才も、運動の才も、マナーの才能すらなかった。すべてにおいてSaltheがSalomeを超えていた。

 ・Jeanもまた孤児で、実力で近衛隊長まで上り詰めたが、そのために周りから疎まれていた。SaltheはそんなJeanに惹かれていた。が、JeanはすでにSalomeのもの。

 ・Salomeは"無能"かつ"ガキ"なため、Garnierは彼女を相手にしなかった。一方、Saltheのことは「影で終わる器ではない」と高く評価していた。

 ・そして、演劇祭本番の自分の代役に、Saltheを立たせようとするSalome。自分よりもSaltheの方が上だと内心では認めざるを得ないようだ。

 ・結果、"Heroine's Award"を受賞してしまうSalthe。それにブチ切れるSalome。こんな賞を取ってしまっては、もう自分は二度と舞台に立てないではないかと。そして、以降の舞台は全てSaltheが勤めることになる。

 ・SaltheとSalomeの溝は深まり、Saltheは軟禁部屋へと追いやられてしまう。

 ・Jeanと肉体関係を持った翌日、「自分は処女ではなくなったのに、影が処女なのはおかしい」との理由で、Saltheを火掻き棒で貫くSalome。そこからはタガが外れたように、SalomeはSaltheを犬扱いし始める。床にまき散らした食事を食べさせたり、裸で廊下を歩かせたり、果てはモブにSaltheを犯させまくったり。

 ・さらにSalomeはSaltheへの嫌がらせのため、Marieの教会への援助を打ち切り、孤児たちを残忍な貴族等へ売り払った上、その末路を記載した手紙をMarieの元へ送り付ける手はずまで整えていた。

 ・もはや、Salomeだけでなく王国幹部自体が腐っていたことが判明。

 ・ここで、SaltheはついにSalomeを許さないことを決める。「次の演劇祭の場において、自分がSalomeではなくその影であることを暴露する」ことで、Mersinの権威を地に堕とす計画。自らはMarieや他の孤児と共に、Gwenoleへ亡命するという。

 ・そんなある日、Garnierは国にクーデターを起こす計画をSaltheに告げる。Mersinは腐ってしまったと。手を組みたいというGarnierの提案を受け入れるSalthe。受け入れなかった場合、クーデターによって大事な演劇祭が潰されてしまう恐れがあったためだ。

 ・夜ごと、Garnierの部屋に通い、計画を共有する2人。もちろんセックス付きで。

 ・演劇祭をもって女優を引退すると宣言したSaltheに激怒し、顔に焼けた蹄鉄を押し付けるSalome。顔には火傷の跡が残り、もはや影として機能しなくなったSalthe。

 ・お膳立てはしたのだから確実にSalomeおよび陛下を殺せと、Saltheに告げるGarnier。

 ・予定よりも、Izelの侵攻が数日早まったというGarnier。Saltheの要望どおり、演劇祭より早まることはないと言うが・・・。

 ・結局、そんなことはなくIzelの侵攻は演劇祭よりも早まり、後は第1幕以降で語られたとおり。ただし、実際に凌辱されたのはSaltheではなくSalomeで、Saltheは自室となっていた軟禁部屋で事の成り行きを見守るのみ。

 ・Salomeが囚われたことで、Saltheの計画も瓦解。ただ、「面白いものを見せてやる」とのIzel兵の声についていくと、そこには凌辱されているSalomeの姿が。自然とこぼれる笑み。Salomeを蹴り飛ばすSalthe。壊れたように笑いながら、Salomeを殴打しまくるSalthe。

 ・その後、Garnierに裏切られたことを知ったSaltheは、Salomeと同様に凌辱され続け・・・第4幕で演じたとおりにSalomeを殺害。その後、国を裏切ったとしてJeanに殺害される。

 

この物語は本当に喜劇なのか?

 このゲーム、Saltheはずっと、Mersinの気高い王女として国を守るために振舞います。しかし実はMersinは守る価値もない腐った者どもが治めている国で、しかもSalthe自身王女でもなんでもない、単なる影だったわけですね。そして、決意を胸に生き返った矢先に、男性の中で唯一信頼していたJeanによって裏切者扱いされて殺されるという。

 王女としての役に酔う、哀れな道化の物語。それは確かに滑稽でした。

 ただ、

 私にはそんな簡単にこれを「喜劇」と割り切ることはできませんでしたね・・・。どうしても悲劇性が勝ってしまう。

 ↑守りたかった、この笑顔。なお・・・。

 

 一応、この後申し訳程度に、Saltheが実は内心Marieを見下していたり、Jeanを利用しているだけだったりという独白が出てくるんですが、今さらそれを聞かされても特に心は動かないよねって。

 だって、自分的にはあの2人の方がSaltheよりもずっと嫌だから。Marieは信じられないほど愚かな女だし、Jeanは女性の前で良い恰好をしたいだけの浅薄な男だし。

 

読後感は意外にもスッキリ

 とはいえ、驚くほど読後感はスッキリしてるんですよね。これは単純に、「ザマぁ!」って感じになりますもんね。

 ↑この時点では、恥ずかしながら見事に読み違えています。

 ヘイトを溜めに溜めまくったSalomeがモブやSaltheに凌辱されるシーンは、不快になるどころかむしろ溜飲が下がる人が多いかと。

 

まとめ

 ダークな雰囲気の良質な短編です。

 内容が内容だけに人を選びはしますが、間違いなく完成度の高い一品ですので、気になる方はぜひ手に取ってみてください。

 

 

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日本語音声のメリット3点(ノベルゲー多読)

日本語を勉強する外国人のイラスト | かわいいフリー素材集 いらすとや

英文多読とは

 英語を学習方法の中に、「多読」というものがあります。

 非常に完結に書くと、「幼児が読むレベルの簡単な英語本からとにかくたくさんの英語本を楽しく読みまくり、徐々に難易度を上げていくことによって、自然と大人向けの英語本でも問題なく読めるようにする」という学習法のことです(私の認識では、です)。

www.seg.co.jp

 ↑多読についてより詳しく知りたい場合は、『めざせ100万語!多読で学ぶSSS英語学習法』さん(リンク先)をご覧いただければと思います。

 ここで、多読を進めるにあたり、超重要な三原則を上のサイトから抜粋します。

  1. 辞書は引かない (引かなくてもわかる本を読む)
  2. 分からないところは飛ばして前へ進む (わかっているところをつなげて読む)
  3. つまらなくなったら止める (1 2 の原則で楽しく読めない本は読まない) 

 この三原則、とっても大切なんですね~。

 

 

日本語音声ノベルゲーとは?

 ご存知のとおり、私はSteamで英語のゲーム、中でもノベルゲーをプレイすることが大好きです。

 なお、小説ではなくノベルゲーで英語多読をすることのメリットについては、こちら↓のエントリをお読みください。

www.midorineko.work

 字幕が英語のノベルゲーには日本発のものもあれば、海外発のものもあります。そして日本発のゲームの場合、少なくとも私が知る限りでは全作品が、音声までは英語化されず日本語のままなのです。まあわざわざネイティブの声優の中からキャラの声にバッチリ合う人を、それも高度な演技力を持った人を探し出して契約しようと思えば、時間もお金もかかりすぎますもんね。加えて最近のノベルゲーは、格安のものでもない限り、大半が主要キャラのボイス付きです。

 そういうわけで、多読を目的に日本発のノベルゲーをプレイする場合、高い確率で「日本語音声&英語字幕」という、一般の人には馴染みのないプレイスタイルを強いられることになるんですね。目では英語を読んでいるのに、耳からは日本語が入ってくるという奇妙な状況。ここで気になるのは、このプレイスタイルで果たして多読効果がちゃんと発揮されるかどうかではありませんか?

 ここで、10作ほどそういう日本産ノベルをプレイしてきた私が現時点で感じていることを書いてみたいと思います。結論から言うと、「このプレイスタイルでも多読の効果はある。ただ、英語音声&英語字幕の場合とは得られる効果が異なる」と思っています。音声が日本語であることにより、一長一短がある感じです。

 

日本語音声のメリット

①シナリオを見失うことなんてありえない

 ノベルゲーは、通常の小説と比較して会話文が多い傾向があります。そのため、極論、地の文をすべて読み飛ばしてしまったとしても、会話文だけをつなげて読めば、シナリオのメインの部分は理解できるんです。このことは、上述した多読の三原則を守る上で大きな意味を持ちます。

 だってそもそも、わざわざ英訳されるような日本のノベルゲーは、最初から完成度が高いんですよ。クオリティが保証されているからこそ、わざわざ英語化して海外へ出していると言い換えることもできます。だから、そんなゲームを日本語音声でプレイしている時点で、「面白くない」なんてことはあり得ない。同時にそのノベルが自分の英語力を大きく超えるほど高難易度の単語や表現で溢れていたとしても、関係ありません。だって日本語さえ理解できればシナリオから脱落することはないんですから。

 英語音声&英語字幕では意外にも難易度の高い、「とりあえず一通りクリアする」という、簡単なようでそうでもないことが間違いなく可能となる。ここにアドバンテージがないわけありませんよね。

 

②瞬間英作文としての効果

 日本語音声がのもう1つの利点は、「瞬間英作文」としての効果が期待できるということです。これはわかりにくいかもしれないので具体例を。

 ↑"I sincerely beg your pardon..." これは、Planetarian〜ちいさなほしのゆめ〜 の中で登場するシーン。ここでの日本語音声は、「重ね重ね、申し訳ありません!」です。

 ヒロインであるゆめみは非常に腰の低いキャラで、こんな風に頻繁に主人公に謝罪します。また、彼女は人間ではなくロボットですので、ロボット三原則に基づいて行動し、人間を不快にするような言動はしません。そして、彼女たちの立場は「プラネタリウムの案内員と客」なんですね。

 つまり、自分が店員として英語圏のお客さんに接する時には、ゆめみのような言葉遣いをしておけば、相手が気分を害することはないだろうと考えられるわけです。ただですね、英語字幕で"beg your pardon"と読んだ時にどんな印象を持ちますか? 純ジャパである私は、「いや、そこまでへりくだるの!? いくら何でもやり過ぎじゃない!?」と感じました。それが、調べてみるとこれは別に普通に使う表現なんですね💦 そしてじゃあ普通に使うとして、いったいどれくらいの丁寧さなのかを知ろうと思った時に、この日本語音声が非常に有用になってくるわけです。セリフだけでなくシチュエーションや声の調子、そういった様々な情報が、母語ならではの解像度で頭に入るんです。

 

 このように、英会話をしていると「日本語でこんな感じのことを英語で伝えたいんだけど、果たして直訳しても自分が伝えたいニュアンスのまま伝わるのかな?」などと不安になることがよくあるわけですが、日本語音声&英語字幕のノベルを大量にプレイしておけば、シチュエーションごとのストックを増やすことができるため、実際にそういう場面に出くわした際、自信をもってスピーキングすることができるわけです。

 言い換えれば、通常の英語音声&英語字幕と比較してリスニングへの効果は全く期待できなくなる代わりに、スピーキングへの効果が高い。そしてそれはそのままライティングにも流用できるという利点があるのです。

 

③声優のレベルが格段に高い

 ノベルゲーを進めるにあたり、最も大事なこと。それは人によって違うかもしれません。しかし、私に言わせてもらえば、「没入感」こそが絶対的に一番だと断言できます。自分が主人公といかに一体化し、その世界を堪能できるか。それこそが感動の原動力であり、読む手を止めないための必要条件です。没入の境地に至れば、テキストの言語が日本語だとか英語だとかは何の意味もありません。たとえ難易度の高い英語テキストで未知の単語がガンガン出てこようが、状況がすでにクライマックスで読み手が世界に入り込んでいるのなら、物語の流れなんて手にとるように分かるはずだからです。一言一句までは理解できないとしても、クリティカルな部分だけはまるで鮮やかな絵画のように、あなたの眼前に映し出されるでしょう。

 そしてそんな没入感を構成する要素が、シナリオだったりテキストだったり、BGMだったり、声優の演技だったりするわけです。・・・もう一度言います。没入感を構成する要素の1つは、声優の演技です。ノベルゲーを何十作もプレイしてみれば、この演技の占めるウェイトが果たしてどれほどのものか理解できるでしょう。そして、海外産のノベルゲーを複数作プレイしたことがある人は、そのクオリティに(ある意味)愕然としたことでしょう。

 もちろん、Crystallineみたいな高クオリティのゲームもあるにはありますが、こういうのは稀だと思ったほうが良いです。明確に、日本の声優は海外の声優と比較して極めて演技のクオリティの平均値が高いです。日常会話のシーンでは、そこまで差がない場合もあります。しかし特に顕著な差が出るのが、いわゆる「泣き」のシーン。単に声を張り上げたり震わせたりすれば良いってもんじゃないんですよ…。少なくとも、声優じゃないハリウッド俳優なんかは物凄く心に刺さる演技をするじゃないですか?だけど声優はまだそのレベルじゃない。もう、全然ダメ。

 もしかするとこれは文化や感性の差が影響しているのかもしれませんが、それでも私の琴線に触れる演技をどちらがするかと言えば、それはもう圧倒的に日本の声優です。さすがゲーム・アニメの土壌が長年醸成されてきた国と、誇って良いと思います。

 その高水準な演技に支えられることで、プレイヤーの没入感が一気に深度を増し、言語の壁を突き破ることに繋がるのです。そこに、やれ音声が英語だとか日本語だとかといった些細な違いは、ノイズでしかありません。少なくとも地の文章は英語なのですから、耳から日本語のセリフが入ることが原因で、英語多読の効果がゼロになることなどあるわけがありません。

 

まとめ

 以上、日本語音声&英語字幕のノベルゲーは英語学習にとって果たして有用化どうかについて書きました。

 通常の英語音声&英語字幕が、4技能でいうところの「RとL」を同時に鍛える効果が期待できるのに対し、日本語音声&英語字幕のノベルゲーでは、L向上効果が期待できない代わりに、SやWの向上が期待できると言うことができます(もちろんRもです)。また声優の演技力の差により、日本語音声の方が読者の没入感が増すことが、有利に働くと考えます。「せっかく多読するのに日本語音声でやっても効果がないのでは?」と不安になり食わず嫌いしている方もいるかもしれませんが、ぜひ一度試してから判断しても遅くはないのではないでしょうか。

 以上の理由より、日本語音声&英語字幕のノベルゲーは、英語多読に有用である、というのが私の現時点での結論です。尺の都合で今回は書きませんでしたが、もちろん日本語音声であることのデメリットも存在します。リスニングしたいなら日本語音声は何の役にも経ちませんからね。その辺りのことについては、また後日記事にまとめたいと思います。

 最後に、現時点で私が圧倒的におすすめな日本語音声&英語字幕の作品を紹介して、記事を締めさせていただきます。↓「Harmonia」。騙されたと思ってプレイしてみてください! 飛ぶぞ?(※リンク先、後半ネタバレ注意!

www.midorineko.work

 

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英語ゲーム多読の記録⑥【Checkmate! My Shogi Club President can't be this Cute! Demo※体験版】スペイン発?な将棋×恋愛ゲー

 

作品紹介

 Checkmate! My Shogi Club President can't be this Cute! Demoは、日本語未対応の将棋×恋愛ゲームです。サブタイトルは、『俺の将棋クラブ部長がこんなに可愛いわけない!』でしょうか。

 Staemの作品ページによると、対応言語が英語の他にスペイン語となっていることから、スペイン発の作品だと想像できます。もしかしたら日系なのかもしれませんが、それなら日本語に対応していないのが不可解なんですよね。将棋を海外に紹介するためのゲームという位置づけなので、あえて日本語を入れなかったということなのでしょうか?

 ※本作は、2023年8月11日現在、まだ発売されていません。今回プレイしたのは体験版です

 

 主人公は、一昔前に日本で流行ったいわゆる「ヤレヤレ」系。

 ↑成績が落ちて、学校に行く気力もない。そもそも人間が好きじゃない。学校を辞めようかとまで思ってるんだから、相当重症だなこりゃ。それでいて、生き生きと青春を楽しむクラスメイトに内心で憧れを抱いているという…。典型的な陰キャ思考。

 それが、アルビノっぽい超美人な将棋女子が多面指し(じゃないかも。"against several people at once" なので、相手がチームを組んでるだけの可能性も)しているとこに遭遇。魅入られてしまい、この子の気を引くために、「俺は何度もメジャー大会で優勝してる最強の将棋指しだぜ!」と、大嘘をつきます。ここで判明するのですが、主人公の名前は「フジタ タロウ」でした。そしてヒロインは「クロダ サクラ」。舞台設定は日本です。

 どうやら、将棋のルールさえも知らないタロウくんが、一目惚れ~大嘘をついてしまった相手サクラちゃんと仲良くなるために、将棋のルールを覚え、短期間で認められるほどの棋力を獲得していくゲームのようですね。

 そして妹が言うには、この世界では「棋力こそパワー」らしく、女子は将棋の強い男子と付き合いたいらしいのです。いや、ハチワンダイバーかよ!

 ↑なんだか懐かしの画面ですね。往年のTo heart(無印)みたいな感じで主人公の行先を毎日指定して様々なキャラクターと鍛錬、左下の棋力ゲージを上げていき、60日間以内にサクラに勝つことが目標になるようです。

 

 ↑例えば、自宅をチョイスすると、妹が実戦を積んでくれます。これはハンデありの将棋ですが・・・。見たことないわこんなのw 飛車と角が2枚ずつこっちにありますよ!

 ↑7手で勝ち! そりゃそうよ、どんな戦力差なんだw

 

 体験版は2日目終了時点までしかプレイできませんでした。それ以降は製品版を買いなさい、とのことですね。なんとなく雰囲気はつかめたものの、体験版ではヒロインのサクラがほとんど登場しなかったのが残念。もっとヒロインの可愛さを押した方がこういうゲームは受けが良いと思うんだけどなあ。

 

必要英語力など

推奨英語力:TOEIC550~、英検準2級~

 ゲームプレイ開始時点の私の英語力は、TOEIC905点でした(英検は受験歴なしですが、複数の語彙診断サイトで8,000語超の評価のため、準1級程度でしょう)。

 推奨英語力は、私が過去にプレイした中で最もレベルの低い"Garage:VAMP"と比較して、ほぼ同じかまだカンタンなレベルです。マニアックなエロ用語の代わりにマニアックな将棋用語(チェス用語)が出てくるくらいで、あとは学生生活で登場する単語が大半です。

 将棋用語は、チェスと似ていますね。

相手の駒を取る:capture

相手の駒を使う:drop

縦:row

横:column

成る:promotion

 厳密には、体験版を通して英検1級レベルの単語が2~3つと、それ以上のレベルの単語が数個だけ出てきましたが、その場で推測可能ですし、すべて読み飛ばしても何ら問題ありませんでした。

 さすがに関係代名詞がわからないとかのレベルだとキツイかもしれませんが、総合的に見てTOEICで550点も取れるなら十分でしょう。

 

推定プレイ時間:1時間未満

 体験版ですからね。ほとんどチュートリアルに毛が生えた程度で終わってしまいました。ただ、もしも本編が60ターンあるのだとすれば、クリアまでにはそれなりに長い時間がかかることが予想されます。毎日、詰将棋か本将棋を指すことになるのなら、全部で30時間くらいはかかるかもしれませんね。

 将棋って、それなりの実力者同士がやれば、切れ負けでもない限り一局あたり10分じゃまず終わりませんからね。30分かかっても何らおかしくない。

 あ、ちなみに私の棋力は町道場で三段程度です。将棋俱楽部24でのレートで言えば、1000とちょっとくらい。本気でやってる人には遠く及ばないにせよ、普通に町中でデュエルする分には、結構なハンデをつけてもまず勝つだろうというくらいのレベルです。だから、本当の初心者の方とか、本作がターゲットにしている海外の方とかがプレイする場合は、クリアまではるかに長い時間がかかると予想されます。ご参考まで。

 

よくない点

 どんな作品でも、良い点と悪い点がありますからね。両論併記はさせていただきます。良かった点は後から書くとして、まずは悪かった点を。

 

文字が読みにくい!

 文字がとにかく読みにくいです。フォントが結構小さいんですよね💦 そして私の環境だとフルスクリーンにしない限り、画面の下部が切れてしまってテキストの最後の行が読めません。これは人によってはキツイことでしょう。

 日本発のゲームだとこういうシステム周りでストレスが溜まることは少ないので、たまにこういうことがあると「ああ、俺今海外のゲームやってるなあ~」ってしみじみ感じること請け合いですw やっぱり日本はおもてなしの国なのよ。

 

音声なし

 本作は、音声がついていません。そのためリスニング練習には一切の効果がないと言えます。現時点では製品版の価格は不明ですが、安いと良いですね。

 

面白さが伝わりづらい

 これは体験版に対する苦言です。

 端的に言えば短すぎ。あまりにも短すぎて、将棋のルール説明と登場人物紹介、基本的なターンの進め方くらいしか情報がありません。これでは将棋の面白さはもちろん、ヒロインの魅力もまったく伝わってきません。

 果たしてこの体験版をプレイした人のうち何人が、本編を買ってまでプレイしたいと思うでしょうか? 少なくとも私は思いませんでした。将棋が好きな私ですら…。これ、マーケティング的に失敗してるように思うんですが、どうでしょうか。

 

おすすめな点

 とまあ、よくない点はこれくらいにして、次は良かった点について。

将棋初心者に優しい

 こういうゲームは、ストーリー進行上、ヒロインとの将棋対局に勝たなければそこでゲームオーバーになりがちです。そこでプレイヤーにもそれなりの棋力が求められるわけなのですが、体験版を見る限り、本作はかなり丁寧に初心者から徐々にレベルアップしていく道筋を作ってくれているものだと思われます。

 ↑再序盤では、妹が丁寧に各駒の動き方を解説してくれます。この後も、おそらく日数が経つにつれてほんの少しずつ難易度の高い詰将棋や本将棋をプレイすることになり、60日が経つ頃にはプレイヤーの将棋スキルが格段に上がっているのでしょう。だからこそ、60日というかなり長いプレイ期間を設けているのだとも想像できます。30日間ではそこまでの上達は見込めませんからね。

 

 ↑また、将棋の駒に慣れていない外国人向けに、駒のデザインをチェスっぽいものに切り替えることも可能です。日本人にとっては逆にやりにくくなりますが、初心者外国人向けには嬉しい配慮でしょう! ちゃんとおもてなし、してるじゃないですか!

 

VSコンピュータモード搭載

 将棋ゲーなので、もちろんコンピュータモードが搭載されています。

 ↑タイトル画面で、"PLAY VS COMPUTER"を選べば、様々なレベルのAIと将棋を楽しむことができるようです。

 ↑が、体験版で遊べるのはこのAIのみ。可愛いですね。

 ↑私が先手です。▲7六歩▽4四歩▲4六歩▽4五歩▲同歩▽7四歩と進みました(相手が2手目でパックマン戦法を明示してきたので、右四間飛車で攻めつぶしてやろうとしました)。

 ・・・が、将棋をかじったことがある人であれば、4手目▽4五歩の時点で、「あ、このAIメチャクチャ弱い」ということがわかるでしょう。

 ↑その後も、飛車をわざわざ取られる位置に動かしたり、と金を払わなかったり、意味不明な動きをしてくれたため、23手で勝ち。実際、棋力を測定できないほど弱く、いわゆる「接待将棋」ですね。

 ストーリーを進めて行けば、徐々に強いAIが解放されることになるんでしょうね。2023年現在の将棋AIは、最強棋士である藤井現七冠ですら手も足も出ないほどのレーティングになっていますので、このゲームではいったいどのくらいの調整がなされているのかが気になります。外国人向けっぽいし、そこまで強い相手は登場しないのかな?

 

おすすめ度

 おススメ度は、10段階でです。

 体験版では情報が少なすぎて、おススメともおススメじゃないとも言えないんですよね・・・。ただ、人に勧められる要素があまりにも少ないのでこの評価にさせていただきました。

 断っておくと、将棋部分の力の入れ具合は結構なものです。もしあなたが将棋に興味があったり、いわゆる「観る将」だったりするのなら、試しに本ゲームをやってみても良いかもしれません。将棋用語を身に着けることができれば、外国人と将棋を指すことができるかもしれませんよ!

 

まとめ

 私の興味とは非常にマッチしていますし物珍しさはあるものの、いかんせん情報が少なすぎでしたね。本編が公開されて、もし購入することがあればまた改めてレビューさせていただきます。

 

製品版、無料配布とのこと!※2023/9/24追記

 steamにて有料で販売する予定だった本作ですが、わけあって別サイトで、なんと無料で配付されることになったそうです!

 配付はすでに行われているので、興味ある方はぜひプレイしてみてください! せっかくなので、私も他にプレイするゲームがなくなったタイミングでやってみようかな、と考えています。

 詳しくはこちら↓

www.gamespark.jp

 

 

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英文多読には小説よりノベルゲー!(おすすめノベルゲー5選)

英語の学習モデルを考える(16)多読多聴のポイント | フィロソフィア英語教室

英文多読とは

 英語を学習方法の中に、「多読」というものがあります。

 非常に完結に書くと、「幼児が読むレベルの簡単な英語本からとにかくたくさんの英語本を楽しく読みまくり、徐々に難易度を上げていくことによって、自然と大人向けの英語本でも問題なく読めるようにする」という学習法のことです(私の認識では、です)。

www.seg.co.jp

 ↑多読についてより詳しく知りたい場合は、『めざせ100万語!多読で学ぶSSS英語学習法』さん(リンク先)をご覧いただければと思います。

 ここで、多読を進めるにあたり、超重要な三原則を上のサイトから抜粋します。

  1. 辞書は引かない (引かなくてもわかる本を読む)
  2. 分からないところは飛ばして前へ進む (わかっているところをつなげて読む)
  3. つまらなくなったら止める (1 2 の原則で楽しく読めない本は読まない) 

 この三原則、とっても大切なんですね~。

 

 

ノベルゲーを選ぶ利点

①種類の豊富さ

 英語のノベルゲーは、思っているよりたくさんの種類が出ています。もちろん、小説や伝記・実用書などの一般書籍と比較すれば全然数は少ないですし、素人に毛が生えたような製作者が作成した低クオリティの作品もありますが、それでも2023年の現時点でも、有料・無料合わせれば数千作もの英語対応ノベルゲーがありますし、steam等のプラットフォームでは毎日のように世界中で新しいノベルゲーが開発・発表されていることを考えれば、いずれにしても全てを遊びつくすことなんて不可能です。

 また、ノベルゲーには海外発のものだけでなく、日本産のゲームが英語版に翻訳されたものも多数あります。特に日本発のものについては、過去に日本国内で人気があった作品が優先的に翻訳される傾向にあるため、ハズレが少ないというメリットもあります。不自然な英訳になっていないか心配かもしれませんが、掲示板で世界中のプレイヤーの反応を調べても、「この英語おかしくね?」みたいな投稿は(メジャータイトルなら)ほとんど見かけませんので、その辺りはきっちりネイティブチェックが入っているものだと推測されます。なので、困ったら日本産のゲームをチョイスしておけば、OKでしょう。

 

②最新のスラングやイディオムを学べる

 ノベルゲーは一般書籍とは異なり、現代の作家が書いたものばかりです。そのため、多読をしていく中で、現在はもう誰も使用していないような古臭い表現は登場しません。また会話文が多いという性質上、人間同士の生き生きとした掛け合い、スラングの応酬を楽しむことができます。それも、ノベルゲーの多くは学園や若者の世界が舞台ですので、そこで使われる語彙もまた若いものが多いです。ここで身に着けた語彙をリアルの会話でも使えば、机の上だけで勉強してきた人たちとは一味違う英会話を楽しむことができること請け合いですね!

③演出による補助➡没入感と難易度調整

 ノベルゲーは小説の最大の違い。それは、音楽や音声、イラスト、エフェクトの有無に他なりません。これらの存在により、小説では読者が頭の中でイメージするしかない、シナリオの場面場面を確実に誤読なく、理解することが可能となります。誤読に怯える必要がなくなるため、物語への没入感がもう段違いです!(もちろん、読者の想像力を喚起することが逆に小説のメリットであることは確かなのですが、こと英語の文章でそれをするとなると、個人的には相当負荷が大きいのではないか、と感じます…。多読の大敵は誤読ですからね。読み飛ばしを)。

 なお、音声の有無については作品によって異なり、無料のゲームはほとんど無音声です。一方有料のゲームでは音声がついていたりついていなかったりしますが、下手な声優ならない方がマシですw 逆に上手い声優さんなら、ネイティブの発音を耳で聴きながら物語を読み進められるため、多読に加えて多聴もできるため、コスパは抜群になりますね!

 それと、日本発のゲームの場合、ほとんどの場合音声は日本語です。これには一長一短があって、多聴の効果はゼロになってしまうものの、誤読する可能性が極めて低下することに加え、瞬間英作文っぽい使い方ができるというメリットもあります。耳では日本語音声を聴きながら目では英語字幕を見ることになりますので、日本語でのニュアンスを英語だとこういう風に表現するんだ!と身をもって理解でき、リアルな会話での手札が増えることが期待できます。

 

④自分で選択肢を選ぶ醍醐味

 ノベルゲーと小説のもう一つの違い。それは、選択肢の有無です。小説の場合、作者が魅力的なストーリーを複数思いついたとしても、どうしても結末は1つに限定せざるを得ないのに対し、ノベルゲーは作者が考えられる限りに展開・結末を分岐させることができます。これは、単純にゲーム1本あたりで読める英文の量が増えることだけでなく、物語に没入する一助にもなってくれます。

 例えば、バッドエンドの選択肢を選んで主人公が悲しい運命を迎えてしまった場合、次回プレイ時には、その結末を回避するようにプレイヤーは動きます。そしてついにハッピーエンドを迎えることが出来た時、その感動は倍増するはずです。これは一本道の小説では味わえない感覚です。また、ゲームによっては「素晴らしいバッドエンド」なるものも存在します。これはこれで胸を打つものがありますので、せっかく選択肢付きのノベルゲーをプレイするのであれば、ぜひエンディングコンプリートを目指してほしいと思います。

 

⑤まとまった文章量をサクッと確保できる

 上述のサイトによれば、英語多読は100万語を越えたあたりから効果が目に見えて実感できるそうです。しかし、書籍でこの語数をこなすとなると、相当な忍耐が必要です。例えば『ハリーポッターと賢者の石』は7万~8万語程度の語数となっていますが、これは長編小説です。長編小説を一本読むとなると、それなりに腰を据えて読むことが要求されるでしょう。

 一方、ノベルゲーはというと、10時間程度で終わる短編ゲームで、おおよそ5万~8万語の語数です(※音声の有無・選択肢の有無で大きく変動します)。短編ノベルゲーなんて、「気づけば終わっている」くらいのものなのに、それでハリポタ一冊をこなしたのとさほど変わらない計算になるのです。読書家ならともかく、普段それほど本を読まない人にとって、あんな分厚い本を読むのと、短編ノベルゲーをサクッと終わらせるのとでは、精神的な負荷が大違いです。

 このように、ノベルゲーを次々とプレイしていけば、100万語なんて知らず知らずのうちに突破しているのです。

 

おすすめノベルゲー5選

 ここからは、私のおすすめノベルゲーを独断と偏見で5本紹介します。個人的な好みの傾向として、どうしても泣きゲーや鬱ゲー、また物語の構造自体を破壊しにかかるようなゲームが好きだということで、相当偏ったラインナップになっています。

 ミステリとかホラーにも面白いゲームが沢山あるので、ぜひ探してみてくださいね。そちらも、機会がまたあれば記事にします。では、いきましょう。

第5位:Planetarian ~ちいさなほしのゆめ~

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 こちらは日本のKeyが2004年に発売した作品。荒廃した街のプラネタリウムを舞台に、青年とロボット少女との短い交流を描くノベルゲーです。「キネティックノベル」という枠組みで、全年齢対象・選択肢なし・日本語音声の作品ですね。

 Keyですからもちろん「泣き」が約束されており、丁寧な筆致で物語への没入感も相当なものです。単純に素晴らしい作品をプレイしたいなら、断然おススメの短編ノベル。詳しくは↑記事をどうぞ。(※後半はネタバレ注意!

 

第4位:Crystalline

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 こちらは、カナダ発の作品です。いわゆる剣と魔法の世界に転移してしまった大学生の主人公が、そこで出会ったヒロインや仲間たちと交流しながら冒険しつつ、元の世界に帰る方法を探すという王道ストーリー。

 ネイティブが作成しているため英語の質は完璧ですし、しかもフル音声つき。多読&多聴を同時にこなせる点でも素晴らしい。ストーリーは一本道ですが、ギャグシーンが多く選択肢も豊富なので、思わず全部選びたくなってしまいます。ボリュームは相当多く、これ1本で20万語以上を稼ぐことができるでしょう。妙に日本びいきな感じがするのも、なんか嬉しい。詳しくは↑記事をどうぞ

 

第3位:Doki Doki Literature Club! 

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 恋愛ゲームと見せかけた、狂気のゲーム。あまりにもアレだったので、当時全世界で話題沸騰しましたよね。なお、どう見ても日本の学校が舞台なのに、製作者はアメリカ人です。また、音声はありませんが、Steamで無印をプレイするならなんと無料! 短いゲームですし、懐が痛まないので一度はプレイしてみるべきです。面白さとクオリティは保証します! 詳しくは↑記事をどうぞ(※子供や、精神の弱い人はプレイしない方が良いです。他でもない公式がそう言っていますからw)

 

第2位:HARMONIA

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 第2位は、またまた登場、日本のKeyが2015年に発売したHARMONIAです。設定はPlanetarianと似ており、荒廃した街を舞台にPhiroidと呼ばれる自動人形と人間との交流を描く短編ノベルです。もちろんKeyお得意の「泣き」は健在・・・どころか大幅に演出がパワーアップしており、私はまんまと号泣しました。2023年8月時点で、今年プレイしたベストノベルです。全年齢対象・選択肢なし・日本語音声です。詳しくは↑記事をお読みください(※後半はネタバレ注意!)。

第1位:White album2

 そして栄えある一位は、日本のLEAFが2010年に序章を発売(2011年に続編が発売)した、White album2です。シナリオ担当は『冴えない彼女の育てかた』で一躍一般的にも有名になった、丸戸史明さん。その名前だけで、これもまた「泣き」が約束されたゲームだということが伝わるでしょうか。

 ちなみに、ブログ記事はまだ書いていません。書き始めると間違いなく何万文字とかになってしまうからです。ジャンルとしては、いわゆる「浮気ゲー」。プレイした人がみな口をそろえて言う「胃が痛くなるゲーム」です。「鬱ゲー」の範疇に入れられることすらありますが、大げさでもなんでもないですよ。

 ↑このように、実は本作は公式には日本語版しか作られていないんですよ。しかしながら、熱烈なファンがあまりにも多く、「この素晴らしい作品をどうにか全世界へ!」と燃える人々が集まって何年間も地道に作業をしてくださった結果、ついに有志による字幕パッチが完成したのです。 

 ↑思わず引用リツしちゃったw こんなプロジェクトが進んでいるなんて、当時私は全く知りませんでしたので、本当に驚きました。もし知っていたら、間違いなく自分も有志として翻訳に手を上げていましたよ。

 

 本作のあらすじを公式から引用します。

親友に誘われ軽音楽同好会に入った主人公、北原春希。一月後の学園祭でのバンド発表を目前に、同好会はボーカルの少女が原因で解散してしまう。
気が付けば、同好会には主人公と親友の2人しか残されていなかった。しかも2人とも担当はギター。諦めきれない春希はどうにか打開策を考えつつ、放課後ギターを弾いていると、外から不思議な音色が流れてきた。
春希のギターに合わせたピアノの旋律。
二つの音色に乗せて、屋上から響く歌声。
その音の主は、クラスメイトのピアニストの冬馬かずさ、学園のアイドル人気者、小木曽雪菜だった。
春希は彼女たちをなんとか説得し、雪菜をボーカル、かずさをキーボードとして同好会に迎え入れる。
新バンド結成から本番までの期間はわずか。ギリギリのスケジュールの中、少しずつ音は良くなり、三人の絆はどんどん深まっていった。
誰もが一生懸命だった。誰もが強い気持ちで突き進んだ。誰もが、ひたむきに、まっすぐに、正直に――心の底で結ばれ、かけがえのない瞬間を手に入れた。だからそのとき、誰かが誰かに恋をしてしまった。一足遅れの、してはいけない恋を。そして冬――降り積もる雪は、すべての罪を覆い隠し。
やがて春――雪解けと共に、すべての罰を下す。

 うーん、不穏ですねw 序章は高校時代での恋愛のお話で、「小木曽雪菜」と「冬馬かずさ」の2人のヒロインを主軸にストーリーが進んでいきます。その後、大学時代~社会人時代と物語は進み、途中でサブヒロインも登場しますが、あくまでもシナリオの主軸は、全体を通して上記の2人どっちを選ぶかです。

 単純だと思いますか? しかし、いずれのヒロインも強さと弱さ、家族関係のしがらみと自身の選択が周囲に与える影響の中で思い悩む姿、複雑な内面、思考と必ずしも合致しない行動なんかが異様なほど丁寧に書き込まれており、さながら命を持った1人の人間のように振舞うのです。特に、雪菜の腹黒さと聖母っぷりは、「よくここまで相反する性質を併せ持った複雑な人物像を作り上げたなぁ・・・」と驚嘆に値するものがあります(そういうわけで人気はかずさの方が高いのですが、雪菜派は過激な人が多い印象w)

 とまあ、そんな2人を選ぶ過程で主人公もプレイヤーも葛藤し苦悩し、物語世界から抜け出せなくなって、気づけば胃を病んでいる人が続出したわけですよ。当時。外ならぬ私にとっても生涯プレイしてきたノベルゲーの中で、ダントツの1位です。

 あと、本作は音楽が素晴らしいです。ピアノを主体とした綺麗で落ち着いた曲が多いのですが、特定のシーンで流れるBGMは、条件反射的にプレイヤーの胃をぶっ刺してきます。雪菜が振られるシーンで必ず流れるいわゆる「処刑用BGM」とか、とんでもない破壊力ですw

 プレイする時の注意点としては、原作は18禁という点ですね。一般向けにPS3版とかも出ていますが、有志の英語字幕パッチを付けられるのはPCにインストールするバージョンだけですので、PS版は未対応です。それにシナリオの流れを考えても、18禁シーンが重要な意味を持つ作品なので、そこを飛ばしちゃうと感情の入り方に差が出てしまうと思います。

 本作は、とんでもない長編です。クリアに1年以上かかる実況系youtuberもいますからね…。文字数は不明ですが、選択肢を網羅するならこれ1本で100万語超えていても何ら不思議じゃないですよ。それほどの大作です。だからですね、私が思わず引用RTしてしまった。

今頃知ったけど、そんなん英語多読もうこれ一本で十分すぎるやん。

ってのも、あながち間違いじゃないんじゃないかな~と。

https://www.amazon.co.jp/dp/B0788BRGN3

↑本編はここから購入(※18禁です)。

todokanaitl.github.io

↑英語化パッチはここからDL。

インストール方法:
1.日本語版のゲームを入手し、パッチを当てる前にインストールする。
2.英語版パッチをダウンロードし、アーカイブ内のすべてをホワイトアルバム2のフォルダ(WA2.exeがあるフォルダ)に解凍する。
3.ホワイトアルバム2のWA2.exeを起動する。

 

まとめ

 ということで、英文多読には小説よりもノベルゲーをおすすめする理由と、2023年現在の私のおすすめノベルゲー5選をお届けしました。ジャンルが偏ってしまった感は否めませんが、どの作品も間違いなく超面白いです!

 毎年、夏になるとSteamではノベルゲーの値引きセールが行われていますので、安いうちにまとめて購入してしまい、次のセールまでの間、順番にプレイしていくのも良いかと思います。あなたの英語多読ライフが、より豊かなものになりますように!

 

 

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英語ゲーム多読の記録⑤【Garage:VAMP】ネイティブな18禁ノベルゲー

 

作品紹介

 Garage:VAMPは、日本語未対応の18禁ゲームです。

 Staemの作品ページによると、Hyanmaru Gamesというところが開発元で、パブリッシャーはTinyHat Studiosとなっています。どこの国なのかはわかりませんでしたが、言語が英語オンリーであることから、おそらくネイティブが作成したゲームだと想像します。

 たまたま見つけて安かったから「せっかくだし、ネイティブのエロ用語でも覚えてみるか~」くらいの勢いで買ってみただけの全然知らない作品ですし、Steamでの評価も「やや好評」程度ですので、期待はせずにプレイ開始しました。そして、良い意味でも悪い意味でも、私の期待は裏切られませんでしたw

 

必要英語力など

推奨英語力:TOEIC550~、英検準2級~

 ゲームプレイ開始時点の私の英語力は、TOEIC905点でした(英検は受験歴なしですが、複数の語彙診断サイトで8,000語超の評価のため、準1級程度でしょう)。

 推奨英語力は、私が過去にプレイした中で最もレベルの低い"HARMONIA"と比較しても、まだカンタンなレベルです。それもそのはずで、主人公である人妻MINAが悪魔(本人は否定していますが)であるVLADIMIROに、とにかく犯され続けるるだけのゲームだからです。普段使うことのないセックス関連の単語や表現は頻発するので慣れるまでは辞書が必要でしょうけれど、たぶん1回目のセックスシーンが終わる頃には大抵の単語はもう頭に入ると思います。恐るべきエロパワー! まあセックスなんて全世界やってることは一緒ですからねw

 というわけで、総合的に見てTOEICで550点もあれば本当に最低限の語彙や文法は身についているでしょうし、十分だと判断しました。逆に、英検1級レベルだったとしてもセックス語彙なんて普通は身に着けていませんので、それほどアドバンテージにはならないんじゃないですかね。むしろ想像力の方が・・・ごにょごにょ。

 

推定プレイ時間:6時間

 私の場合、プレイ時間は6時間程度でした。音声も入りませんし、ヤッてることも代り映えしませんので、最初こそ珍しい単語や表現に「ほほ~!」となっていましたが、後半になればなるほど飛ばし読みでエンターキーを連打するようになってしまいましたね。新しい表現に出会った時だけ、Ankiにぶち込む作業が入るくらいです。

 

よくない点

 どんな作品でも、良い点と悪い点がありますからね。両論併記はさせていただきます。良かった点は後から書くとして、まずは悪かった点を。

 

全体的なクオリティの低さ

 もう全体的に作りがチープです。昨今の同人ゲーの中でもクオリティは低い部類と言ってしまって良いでしょう。絵も上手くはないし、音楽も可もなく不可もなく。

 いちおうストーリーらしきものはないことはないのですが、VLADIMIROに犯される味を知ってしまったMINAが、抵抗しながらもなんやかんや快楽を受け入れてしまい、また犯されるというお決まりのパターンを毎日繰り返すだけの極めて単調なゲームです。いちおう、悪魔?であるVLADIMIROは毎日姿形を変えるので、全く同じ絵面が続くわけではないのすが、いかんせんシチュエーションがワンパターンなので4日目くらいからはもうこっちも飽きてきます。もう少し登場人物を増やすとか、せめて環境に変化をつけてほしかった。

 あ、あと注意点として、いちおうNTRモノ設定です。耐性がない方はご注意。

 

音声なし

 本作は、音声がついていません。そのためリスニング練習には一切の効果がないと言えます。まあ極めて低価格のゲームなので、それは求めすぎでしょう。

 

おすすめな点

 とまあ、よくない点はこれくらいにして、次は良かった点について。

18禁ゲーじゃなければ入手できない語彙(※卑語注意)

 infidelity:不倫

 profanity:冒涜、不敬、淫ら

 She's already horny.:彼女はすでに欲情している。

 seductive dress:エロい服

 get off:性的に興奮する

 protection:コンドーム

 She is drolling and on the verge of orgasm.:彼女は涎をダラダラ垂らし、絶頂してしまいそうだ。 

 thighjob:太ももコキ(いつ使うねん!この単語💦"handjob"の手が太ももに変わっただけですね。ちなみにblowjobはフェ○。)

 precum:いわゆるガ○ン汁

 cumshot:射精

 cock、dick、glan、shaft、member:いわゆる男性の局部の隠語。特に使い分けはなさそう。最後のやつは初めて知りましたが、こんな言い方もするんですね! また、glanは特に亀頭部分を意味するようです。

 She is spitroasted / mated:性交する(spitroastは~を串焼きにする、という動詞。いずれも、受動的にやられる感じ)。

 touch herself、masturbate:オ○ニーする

 sperm、semen、seminal fluids:精液。最後のは固そうな言い方だけど、普通に会話文で登場。

 vaginal fluids:愛液。同じく会話文でも登場。

 cum:精液or愛液。もちろん動詞の「イク」もあるんですが、イった後のモノについても名詞として使用されていました。

 squirt:潮を吹く。この単語は射精の時にも用いられていました。

 cuck him:彼を裏切って他の誰かに寝取られる

 bang your wife:お前の妻を寝取る

 PLOACH...PLOACH...PLOACH...:行為中の効果音

 

 外国人のパートナーが出来た時には、セックス時に使えるの・・・かな? でも、「そんな言葉、HENTAIゲームでしか言わないよ!」な~んて言われるかもしれませんのでご注意を。

 あと、18禁ゲーという性質上、人体の名称が結構細かい部分まで出てきますので、一般小説を読む際の語彙も少しは底上げされる効果が期待できます。太ももとか、子宮とか・・・うーん、使うかな?

 

わりと可愛いヒロイン

 18禁ゲーである以上、ヒロインが可愛くなければプレイヤーのテンションは急降下するわけですが、チープな作りのわりに、人物は結構可愛く描いてくれています。

 ↑子供向けっぽい、ほわほわした絵柄でエグイ目に遭うというギャップ! これはこれで、逆にそそりますよね! ただ画力は低いので、過度の期待は禁物です。

低価格

 値引きセール中に購入したこともあり、本作はなんと390円というお値打ち価格で入手できました! 格安ですね。これくらいの値段であれば、外れを掴まされても許せるというもの。

 

18禁の日→英翻訳に役立つ

 これはかなり狭い範囲の話になるのですが・・・。私は、海外から翻訳の仕事をいくつか受注しています。そしてその中に「日本製18禁ゲームの日英翻訳」があるんですよね。その際に、deepl様とかgoogle翻訳様にお世話になるわけですが、ネイティブがそういう場面でどういう表現を好んで使用するのかまではわからないことが多くて困ることが多々あるんですよ💦

 例えば、「イク」1つ取ってみてもですね。これはどんな時でも"Cum"で良いのか、感極まって叫んでいる時は"Cuuuummming!!"みたいに、"u"と"m"だけを重ねるのか、それとも"i"とか"n"も重ねて"Cuuuummmiiinnnnng!!"とかの方が良いのか、大文字を使うのはどういう場面なのか、"Cuuuummming~~~!!"みたいに、"~~~"をつけるとどういうイメージになるのか、などなど。

 だから、こういうシーンばかりを集めたネイティブ産のゲームをプレイすることは、将来日英翻訳をやりたいと思ってる人にとっては非常に有益かと思います。

 

おすすめ度

 おススメ度は、10段階でです。

 特に見どころもないし、毎日ヤるだけの話なので単調過ぎて飽きてきます。描写は濃いため抜きゲーに分類されることになるのでしょうが、画力がダメダメなので実用にも耐えられません。

 英語多読をする中で、ネイティブの書いたポルノを読んでみたいという目的がある人以外には、正直おススメできないかな~、と。あるいは、私みたいに18禁ゲーの日→英翻訳機会を持っている人くらいでしょうか、かろうじておススメできるのは。


まとめ

 ネイティブが作った低価格のポルノゲー、という物珍しさだけですかね。特におすすめはしませんが、話のネタくらいにはなるのではないでしょうか。

 

 

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英語ゲーム多読の記録④【HARMONIA】日本のノベルゲー

 

作品紹介

 世界は人間同士の戦争により荒廃した遠い未来。大気は灰色に汚れ、大地には生命の息吹は途絶え、水は干上がっています。人口は最盛期の頃よりも大きく数を減らしていました。そんな時代に、フィロイドと呼ばれる感情人形(人間と同じように感情を持ち、食事もし、人間のパートナーとして生きていく人工的な存在)が、朽ちた研究所で目を覚まします。後にReiと名付けられた彼は、自分を拾ってくれた聖女であるShionaとの生活の中で、徐々に他社とのつながりや、失っていた本当の感情を学んでいきます-――。

 『HARMONIA -ハルモニア-』は、Key15周年メモリアル作品としてKeyが制作したゲームで、海外で先行販売された経緯をもつ作品です。Planetarianと同じキネティックノベルですので、選択肢はない完全な一本道ノベルとなっています。また、世界観も「荒廃した未来の地球」で、ロボット(本作内ではPhiroidと呼ばれるアンドロイド)が登場する点でPlanetarianとの共通点もありますね。短編でサクッと終わらせられるだろうと考え、私もこれら2作品を連続でプレイしました。

 Planetarianと比べるとガチガチのSF感や閉塞感は少なく、キャラクター動詞の掛け合いでシナリオが引っ張られる、「いつものKey」といった印象です。そして、Key作品ということはもちろん、プレイヤーは泣きを強要されます。個人的には、泣きゲー度、シナリオの力強さ、BGMの質など、様々な面でPlanetarianを上回る完成度を誇ります。文句なし、超おすすめです。

 

必要英語力など

推奨英語力:TOEIC780~、英検2級~

 ゲームプレイ開始時点の私の英語力は、TOEIC905点でした(英検は受験歴なしですが、複数の語彙診断サイトで8,000語超の評価のため、準1級程度でしょう)。

 推奨英語力は"Planetarian"や"Doki Doki Literature Club!(DDLC)"と比較すると、少し低いです。世界観はともかく、キャラ同士の会話がほとんどなので、難しい単語や表現はそれほど登場しないからですね。特定の場面ではスラングが多用されますし、時たま英検1級超えの難単語が出るときもありますが、音声が日本語で選択肢も存在しないのでシナリオを見失うことはないでしょう。

 総合的に見て、TOEICで780点もあれば十分だと判断しました。ただ英検準2級だとさすがに単語レベルできつくなり物語に集中できなくなる恐れがあるので、せめて2級程度の語彙力はほしいかな~という感じです。

 

推定プレイ時間:10~15時間

 私の場合、プレイ時間は15時間程度でした。本作は声優さんが素晴らしすぎるため一言一句セリフを聞き逃したくなかったのと、泣きのシーンで放心したりしてなかなか読み進められなくなったことが、プレイ時間の増加に影響していますw

 また、いつものように知らない単語や表現が出てくるたびに辞書を引いてはAnkiにぶち込む、という作業を繰り返しながらのこのプレイ時間ですので、私より英語力が高い人は8時間もあればクリアできるのではないでしょうか?

 

よくない点

 どんな作品でも、良い点と悪い点がありますからね。両論併記はさせていただきます。良かった点は後から書くとして、まずは悪かった点を。

 ・・・といっても、本作に限っては悪い点なんてないに等しいんですけどね、マジで。

日本語音声かつ主人公音声なし

 これはPlanetarianと同じです。英語学習用としてとらえた場合、やはり音声が日本語なのは一長一短があります。実際には文法力が足りずに読めていないのに、耳から日本語訳が入ってきてしまうことによって、あたかも実力で会話文が読めちゃってるような気がしてしまうんですよね。残念、それは錯覚です。日本語音声に惑わされず、知らなかった表現はAnkiにぶち込むなりノートに書きとるなりして、地道に暗記しましょうね。

 

声優にハマれるかどうか

 本作にはヒロインが2人登場します。そして私は最初どちらの声にもハマれませんでした。Shionaはなんか想像してた声とギャップがあったのと、Tipiは「ああ、またこういう狙いすぎの典型的ロリキャラか~」って感想が最初に来ちゃったんですよね(後から知ったのですが、Shionaの声優さんってめちゃくちゃ有名な人だったんですね。あの有名な巴マ・・・さんの。全然気づきませんでした)。

 もちろん、そんなことは序盤ですぐに気にならなくなりましたし、最終的には「この声しかなかったやんけ!」という掌返しに落ち着くわけですけど、最初に戸惑いがあったのは確かです。

 ・・・う~ん、あまりにも悪い点がなさすぎてこじつけるしかなかった感じだな💦

 

おすすめな点

 とまあ、よくない点はこれくらいにして、次は良かった点について。

Reiが人間らしさを獲得していくシーンが丁寧

 主人公であるReiは、ご飯も食べるし、痛みも感じます。驚くと足は震えますし体はこわばります。顔色が真っ青になることもあります。ただ、物語序盤の彼は、自身のそういった体の変化の理由を理解できなかったりします。自らの不注意で時計を壊してしまった時、なぜMaddが怒ったのかも、理解ができません。「怒りという感情はいったい何のために必要なんだろう?」そんなことを逐一考え込み、何度も経験を積みながら、「恐怖」「怒り」「喜び」「照れ」といった感情を1つずつ獲得していくのです。

↑Maddは自分の気持ちを素直に表現せずに怒りで代用してしまう、ある意味人間的なキャラで、Reiは彼のセリフを表面的に受け取ってしまうわけですが、Reiとは正反対に他者の気持ちを汲み取るのが得意なShionaからすれば、彼の本音は別のところにあることが容易にわかるわけです。その対比が面白い。

 

 本作はそんなReiが試行錯誤して心を獲得していく過程が非常に丁寧に描かれています。

↑Shionaの荷物を半分持つという些細な行動だけで、胸の奥がこそばゆくなるRei。いや、キミたちは中学生カップルか!って感じで微笑ましいのなんのって。

 

↑Tipiと仲良くすると不機嫌になるShionaに、「それってジェラシー?」とか面と向かって言っちゃう空気の読めなさも、彼の味なのよね。

 

 また、他のキャラクターもそれぞれに悩みを抱えていたり思うところがあったりして、Reiの成長と彼らの人生の転換点とがシナリオ内で綺麗に絡み合っていきます。何らかの想いを抱えているのは、一見ただただ優しい聖女にしか見えないShionaも例外ではありません。彼女は一見、ぽわぽわしているようですが、実は芯を持ったキャラクターです。街中の悩みを解決しに回ろうというReiに対して、「まずは1人でやらせた方が良いよ。そうしないと人は成長しない」と冷静に諭す場面なんかは、決して優しいだけではない彼女の性格を端的に表現しているシーンです。

 Planetarianでも同じことを書いたのですが、やはりKey。単純に、シナリオの完成度が高いです。しかも、登場人物が少なく平坦だったPlanetarianと比較しても、本作は非常にフックの聞いたシナリオになっています。おそらく多くのプレイヤーが、第3章くらいまでは、「Reiが様々なキャラの悩みを解決しながら感情を獲得していく話」になるだろうと予想すると思います。しかし、本作はそう単純ではなく、まず第4章で雰囲気が一変します。それも、思いもよらない方向に。

 そして突入する第5章。こちらは「優しい世界」ではないにしろ、今までの伏線からすると、こうなるのはむしろ予想通りなのではないでしょうか。ただ、そこから物語は急展開を迎えていきます。あとはもう、最後の第9章まで手が止まらないはずです。字幕が英語だとか、そんなことは関係ありません。知らない単語が出てこようが、辞書を引く暇があるなら先を読みたい、そんな気持ちになっているはずですから。

 

これでもかと出てくる口語表現

 上述のとおり、Maddさんは常に怒っていて非常に口が悪いキャラなのですが、それをきっちりと英語で表現してくれているので、普通に学習していたらまず目にしないような口語表現がガンガン出てきます。

↑下から3行目、"You're a real piece of work."という表現がありますね。 piece of work はもちろん「作品」という意味ですが、人に対して使った場合は、「不愉快な」とか「厄介な」といったネガティブな意味になります。日本語でも、皮肉的に「こいつは傑作だ!」って言ったりするし、それに近い感覚なのでしょうか?

 

↑下から二行目、"You have some nerve."は、「良い度胸してるじゃねえか」。「ずうずうしいなあ」のようにも訳せます。時計を壊しておいて、さらに頼み事までしてくるReiに対して放った言葉。

 

↑一行目、"Sorry to break it to you, but"、音声は「だがなあ」。他には、「悪いんだけど」などと訳されるようです。

 

 ・・・とまあ、ここまでたった1シーンの中でのセリフです。

 こんな風に、Maddさんが発するセリフはネイティブが使う口語表現のオンパレード。あまりにも口汚いのでこれを日常生活で使って良いのかは精査する必要があるといえ、こんな良い教材は他にないですよ。

 そしてこの点については、音声が日本語なのが有利に働いています。日本語のニュアンスを英語だとどう表現すれば良いのか、目と耳で一気に叩き込めるのは非常に有用です。英語音声+英語字幕だと、純粋日本人には肝心のニュアンスがわかりませんからね。英語学習という点で、日本語音声には一長一短があるようです。

おすすめ度

 おススメ度は、10段階で10です。

 プレイしない選択肢はありません。それほど完璧な作品なので、こんなつまらない感想記事を読んでいる暇があれば、即買ってプレイしましょう。


 

ネタバレ感想

 ※ここから先は、思いっきりネタバレしています。未プレイの方はご注意。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

異常行動をとり始めるShionaさん

 序盤から、ReiがTipiに優しくすると唇をかみしめるなどの不可解な行動を取っていたShionaさんですが、第4章の青年の葬式を境に、異常行動が目に見えて増えていきます。

↑青年の葬式で悲しみに打たれたTipiの元に向かおうとするReiを、「悲しみは1人で乗り越えることが彼女の成長につながる」と、2日続けて引き留めるShiona。Tipiを放置して「そんなことより歌おうぜ!」とReiを誘う鬼畜っぷりに、プレイヤーである私も唖然ですw 図書館で悲しみにくれる孤独な少女を黙殺しながら、自分は街角でアイドルのように愛されて気持ちいい~!・・・うーん、鬼畜!

 まあそれは冗談として、正直、keyじゃなければ、ここからShionaがヤンデレルートに突入してもおかしくないよな、という不気味さはありましたね。この辺りは(というか、完全にそういうミスリードの演出です)。

↑1人で気持ちよくなっちゃってるShionaさんを横目に、完全に浮気状態のReiさんもそれはそれでなかなかに酷いw

 

↑異常行動が行くところまで行ってしまい、Reiを教会に閉じ込めて単身でTipiの元に向かうShionaさん。その優しい言葉に最初は彼女を信じていたReiですが、さすがにおかしいことに気付き、Tipiの身を案じ始めます。

そして・・・。

↑こっわ! まさかこんな展開になるとは。予備知識なしで読み始めたから、この辺マジで怖かった。

 

↑"your mom and dad are... already dea(d)..."

 なんで常に笑顔でそんな酷いこと言えるのよ・・・。ここからのShionaの豹変は、声優さんの演技と相まって胸を抉ってきます。日本語音声で良かった!と思える場面。

 

 さあ、ここでタイトル画像を見てみましょう!

 ↑うーん、どう見ても正ヒロイン。なのにどうしてこうなった・・・。

 

 第4章だけを切り取れば、Shionaさんはヤンデレというか、いわゆるモラハラ女子そのもの。「あなたのため」というセリフを盾にしてどれだけ酷いことでも言えてしまう。だけど、実際Shionaは教会の聖女で常に笑顔を絶やさない街の人気者。かたや図書館に引きこもり泣き続けている腫物扱いの青い少女。この2人が対立したとして、人々がどちらにつくかは明白なんですよね。まさにリアル現代社会! 汚い! さすが人間! 汚い! この汚い現代社会をReiくんに見せつけて、「人間は良い人ばかりじゃないんだよ?」という方向にシナリオは進むのでしょうか?

 しかしReiくんは強いです。こんな恐ろしいShionaの姿を見てもなお、ShionaもTipiも2人とも笑顔でいてほしいと願うのですから。そして・・・。

↑イチャイチャしてるReiとShionaを、冷静にたしなめるTipi。あんなに取返しつかないであろう場面から、こんなほのぼのしたシーンに帰着する奇跡。

 

終盤のツイストが見事

 ・・・とまあ、そんな感じで非常に恐ろしいモラハラヒロインかのように見えたShionaさんなんですが、真実は全く異なりました。

 そもそも、人間だと思われたShionaとTipiは実際はPhiroidで、自身をPhiroidだと思い込んでいたReiこそが本物の人間だったのです。Reiの右手に埋め込まれた機械は、戦争で失った右手を活動させるための医療用義手だったのです。それどころか街の人々も全員がPhiroidで、いつの日か人間が帰ってきた時に、スムーズに暮らしを引き継げるようにと、phiroidたち自身が人間の「日常」を模倣していたのでした。

 感情を失った人間たちと、人間よりも人間らしいPhiroidたち。この逆転の構図が明らかになった時、物語はひっくり返ります。

 さらに、Tipiが常に図書館にいなければならなかった理由、全ての書籍が手書きだった理由、Maddが動かなくなってしまった理由なども次々に明かされます。そして、ShionaがあんなにもTipiに対して辛く当たらなければならなかった理由も。

 ↑怒りの感情を忘れたことでMaddさんが壊れてしまったように、Tipiは悲しみという感情が満たされてしまえば死んでしまうというのです。ShionaはTipiを守るために、彼女を悲しませ続けなければなりませんでした。・・・いや、Tipi不幸すぎるだろそれ💦よくそんな酷い設定思いついたな。

 ↑TipiはShionaとは違い旧モデルのPhiroidであるため、人間の「死」という概念を理解することができないんですね。どれだけ説明したところでそれは不可能。きっと両親は帰ってくると、数百年間信じて毎日絵を描き続けるTipiは・・・。

 ↑良かった。あんなに酷いShionaさんはいなかったんだ!

 

 Phiroidの少年が人間の街で暮らしながら様々な感情を身に着けていく話と見せかけて、実際には、愛を失ってしまった人間が、Phiroidたちに感情を教えてもらう話というのが真相でした。

 そしてついにその時が。Tipiのバッテリーが、修復不可能になってしまうのです。

 ↑"Humans are selfish to their cores." 人間は根っから利己的だ。

 こんなに献身的なphiroidを生み出しておいて、自分たちは戦争ですべてを破壊する。

それでも平和だった世界をまだ夢見るPhiroidに、何もしてやれない。Tipiは、Shionaが自分につらく当たらなければいけない理由を、理解していました。このシーンは涙腺がかなり危うかった。

 

 ・・・と、熱が入って、あまりにも記事が長くなってしまいましたね。

 全部ネタバレしてしまうのはさすがに、なので記事はこの辺で置くことにします。ただ最後に一つ。本当にクライマックスはこの後に待っているとだけは書いておきます。Reiは人間でしたが、本当の意味で彼が人間になれたのは、物語の最後の最後。常に笑顔だったShionaが1度だけ見せる涙の意味を、瞬時に理解したシーンでしょう。

 あんなに物語のキーになっていたShionaの歌が、ずっとプレイヤーには聞こえないままシナリオが進んでいっていましたので、一番良い場面で流すに違いないとは思っていましたが・・・わかっていても避けられない感動ってあるんですよね。シナリオと音楽と演技の完璧な合わせ技で、見事に涙腺崩壊させられました。


 

まとめ

 「傑作も傑作」と評したPlanetarianを終えた直後にプレイしたのに、まさかそれを上回るとは・・・。これはKey15周年に相応しい、最高のノベルです。短編ですので、隙間時間でプレイできますし、中学3年生くらいでも頑張れば読めるはずの難易度です。

 ぜひ本作をプレイして、感動しながら英語多読しちゃいましょう!

 

 

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英語ゲーム多読の記録③【Planetarian〜ちいさなほしのゆめ〜】日本のノベルゲー

Steamにてplanetarianが全世界へ公開中! English/Japanese対応!|Key Official HomePage

作品紹介

 KEYから2004年に発売された本作は、プラネタリウムを舞台にした青年と少女との短い交流を描くノベルゲーです。プラネタリウムが題材ということで、星々のきらめく可愛らしい物語なのかと思いきや、まったくそんなことはありません

 世界は戦争により荒廃した近未来。奇跡的に空襲を免れたプラネタリウムが存在しているのは、30年前までは都市だった廃墟の中。そして少女の正体は、人ひとりいなくなった狭い世界に取り残されたロボットです。彼女は世界が戦争でボロボロになり人間が激減したことなど知る由もなく、来る日も来る日も、現れるはずのない来館者をプラネタリウムの受付で、30年間待ち続けているのです。そこへ、食料や武器を求めて主人公である男が迷い込んだことで物語は動き出します。わりと硬派で、「泣き」が約束された設定だということが伝わるでしょうか。

 大手の会社作品ですから当然絵は美麗です。シナリオも単調ながらさすがに頑丈ですし、最後の盛り上げは流石。音楽は・・・うーん、個人的には当たり外れが大きいかなぁ。超短編で、英語版でもプレイ時間が10時間を超えることはまずないと思います。字幕は複数の言語から選べますが、音声は日本語限定です。この点は、英語学習という観点から見るなら残念ですね。ただ声優さんがとても良く、聞き惚れてしまいます。やはり日本人声優はスキルがブラッシュアップされてる感がありますね。

 

 色々書きましたが、泣きゲーとしてのクオリティは保証しますし、廉価であることを考えればこの短さでもお釣りが来るでしょう。また本作は様々なメディアミックスがなされているらしく、とりあえずゲーム版をプレイしてから手を広げるかどうかを考えてみても良いのではないかな?とも思います。

※私はKEYの作品がまとめ売りセールをしている時に購入しました。定期的にあるようなので、そのタイミングを待って購入するとより安く入手できますよ!

 

必要英語力など

推奨英語力:TOEIC860~、英検2級~

 ゲームプレイ開始時点の私の英語力は、TOEIC905点でした(英検は受験歴なしですが、複数の語彙診断サイトで8,000語超の評価のため、準1級程度でしょう)。

 いちおう推奨英語力は"Doki Doki Literature Club!(DDLC)"と同レベルにしましたが、実を言うとPlanetarianの単語レベルはDDLCよりもかなり高いです。単語レベルが上がっている原因は、ひとえに舞台が特殊だからですね。戦争と天体関連の単語が頻出することに加え、SFならではの、日本語だですら馴染みのない専門用語がいくつも登場することが理由です。この点、ギャルゲ的な学校が舞台のDDLCは平易ですから。

 ↑こんな風に、英検準1級くらいの語彙力では、全く太刀打ちできない場面がそこかしこに登場します。なんなら英検1級のパス単にも出てこない単語だって大いに登場しますからね💦

 あとそれと、ヒロインのロボット少女である「ほしのゆめみ」が、ロボットであるがゆえに主人公の問いかけに対してズレた返答をしまくってくるのも難易度上昇に一役買っていると言えます。だから、単純な語彙レベルで言うのなら英検2級ではちょっとキツイ。

 

 とはいえ、ですよ。

  1. 選択肢のない一本道の短編ゲームであること
  2. 音声が日本語であること(少なくともセリフは全て理解可能)
  3. シナリオの核はあくまで主人公とヒロインとの触れ合いであること

 ・・・これらを鑑みると、理解不能箇所がいくつかあったとしても、途中でシナリオがわからなくなるなんてことは起きえません。ということを踏まえて、総合的なレベルは"Doki Doki Literature Club!(DDLC)"と同程度と判断しました。

 

推定プレイ時間:5~8時間

 私の場合、プレイ時間は8時間程度でした。知らない単語や表現が出てくるたびに辞書を引いてはAnkiにぶち込む、という作業を繰り返しながらのこのプレイ時間ですので、私より英語力が高い人は5時間もあればクリアできるのではないでしょうか? 日本語版だと3時間以内でクリアしている人も多く目にしますし、そんなものでしょう。選択肢もないですし。

 

 

よくない点

 どんな作品でも、良い点と悪い点がありますからね。両論併記はさせていただきます。良かった点は後から書くとして、まずは悪かった点を。

 ・・・といっても、悪い点を探すのが難しいくらいに完成度の高い作品なんですけどね💦

日本語音声

 これは英語学習用としてとらえた場合の話ですが、 やはり音声が日本語なのはかなり痛いです。実際には文法力が足りずに読めていないのに、耳から日本語訳が入ってきてしまうことによって、あたかも実力で会話文が読めちゃってるような気がしてしまうんですよね。残念、それは錯覚です。日本語音声に惑わされず、知らなかった表現はAnkiにぶち込むなりノートに書きとるなりして、地道に暗記しましょうね。

 

日常シーンの音楽はちょっと・・・

 本作、音楽がピンキリです。まあ私は音楽に関してはド素人ですのでこんな言い方をすると失礼かもしれませんが、それでも日常シーンのヘッポコな曲たちはいったい何なんでしょうか。いや、わかりはするんですよ。ゆめみのどこか抜けたキャラを強調するためだとか、暗く重苦しい世界観に対しての清涼剤のような意味合いであえてこういう曲を持ってくる、という意図は。だけど、それでも自分の耳にはキツかったです。物語の大部分が日常シーンであることもあって、何十分間も同じ曲を聴き続けることになるのは正直・・・。

 

展開が速い

 これもこじつけ感はあるんですが💦

 最初はゆめみに対してぞんざいな態度をとっていた主人公が徐々に心を開いていく、というテンプレ展開でシナリオは進むのですが、ちょっとデレるのが早すぎないかな?とは正直思いましたw 終末世界とはいえ日常の積み重ねで大きな事件は起こらない中、食料が尽きかけそうになってるのに、何日もかけて懸命に投影機を修理し続ける主人公に行動には少し疑問を覚えました。ただ星の見えない世界ですから、主人公自身、なんとしても一度で良いから満天の星空を見てみたかった、という想いもあったのでしょうね。

 

おすすめな点

 とまあ、よくない点はこれくらいにして、次は良かった点について。

あくまでロボットとして描かれるゆめみ

 こういうヒロインが1人しかいないゲームだと、そのキャラにハマれるかハマれないかが評価全体を大きく左右します。その点において、ゆめみというのはかなり面白いキャラです。

 そもそもロボットキャラというのは描写が難しいものだと、私は思っています。こういう人間とロボットとの交流を描いた作品自体は今まで無数に出ていますが、下手な作品だと、ロボットらしさが全くのゼロで「それって別にロボ設定いらなくね?」となることもあれば、逆にあまりにも無機質すぎて感情移入のしようがないこともあります。または、それらを両立させようと頑張った結果、序盤は無機質ロボなのに途中で「奇跡」が起きてヒロインの中に心が芽生える(ロボットなのにね!)、というありがちな展開になっちゃったりすることもよくありますよね。

 しかし、本作のゆめみはそうじゃありません。彼女はあくまでもロボットです。これは初登場時からエンディングまで一貫しています。ですので、類似した場面に出くわすと、毎回同じ反応・同じセリフを返しますし、どんな場面においてもいわゆるロボット三原則に沿って行動します。そして人間らしいからではなく、ロボットらしいからこそ、物語後半でプレイヤーは名状しがたいやるせなさを感じることになるのです。ゆめみは自分をロボット、主人公を人間としか考えず、人間のために働くことを至上の喜びとしているのに対し、主人公もあくまでゆめみをロボットだとしか認識していません。そこに恋愛要素なんてものは皆無です。普通に考えれば、ここからどうやって感動させるんだろう?と疑問に思うところです。なのに、まさかロボットらしさそのものを逆手にとってプレイヤーの心を震わせに来るとは思いませんでした。ゆめみには、人間の心が(真には)理解できないからこそ、人間であるプレイヤーには、ゆめみには決して見ることのできない残酷な姿が手に取るようにわかってしまうんですね。

 また、そんなゆめみも時たま人間らしい行動を取り、それがスパイスのようにプレイヤーの感情移入を促進します。冒頭で、プラネタリウムの来館者数の鯖を読むシーンなんかは、彼女にインプットされた性格を端的に表していますね。だってロボットが数字の鯖を読むんですよ?面白過ぎるでしょw メチャクチャ人間っぽいけど、プログラム組めば再現できそうな妙なリアリティよ。サポートセンターに繋がらないことに対して、「少しだけ心細いです」と冗談めかして言ってみるシーンもグッときますね。

 

泣きゲーとしての完成度

 単純に、シナリオの完成度が高いです。誰がプレイしても「傑作」だと思います。

 終末世界でのボーイ(ガイだけどねw)・ミーツ・ガール、それも最初の最初から別れの結末を予感させての導入、主人公とヒロイン2人きりの触れ合いの日々、主人公の心の再生、命を懸けた戦闘、30年ぶりに出会った人間と数日間を一緒に過ごしたヒロインの独白、主人公の決意・・・。

 かなり広く、細かく練りこまれた世界設定なのに、たった1つの街の中、ゲーム内時間でたった数日間の中に起承転結を綺麗に詰め込んでいて、ものすごく贅沢な作品なんですよ。メディアミックスされるのも当然です。

 ↑雨が降り続き、星どころか太陽さえ見えない世界。プラネタリウムに投影された偽物とはいえ、満点の星々を生れて初めて目にした主人公の気持ちは・・・。それも自分自身が修理した機械で。

↑プラネタリウムの電気は切れ、もう二度と上映することはできない。そしてゆめみ自身の充電も。

 

ロボットヒロインだからこその感動

 ※以下、思いっきりネタバレしています。未プレイの方はご注意。

 

 

 

 

 

 

"We are robots. Therefore this is a promise that we can never forget.

And to keep it is our honor as robots."

 

 ゆめみはロボットなので、人間の役に立つことを「誇り」だと認識しています。だから彼女はその本能に基づき、自らシオマネキ(主人公を砲撃してきた自立式の戦車的な敵)を止めに入り、結果として自身が破壊されてしまいます。

 ↑自分を破壊した「ロボット」にさえなり代わり、主人公に謝罪するゆめみ。
「ロボットが人間に危害を加えることなどあってはならないのだから、それをしてしまったシオマネキは、自分と同様に『壊れていた』に違いない」のだと。

 しかし、彼女が「誇り」だと認識しているものは結局のところ、人間が彼女に埋め込んだ、作り物の「本能」にすぎないんですよね。やるせなさを感じざるを得ないシーンです。

 

↑ゆめみの記録の中の、館長たちがプラネタリウムを去るシーン。こんな破壊力ある場面を、最後の最後でこれまでかと放り込んでくるんだから、さすがの泣きゲーブランドですよ。彼らがゆめみを「同僚で友達」だと認識していることだけが、救いです。

 ところで、昔主人公とタッグを組んでいた老人って、もしかしてこの中の1人なんじゃないのかな?と想像してみたり。「ロボットには気を付けろ」なんて忠告をするくらいなんだから、彼はきっと昔ロボットに心を奪われた経験があるんだろうし。

 

そして一番私の心に刺さったのが・・・。

 ↑ずっと自分自身のことを「少し壊れている」と言っていたゆめみ。しかし、最後の最後に真実に気づいてしまいます。本当に壊れていたのはゆめみではなく・・・。

そして彼女は言います。「あと1度だけ記録が可能です」と。数日間を彼女と過ごし、今まさにその最期を看取ろうとしている主人公は、いったい何を語りかけるのでしょうか?


 

まとめ

 傑作も傑作。

 リスニングの練習にならないという難点は仕方ありませんが、単純に素晴らしい作品をプレイしたいなら、断然おススメの短編ノベルです! 隙間時間でプレイしても数日で終わりますので、ぜひ一度やってみてください。

 ちょっと本編が切なすぎるしまだまだこの世界を食い足りないので、私はこれからメディアミックスの方にも手を出そうと思います。

 

 

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英語ゲーム多読の記録②【doki doki literature club】アメリカのノベルゲー

作品紹介

 言わずと知れた名作なので、知っている人も多いでしょう。有志が作った原作の日本語版も出ていますし、ドキドキ文芸部「プラス」として、拡張版も別プラットフォームで発売されています。

 本作は、文芸部を舞台にしたノベルゲー(ギャルゲー)です。作者はアメリカ人でありながら舞台は日本ですし、キャラも全員が日本人名。ただし文章はすべて英語です。しかし英語とはいえ、物語の展開は古き良き日本のギャルゲーのお約束を丁寧になぞる感じなので、次にどういう展開が来るか非常に読めやすく、知らない単語が出てきても簡単に理解できてしまいます。

 天真爛漫な幼馴染のサヨリに連れられて、半ば強制的に文芸部に加入させられた主人公はそこで3人の別の美少女たちと出会い、作詩活動を通しながら彼女たちと親睦を深めていく。さあ、最後は誰とくっつくのかな?・・・そんな感じのどこにでもあるギャルゲーに見えます。・・・一見。実際は、その期待は大きく裏切られることになりますけどね! シナリオについては、このゲームの性質上、ここで詳しく書くことはできません。ネタバレすると魅力が大幅減してしまう類のゲームだからです。

 一枚絵はブレが目立ちますが立ち絵は安定していますし、音楽は非常に高クオリティ。そしてシナリオは言わずもがな。短編とはいえ、プレイヤーの感情を大きく振り回してくれる内容で、しかも無料というなんですから、これはプレイしないと損ですよ。ちなみに、音声はありません。その点だけは残念ですが、無料のゲームにそこまで求めるわけにはさすがにいきませんw

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↑このゲーム、子どもや簡単に感情を乱してしまうような人には向いていません。という注意が冒頭で出るくらいには、ホラー要素アリです。苦手な人は注意!

 

必要英語力など

推奨英語力:TOEIC860~、英検2級~

 単語レベルは、そこそこです。

 ゲームプレイ開始時点の私の英語力は、TOEIC810点でした(英検は受験歴なし)。

紹介順は前後してしまいましたが、実際はCrystallineよりも先にプレイしています。そのため初プレイの際の私の英語力は低かったのですが、それでも序盤は辞書を引きながらであればなんとか物語についていけましたので、Crystallineと比較すれば必要英語力は低いです。

 ただ、作者がアメリカ人なので、Crystallineと同じくスラングは多用されますし、一部には英検1級の単語も登場します。しかしながら、これもまたCrystallineと同じく作者は明らかに日本のノベルゲーが大好きで、物語の進み方がベタなのと、ヒロインたちがどこにでもいる量産型の記号的キャラなので、簡単にシチュエーションを想像できてしまいます。短編であることも、途中で挫折せずプレイできることに一役買っていると言えるでしょう。

 

 そういうわけで、洋ゲー多読入門編として使うのが良い印象です。日本のノベルゲーをプレイしたことがある人なら、TOEIC700点以下とかでもたぶん全然ついていけるかと。恥ずかしながら私自身、本ゲームプレイ開始時点では、「笑う」という意味の単語を"smile"と"laugh"しか知らなかったのですが、プレイ中に、新たに"grin"と"giggle"を覚えることができました。これら2つの単語は、学校英語では登場しなかったように記憶していますが、ノベルゲーでは頻出のようです。

 

推定プレイ時間:10~50時間

 私の場合、プレイ時間は30時間弱でした。知らない単語や表現が出てくるたびに辞書を引いてはAnkiにぶち込む、という作業を繰り返しながらのこのプレイ時間ですので、私より英語力が高い人は10時間もあればクリアできるのではないでしょうか?

 一方で、このゲームはシナリオ上、2つの意味で「ハマってしまうと容易には抜け出せなくなる」箇所があります。そこでどれだけ時間をかけるかは人それぞれですので、大幅にプレイ時間が伸びる可能性はあるということで、推定プレイ時間に大きな幅を設けました。私は、○○○推しではないのでハマることはありませんでしたが。

 

よくない点

 これだけ世間で騒がれまくり、steamで「圧倒的に好評」評価なのを見ればわかるとおり、極めて満足感の高いゲームです。良かった点は後でゆっくり語るとして、良くなかった点について少しだけ記載をば。

 

パクリ問題

 このゲーム、仕掛けやシナリオ展開がモロに日本の某ゲームのパクリです。作者は公式でその件を否定していますが、残念ながら言い逃れはまず無理。詳しい内容についてはここには書きませんので、気になる方はネットで検索してください。

記号的&雑魚すぎるヒロインたち

 ヒロインたちは全員記号的で、どこにでもいるキャラです。本ゲームは後半面白い展開をしますが、それでもなおやはり記号的の域を出ておらず、「ひねった」キャラは皆無です。また、短編なことに加え、キャラより仕掛けに重きを置いているゲームであることも相まって、まるで20年前のギャルゲーのごとく簡単に主人公のことを好きになってしまうヒロインたちの雑魚ぶりにも、違和感を覚えるユーザーがいると思います。

 とはいえ、前段に関してはあくまでもノベルゲー先進国である日本人の目から見た場合であって、それほどノベルゲーが進化していない世界的な感覚からすれば、むしろそのわかりやすさが強みになっているとも言えるので、一概にこの点がマイナスだとは言えません。

 それと、この記号的で雑魚すぎるヒロインたちの設定は作者が意図的にそうしている可能性が高いです。それは物語後半の展開を見れば明らかで、作者はプログラムされたキャラがプログラム通りに主人公を好きになり、あらかじめ定められたエンディングを迎えるという、ギャルゲーのいわばアイデンティティそのものに問題を提起し、何なら嘲笑っているとさえ言えます。

 まあ、その問題提起だったり皮肉だったり嘲笑いだったりが本作品のメインディッシュでありながら、パクリ100%なところがバッシングを受ける原因なんですがね・・・。(○○の壁破壊という発想自体は、ノベルゲーに限らず、映画にも小説にもパクリ元以前からあったものなので、その部分については問題にしていません。あしからず)

 

おすすめな点

 とまあ、よくない点はこれくらいにして、次は良かった点について。

ちょうど良い必要語彙力

 上述したように、このゲームはそこそこの語彙力を求められます。しかし、英検1級レベルの単語はそれほど出てきませんし、何より舞台がどう見ても日本の学校です。よって、登場する英単語は、日本人なら学生時代に必ず触れてきた身近なモノとか感情とかに関するものが多く、「あ、この単語、英語ではこう言うのか!」という発見が多いです。"mean"って単語には「意地悪」って意味もあるのか!とか。

 ユリや後半のモニカが使う語彙には難しいものも多いですが、サヨリやナツキは平易な語彙を好んで用いますのでそこまで辞書頼りにはならないと思います。それでも1週目はツライかもしれませんが、周回プレイ前提のゲームですから、2週目以降は読む速度が上がりますし、復習しながら語彙を強化できますよ。

 ナツキのセリフで”like”が連発されるのに気づいた時は、「なるほど、この系統のキャラは海外ではこういう口癖で表現するのか!」という発見に、なんだか嬉しくなったりもしましたねー。彼女たちの掛け合い、特に中盤までのベタベタなラブコメ展開は、アニメに親しんだ日本人ならば誰でも理解できるのではないでしょうか。

 あと、ネイティブアメリカ人が作成しているのも良いところ。自然な英語で書かれているわけですし、ネイティブ特有のスラングも結構出てきます。

「これ、Distinctionでやったやつだ!!」って、何度もなりました。単語帳で出てきた表現と長文で出会うことで語彙が血肉になるのは黄金パターンですよね~。


 

↑Distinctionは1~4とSだけじゃなく、長文読解型単語帳である、この2000もおススメです。


 

↑パス単1級レベルの単語も、(特に後半は)登場します。でも、そこまでビビらなくても本作は読みこなせるかと。

単純に面白いし、完成度が極めて高い

 散々、パクリだパクリだとディスリましたが、作品の完成度で言えば本家本元の「ととの」よりも、本作の方が数倍上です。両方をプレイしたことのある人なら、その意味がわかると思います。

 いわば安全圏からシナリオを眺めていたプレイヤーが、ある瞬間から壊れた世界に強引に引きずり込まれ、彼我の境界があいまいになった場所で相手から強烈なラブコールを受ける展開は共通なものの、そこに至る過程(いわゆる2週目)においてのサプライズの数々は、本作プログラムチームの素晴らしい技術力のたまものでしょう。初見だと、本当に驚愕する場面が何度もあります

 この点、ゲーム自体がバグだらけで、もはや演出なのか本当のバグなのかわけがわからなくなっていたととのとにも見習ってほしいです。プレイに支障が出るレベルでしたからね、あれ。


 

 

↑こっちもまた、音楽も凄く良い!

 また、仕掛けの部分を置いておいたとしても、本作はノベルゲーにおける典型的なヒロイン像をしっかり揃えてきています。幼馴染キャラ、ツンデレキャラ、引っ込み思案キャラ、ヤンデレキャラ、委員長キャラ、、、。自分の性癖に刺さるキャラが最低1人は推しキャラが見つかることでしょう。

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↑私はツンデレのナツキ推し!

 それに加えて本作は、「一見○○に見えるキャラが実は△△だった」という、こういうノベルゲーにおける基本的なツイストを、ベタながらコンパクトにまとめています。そこに本作のモチーフである詩を絡め、詩の中に彼女らの真のキャラクターが表出するような演出にしているのが効果的です。典型的なお気楽キャラに見えるサヨリなんかは、この演出が特に生かされていると思います。

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↑目元に光るモノが。

 一方、短編であることも影響して、キャラクターについては描写不足で薄味に見えますが、そこが逆に想像の余地を生んでいるとも言える絶妙な塩梅です。この辺りについては、有料のドキドキ文芸部プラスで補完されていますので、興味ある方はぜひ。私は無料でやりたかったので未プレイです。


 

↑こちらは日本語版。

 周回前提のゲームでありながら、展開が目まぐるしくかわり、プレイヤーを飽きさせない工夫がなされているように思います。そして最後にはしっかりと感動もさせてくれ、綺麗で切ない余韻が残ります。同じテーマを扱った作品は、本作や「ととの」の他にも多数ありますが、この処理方法について、本作はパーフェクトな出来と言えるのではないでしょうか。

 

まとめ

 良い点悪い点いろいろありますけど、この作品単体で見たときのクオリティはどう考えても群を抜いて高いですし、このレベルの作品を無料で出されては「DDLC超おすすめ! つかプレイしてないとか人生損してる!」と言わざるを得ません。

 英語学習の一環として海外ゲームのプレイを考えている人、スリルを味わいながら物語にのめり込む体験をしたい方は、絶対にプレイするべき作品です。

ddlc.moe

↑公式

 

 

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英語ゲーム多読の記録①【Crystalline】カナダのノベルゲー

作品紹介

 異世界転移モノノベルゲーです。ニューヨーク在住である大学生の主人公が図書館で勉強していたところ寝落ちしてしまい、気づけば剣と魔法の世界に飛ばされていた、というところから物語は始まります。

 右も左もわからない世界で、ヒロインであるLeannaの助けを借りて冒険の日々を過ごしながら、仲間たちと親交を深め悪の組織との戦いに臨み・・・、その果てに主人公は自分の世界に帰れるのか? それとも仲間たちとこの世界に留まることになるのか?

 そんな感じの、良くも悪くもよくある、笑いあり感動ありの王道ファンタジーです。シナリオ自体のレベルは正直、まあまとまってるかな?くらいの印象ですね~。

 しかし一方で、イラストは美麗だし音楽も高クオリティ、主人公以外はサブキャラ含めて全員フルボイスという豪華さに加え、この大ボリュームで495円という破格の値段は、即決で購入を決めて良いレベルでしょう。

 ※私の購入した495円という金額は、セール価格だったようです。定価は1,980円。お気に入り登録だけしておいてセールを待ってから購入するのがお得ですね!

 

必要英語力など

推奨英語力:TOEIC900~、英検準1級~

 単語レベルは、結構高いです。

 ゲームプレイ開始時点の私の英語力は、TOEIC905点でした(英検は受験歴なしですが、語彙だけなら準1級はweblioで「合格安全圏」の判定)。しかし、その程度のレベルだと知らない単語が山ほど登場しますし、カナダのゲームだけあってネイティブ御用達のスラングもガンガン出てきます。そのため、プレイ開始から数週間くらいは、1画面に知らない単語が2つも3つも登場することがわりとよくありまし

 数えてみたところ、最低でも、英検パス単1級(第4版)に登場する2100語のうち、10分の1くらいにあたる202個もの難単語がゲーム内で扱われていました。全選択肢を選んだわけではないですし、スルーしてしまった単語もあるでしょう。なんなら英検1級以上の単語もガンガン出てきてると思われるので、特に序盤はマジでキツイです💦

 

 ただ、作者は明らかに日本のノベルゲーが大好きで、物語の進み方がベタなのと、イラストの助けがあることで、一般的な洋書と比較すれば、かなりシチュエーションを想像しやすいです。立ち絵は偉大だ。

 

 そういうわけで、語彙レベルのわりにはとっつきやすい印象です。TOEICで900点取れたのなら、全然挑戦してみて良いのではないでしょうか。

 以前プレイした"Doki Doki Literature Club!(DDLC)"と比べるとさすがに難しいです。DDLCをプレイしてみてイケそうなら、Crystallineに挑戦してみても良いかも。

↑エンディング直前には、こんな感じで自分のレベルアップが実感できます!

 

推定プレイ時間:50~100時間

 私の場合、2022年7月1日からプレイを開始し、true endに辿り着いたのは2023年1月5日でした。つまり、クリアまでに半年間もかかった計算になります。また一日のプレイ時間は1時間程度でしたが、プレイできない日もありましたし、TOEICS&W試験対策などで途中プレイを辞めていた時期もありましたので、実際のプレイ時間は80時間程度です。

 色んな選択肢を試してみたり、辞書をたくさん引いたりする人ならもっとかかるでしょうし、逆なら50時間もあればクリアできるボリュームかと思います。ただ、全編フルボイスなのでぜひ声優さんの演技は楽しんでほしいです。侮るなかれ、みんなかなりレベル高いですよ!

 

よくない点

 steamで「圧倒的に好評」評価なのを見ればわかるとおり、基本的に満足感の高いゲームです。良かった点は後でゆっくり語るとして、最初に良くなかった点について少しだけ書いておきますね。

 

"a"と"o"が紛らわしい

 フォントのせいで、"a"と"o"を見間違えることが多かったです。知っている単語のはずなのに意味が取れないな?と思ったらaとoを誤認していたことも多いですし、知らない単語が出てきた場合は調べる際に時間のロスが出てしまうこともありました。

 製作者の方に特にこだわりがないのであれば、ぜひ次作では別のフォントを使ってほしいところです。これについては読解に支障が出るレベルなので切にそう願います。

 

お××いが滅茶苦茶揺れる

 これはむしろ良い点だとも言えますがw 揺れます。立ち絵が。1人を除いて・・・

画像

↑その1人

 

 友達に勧めたり、親と一緒にプレイしたりするなら気まずくなること間違いなしなので、一応注意喚起のために書いておきました。

 マジで不自然なくらいに揺れるからなぁ。なんでこんな仕様にしたんだろ💦

 

ストーリーが強引

 主に序盤、シナリオが強引なんですよね。

 異世界転移した主人公とヒロインのLeannaとが出会って行動を共にすることになるのですが、行動を共にする理由も弱いし、一文無しの主人公に衣食住すべてを貢いでる状態になるのも「おいおい・・・」と思わざるを得ません。

 またLeannaが主人公に好意を持つのも、特にきっかけがあったわけでもなく単なるご都合主義に見えますし、この辺りはもう少し丁寧な描写が欲しかったというのが正直な感想です。

 

おすすめな点

 とまあ、よくない点はこれくらいにして、次は良かった点について。こっちはたくさんあります。

英検1級&Distinctionの単語・表現のオンパレード

 上述したように、このゲームはそれなりの語彙力を求められます。英検1級レベルの単語もガンガン出てきますし、Distinctionに登場するスラングもガンガン出てきます。同じ表現と何度も何度も出会うことになるため、クリア時には必然的に語彙力は爆上がりしています

 あまりに難しい単語ばかり出てくると読み進めるのがツライ時もありますが、話の大筋はきっと誰でも理解できるので、わからない部分は飛ばし読みしてしまって構わないでしょう。とにかく、これだけのボリュームのゲームを1本クリアしたことが自信にもつながるはずです。


 

↑Distinctionは1~4とSだけじゃなく、長文読解型単語帳である、この2000もおススメです。


 

↑パス単は言わずもがな。この1級用単語がCrystallineではガンガン登場します。

フルボイスなのに低価格

 この価格にもかかわらず、本ゲームはフルボイスです(主人公以外)。そして気になる演技の方も、お世辞抜きで上手い! 正ヒロインのLeannaはもちろん、クールなAmeliaの平坦でハスキーな演技も、猫のようなKaraの男をからかうような態度も、寡黙と見せかけて割と焦りがちなZackのオンオフの切り替えも、物語を邪魔するようなことはありません。

 発音はアメリカ系かな?と思うのですが、Leannaが"often"を"オフトゥン"と発音するなど、時たまイギリス系が混じる時があるようです。

 

Leannaが可愛い

 このゲーム、ノベルゲーらしく魅力的なヒロインはたくさん登場するのですが、ルートはLeanna固定です。そのため、彼女を気に入るかどうかが物語にハマれるかどうかを大きく左右するわけですが・・・。

 個人的には、100点満点のヒロインで大満足!

 属性としては、金髪女騎士、生真面目で融通が利かない、でも時にいたずらっ子。まあ、量産型といえばそれまでなんですけどね💦ただそれは言い換えれば安心して物語に没入できることを意味します。ただでさえ英語で描かれてとっつきにくい物語の中に変に凝ったキャラが登場したら、感情移入しにくいですから、このキャラづけは個人的にはメリットだと感じました。

 あえてLeannaの素晴らしい点を挙げるとすると、他キャラに弄られて輝く点です。生真面目がゆえに、クールなAmeliaやいたずら好きなKara、飄々としたZackにすら弄ばれ、選択肢によっては主人公にまでおちょくられる弄られっぷりは、純ヒロインの風格たっぷりです。

↑触手プレイもあるYO!

 触手から解放されブチ切れるLeanna。"perverted"はDokiDokiLiteratureでも登場した単語の派生です。普通に英語勉強していたら出会わないであろう、いわゆる「HENTAI」という意味ですねw

 何があったのかは本編で確かめてください。しかし、このセリフ読むときの声優さんノリノリで良いなあ。一聴の価値アリですよ!

↑自分に向かって"baby"と声をかけてきた男をボッコボコにするLeannaさん。わりと滅茶苦茶やるのよね~、この子。


 それでいて、決めるときは決めるのもまた良し。

他のキャラも魅力的

↑このシーンは、Leannaがベッドで男を誘うふりをしてスキを作っている間に、Zackと主人公が後ろから男を倒す手はず。しかしLeannaの誘い方に魅力がないとダメ出しするZack。この後も、シャワーから戻って固まった男に悩殺ポーズを見せつけて、"Is this atractive?"と挑発するとか、クールに見えるZackがふざけまくってお腹痛いw

 

画像

↑マスコット的な立ち位置のPango。マスコットでありながら主人公の相棒のような存在でもあり、ラストバトルではキーになるという活躍っぷり。声優さん、頑張ったなぁ~って感じですw

 

↑この世界には5つの属性があり、それぞれに精霊がいます。基本、巨乳です

精霊たちと出会う度に主人公はその力を吸収し、強くなっていきます。そしてそれが元の世界への扉を開くカギに。

 

画像

↑かつての英雄たち。この内の何人かは、本編でも登場します。中には重要な役どころの人も・・・? こういうサブキャラにも力を入れているのが嬉しいところ。


飽きさせない工夫

 ノベルゲームはマウスをクリックするだけなので単調な作業に陥りがちですが、Crystallineは所々にミニゲームを挟んでいて、単調さを和らげる工夫をしています。

↑上に並んだ画像と同じものを下から選んでクリックする。時間制限あり。

 このミニゲーム自体が単調だという問題点はともかくとしてw 工夫していることは評価できます。

 

他にも、(これは悪い点とも言えますが)たまに微エロ要素が出てくるのも男性のハートをしっかり掴んでくれますw

↑これは魔法の練習中、「風魔法をかけたい部分に意識を集中して」とLeannaから言われた時の選択肢。男なら一番上を選びますよね?w

 どうなるか知りたければ、例のごとく本編をどうぞ!

 

↑温泉シーン。バスタオルが妙にのっぺりしてて変な感じw

実はこのシーンに辿り着くためには選択肢選びが重要だったり。そしてこの後、見せられない一枚絵が・・・?w

 

明らかに和ゲーを研究している

 もう一つ、外せない魅力がこれです。

 このゲームの作者、明らかに和ゲー大好きなんですよ。例えばですね、

↑選択肢1の"Happy waifu happy laifu"ですが、これ本来は、"Happy wife happy life"です。「(男性視点で見て)奥さんが幸せなら人生は幸せだ」的な意味の成句で、じゃあなぜここではwifeでなくwaifuと記述されているかというと、、、

www.weblio.jp

 ・・・ということです。どう見ても作者はアニオタです。本当にありがとうございました。

 

 とまあこのシーンだけでなく、いろんな場面で和ゲーや日本アニメのお約束を存分に盛り込んでくれているので、ネイティブ日本人のこちらとしては、なんだかむず痒くも安心して、気持ちよくプレイできるんですよね~。アニメ・ゲームに国境なんてないですから!

 

まとめ

 色々と思いつくままに書き殴ってきましたが、まとめると、「Crystalline超おすすめ! 安いし面白いし、ついでに語彙力もリスニング力も上がるよ!」ってことです。ある程度の語彙力があっても序盤ツライですが、重要な単語とは繰り返し出会うことになるし、ストーリーやキャラクターの性格に対する理解が深まるので、進めば進むほど物語にのめりこむことができるはずです。

 英語学習の一環として海外ゲームのプレイを考えている人は、やっておいて損のない名作だと言えます。

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