英語多読したり投資したりFIRE目指したり

30代からの投資でアーリーリタイアを目指す記録。日本に拘りはなし。

私の人生を変えた一冊! 『DIE WITH ZERO』(ビル・パーキンス(著))

Die with Zero

人生が豊かになりすぎる究極のルール

 今回ご紹介する本は、ビル・パーキンス氏の書かれた『DIE WITH ZERO』です。世界的なベストセラーですのでここしばらくはどこの書店でも平積みになっていますし、目にした覚えのある方も多いでしょう。

 私もいつか読みたいと思いながら、他に手を付けたい本が多すぎ、なかなか本書に手を伸ばすことができないでいました。しかし、いざ一度読み始めてしまえば本書が人生の本質に迫るような普遍的な内容となっていることに気付かずにはいられませんでした。世界中で売りに売れたのも当然のクオリティ。帯にも書かれていたのですが、本書には「もっと若い頃に出会いたかった」と切に思いました💦

 それだけ、凄まじいインパクトがあったんですよね。特に、株や暗号資産など資産運用を積極的に行っている層やFIREを目指している人々が本書を読むと、「本当に自分の人生、それで良いのか?」という自問自答を強要されるでしょう。誰もが知見を得られますが、そういった層には特別親和性が高いです。


 

 

本書の結論

 本書の結論は、「人生で一番大切なのは、思い出を作ることだ」というものです。様々な書籍やyoutuberの登場により、金融資産を効率的に作る方法論が共有され、日本においても若い人たちのマネリテが急速に高まっているこの時代において、「お金なんてものは経験を得るための手段にすぎない。なのにお前らときたらそんなことすらわからないのか?」とバッサリ言い切ってしまう本書は、痛快の一言。

 しかし、この主張はまさにその通りで、シンプルな話、お金を持って死ぬことなど誰ひとりとしてできないのですから、死ぬ前にできる限りのお金を価値ある体験に変える(=ゼロで死ぬ)べきだという本書のロジックは(心理面はともかくとして)論理的にはすんなり受け入れやすいものになっています。また、「お金を持って死ねなくても代わりに子供に相続すれば良いんだから、別にゼロにする必要はないだろう」という至極まっとうな反論に対しても、誰もが納得できる形で綺麗に論破しているのがまた素晴らしい。恥ずかしながら、私も本書を読む以前はそのように考えていたので、完全に論破された1人だったりします笑

 言い換えると、本書は私の今後の人生の羅針盤を動かすだけの力を持っていました。読み終えてすぐに複数の知人に贈りましたし、普段は本を勧めたりしない妻にすら「この本だけは絶対に読むべき!」と熱く語ってしまうほどに。私にとって人生のバイブルになったと言って、過言ではありません。

 

本書の概要

 本書の中では、あの有名な『アリとキリギリス』の童話が何度も引用されます。冬に備えて夏のうちからコツコツと餌を貯めていたアリは無事に冬を越えることができ、一方で遊び惚けていたキリギリスはいざ冬を迎えると困ってしまうという、あのお話です。この童話は通常、「勤勉であること」を美徳とし、アリの生き方を推奨するような文脈で語られることが多いですよね。

 しかし、本書はそんなアリの生き方を否定します。かと言ってキリギリスの生き方を賛美するわけでもありません。人生を無計画に生きるキリギリスは論外ですが、一方でアリのように楽しみを先送りにしてしまうような生き方もまたそれはそれで人生を無駄にしているのだと著者は言います。 お金の価値は年齢と共に下がるのだから、今しかできないことに投資をしなさいというのが著者の主張。例えば、死ぬ時に1000万円が手元に残っているのであれば、それは1000万円分の経験を無駄にしたのだと、容赦なくアリの生き方をも否定するのです。

 曰く、いったいアリはいつ遊ぶことができるのか?

 

 ということで、本書ではお金だけではなく生活を豊かにするためのルールが9つ紹介されています。その全てが知見の塊なのですが、ここではその中でも私の人生観に特に影響を与えた3つのルールについてだけ書くことにします。では早速!

 

ルール1:「今しかできないこと」に投資する

 この第一章には、著者の言いたいことが全て詰まっています。

 ふだん私たちは、まるで世界が永遠に続くかのような感覚で生きている。

 もちろん、そう考えるのはある意味で合理的だ。毎日、人生最後の日のような気持ちで生きるのは難しい。(中略)

 だが残念なことに、私たちは喜びを先送りしすぎている。

 手遅れになるまでやりたいことを我慢し、ただただ金を節約する。

 人生が無限に続くかのような気持ちで。

 はい、冒頭からいきなりアリの人生を揶揄していますね。貯めるだけの人生を。マネリテの高い株クラやクリプト界隈の人ほど、ここでショックを受けるでしょう。だって図星ですからね笑 我々はお金に困らない人生を送るために、必死に資産を増やすことを目指しているのに、その生き方が誤りだと断言されてしまうわけですから。

 当たり前の話ですが、人はいつか死にます。その貴重な人生を、お金を貯めることだけに費やして良いのでしょうか? その問いかけに対して「いやいや、今我慢すれば将来安泰なんだから」というのが一般的な考え方なわけですが、著者は言います。

 

「じゃあ、いつお金使うの!? 今でしょ!?(古い)」

 

 本書では、筆者自身であったり、他の誰かであったりの実体験がたびたび登場し、それが筆者の主張を強化していきます。それは、今しかできないことに惜しみなく金を使うべきだという主張。大切なのは、自分が何をすれば幸せになるかを真剣に考えることであり、その「何か」は人生のどの時期でもできるとは限らないのです。20代しかできない経験ならば、その時期の自分にとっての大金を払ってでも経験するべきなのです。その経験をせずに30代になってしまえば、「あの時あれをしておけば・・・」という後悔を死ぬまで続けることになるのですから。

 加えて、筆者は思い出には配当があるとさえ言います(これは厳密にはルール1ではなくルール2の方で言及されているのですが、内容は繋がっているのでここに含めました)。これはなかなかユニークな主張で、私は本書以前にこんな考え方を聞いたことがありませんでした。これはどういうことかと言うと、自分にとって大切な経験をした場合、人は生涯にわたってその記憶を繰り返し思い出すことになりますよね。そしてその人が他者との会話の中でその経験を共有すれば、今度はその時の会話がまた新たな大切な記憶となり、さらなる経験を生んでくれる・・・。この正のスパイラルを、筆者は「思い出の配当」と呼んでいるわけです。言われてみればなるほど、確かにそうかもしれません。楽しかった記憶を他者に話した時、相手が打てば響くような劇的な反応を返してくれたなら、こちらも話した甲斐があったというもので、次回からはその会話の記憶さえも大切な記憶の一つになり、やはり都度思い出すことになるのです。こうして、思い出が指数関数的に増えていく。

 となると、当然、経験は若い頃にしておいた方がよりレバレッジがかかることはわかりますよね!投資と同じで、始めるのが早ければ早いほど、複利効果が働くことになるわけですから。

 ここに至れば、この考え方を突き詰めた著者が最終的に"DIE WITH ZERO"の境地に辿り着いたことも、納得できるでしょう。人生とは経験の塊なのですから、経験に変換できなかったお金は無駄なのです。

 

ルール5:子どもには死ぬ前に与える

 そして、私にとって目から鱗だったのがこのルール5。

 本書を読む以前の私は、「資産はあればあるほど良い」と考えていました。そりゃあ、お金こそが最上!みたいな極端な考えではありませんでしたし、経験の価値も知っているつもりではありました。しかしながら、自らの人生を真剣に考えることについて甘さがあったこともまた確かです。具体的に言えば、以前の私は「最期まで資産を減らさずに生きよう」と考えていたのです。そうすれば少なくとも経済面で周りに迷惑をかけることはないし、何より妻と私が死んだ後、我が子にある程度まとまった資産を相続させてやることができるからです。しかしながら、著者に言わせれば、死後の相続を考えるなどというのは、我が子の幸せを真剣に考えていない人間の発想なのです。なぜならば、上述したとおり、経験とは若い頃にした方がより複利効果が働くシロモノだからです。それも、親から与えられる経験ほど、子の人生に影響を与えるものはないでしょう。

 確かに、と納得せざるを得ません。現代は、人生100年時代と言われています。ならば私が100歳で死んだとして、その時我が子はどうなっているでしょう? その時彼はすでに70歳、完全に高齢者です。そんな年齢で多額の資産を相続したとて、使い道に困るのは明白じゃないですか! なんということか。ずっとより良く生きることを目指していたはずの私は、そんな単純なことにすら、気づいていなかったのです。「贅沢したいわけじゃない。ただ資産を減らさずに生きれば、”FI”さえ達成すれば、自分や家族は幸せになるのだ」――そんな、FIREを目指す民にとっておなじみの考え方は、パーキンス氏によって綺麗に論破されてしまいました。「コップから溢れる水だけをすする」というのは至極一般的なFIRE民の考え方ですが、そこまで喉の渇きを我慢することで、取り返しのつかない経験の損失が生じてしまうことこそが問題なのだと、彼は断言するのです。

 そして著者によれば、金の価値を最大化できる年齢は26歳~35歳だそうです。これはわかりやすいですね。結婚やマイホームにお金が入用になり、出産や子育てが始まる時期だからです。だからこそ、子どもには自分が死んだ後ではなく死ぬ前に、特に彼らがその年齢になった時にこそ、自分の資産を分け与えるべきなのです。

 

 

ルール7:やりたいことの「賞味期限」を意識する

 物語は永遠に続かず、いつかは色褪せ、消え去っていく。それを理解することで人は、目の前にあるものにもっと感謝できるようになる。(中略)

 あまり知られていないが、人は生涯を通じて何度も小さな死を経験する。詳しくは後述するが、それはつまり「人生は、次々とステージが移行していく」という普遍的なプロセスを意味する。

 この章は、当たり前のことを書いているのですが、いざ突きつけられるとなんともショッキングで息が詰まりそうな思いがしました。特に、子どもを持つ親の立場の読者ならば猶更でしょう。例えば、私には5歳の子どもがいますが、子どもの興味というのは非常に移り変わりが激しいです。彼らの世界では、少し前までハマっていた遊びに翌月にはもう見向きもしなくなっているというような、「ステージ移行」が頻発するのです。

 例えば、↓は私が昨年の4月に投稿したトミカ博の記事です。

www.midorineko.work

 この頃の我が子はとにかくトミカやプラレールが大好きで、スーパーに買い物に行こうものならおもちゃコーナーにあるトミカの「標識セット」を買え買えと喚いていたのですが、それがどういうわけか、ある頃から突然、車や電車への興味が嘘のように消失してしまったのです。友達の影響なのかyoutubeの影響なのか、ただただ飽きてしまったのかはわかりません。ただ1つ言えることは、「我が子にとって、トミカのステージは終了した」という事実だけです。そうなると不思議なもので、逆に親である私の方が、「ねえ、一緒にトミカで遊ばない?」などと子どもを誘うようになるのですが、もうそんなステージにいない彼はもちろん私の誘いに乗ることなどなく、今は新たなステージである恐竜や戦隊ヒーローに夢中になっているのでした。

 

 このように、子どもに限らず人生にはステージというものがあり、そのステージごとにできる経験は決まっていると言います。実際のところ、私たちが思っているほど先延ばしできない経験は多く、そして人は終わりを意識すると、その時間を最大限に活用しようとする意識が高まるという実験結果が、本書では示されます。

Die with ZERO 人生が豊かになりすぎる究極のルール

 ↑「タイムバケット」という、限りある人生の各段階の有限さを意識しやすくするツールです。単なる「やりたいことリスト」との違いは、その経験をするための明確なリミットが設定されていること。

 筆者がどれほど真剣に人生を生きているのかが、この章を読むとヒシヒシと伝わってきます。

 

転用 ~本書を読んで自分はどうする?~

 さて、読み始めて数ページで「これは私にとってバイブルになる!」と直感した本書。当然ながら、私の人生に多大な影響を与えました。まさか40歳を目前にして、小説ならともかく、実用書にここまで心を揺さぶられることがあるなんて、思いもよりませんでしたよ💦 それだけに、転用しようと考えた部分も多いのですが、すでに文章量が相当多くなってしまっているので、ここでは枝葉末節は省き、最もクリティカルな部分のみを。

 私にとってのクリティカルとはもちろん、自分バージョンのタイムバケットを作成したことです。実は私、これだけ生き方について何年も考えてきながら、「やりたいことリスト」すら真面目に作ったことがなかったのですよ。頭の中ではやりたいことがあまりにも多すぎて、仮にFIREしたとしても、暇すぎて仕事に復帰することなんてまずありえないと思ってはいましたが、「今日はあれをやろう、明日はあれだ!」・・・そういう行き当たりばったりな考えでFIRE生活を送った場合、例えば60歳になった時に、「ああ! あれを50代でやっておくのを忘れてた! もう体力が・・・」なんてことが何度も起きそうで💦 頭の中に置いておくだけでは限界がありますね、やはり。。。

 そうならないためにも、ルール7:やりたいことの「賞味期限」を意識する、を念頭に置きながら、自分と家族、特に子供に対して「今」何ができるかを、真剣に考えて人生を歩もうと、気持ちを新たにしました。

 

 私のタイムバケットの内容については、また機会があれば記事にするかもしれません。他人が読んで面白いものかはわかりませんが、1人で作るとどうしてもジャンルが偏りますので、もしも何らかの参考になったなら、その時は幸いです。

 


 

 以上、今回は『DIE WITH ZERO』をご紹介いたしました。

 

↓クリックしていただけると非常に励みになります!

人気ブログランキング